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後編04 信太朗⑩

「寒いね、敦ちゃん……」


 ストーブやこたつが恋しい。

 毛布や布団が恋しい。


「寒いですね。信太朗様」


 せめてもの慰めは、敦ちゃんこと平敦盛さんが、そばにいる事だ。

 現代とか江戸時代とか違って、平安時代末期の街道は、整理されておらず、宿場も少ない。


 結局、野宿になることが多い。

 とはいっても、持ってきたテントを張って寝袋で寝るのだが、群馬県北部高原地帯の、12月の夜はめちゃくちゃ寒い。


「明日には到着するはずですよ。熊谷殿が書いてくれた地図ですとあとおよそ6里(約23.5㎞)ほどです。」


 テントの中で敦ちゃんが答える。


 いつ野盗に襲われるかわからないし、野犬や狼、熊なんかもいるかもしれない。

 交代で寝ずの番をしている。今は俺がテント外にいる。だから敦ちゃんが起きていたら意味がない。


「敦ちゃん、俺は大丈夫だから寝てていいよ。」


「わかりました。おやすみなさい、信太朗様。」


 しばらくするとかすかな寝息がテント内から聞こえてきた。


「……。」


 寝顔を覗いてみたい衝動に駆られる。

 ちょっとくらいいいかな……。


 その時、200メートル先に人の気配を感じた。


 俺は懐から暗視スコープを取りだし覗き込む。


 どうやら夜盗のようだ。3人……いや4人か。

 4人とも槍しか持っていないようだ。


(敦ちゃんを起こすまでもないな)


 俺は傍らに置いたリュックサックからクロスボウを取り出し、スコープを取り付ける。

 狙いをつける。動きからして先頭の男がリーダーだ。


 アンダーソン少佐の言葉が頭をよぎる。


「シンタロウ。少数での戦闘では、まずリーダーを見分け、最初に片づけろ。」


 俺はクロスボウの引き金を引く。

 取り付けた矢は、初速300FTS(秒速90メートル)で飛び、夜盗リーダーの胸に突き刺さった。


「うぐっ」


 かすかに聞こえるうめき声。


 俺はすぐさま次の矢をセット。

 ちなみに、現代から持ってきたカーボン製の矢は最初の一週間で底をついたので、この時代の矢を使用している。

 殺傷能力は落ちるが、この距離なら大丈夫のはずだ。


 俺は次の矢を、夜盗の足元を狙って撃った。


「うひゃあ」


 夜盗たちはリーダーの遺体を置いて逃げていったようだ。



「どうかしましたか?信太朗様」


 どうやら起こしてしまったようだ。


「なんでもないよ。野犬がいたみたいだけど、俺が追っ払った。」


「そうですか……。フフフ」


「え、俺なにかおかしいこといった?」


「信太朗様、最近ご自分の事、『俺』って」


 そう言われてみたらそうかもしれない。前からたまに自分の事を「俺」って言ったことはあったような気もするけど、基本「僕」だったような。


「フフフ、ごめんなさい、おやすみなさい」


「お休み、敦ちゃん」


 しばらくすると静かな寝息が聞こえてきた。


 明日には那須神田城に着く。

 俺たちは、あの那須与一宗隆と会い、義経討伐の仲間にしなくてはいけない。


 だから敦ちゃんにはゆっくり休んでほしい。

 俺はさっきの連中がまたやってこないか警戒した。


「……。」


 どうやら大丈夫なようだ。


 ふと空を見上げると、くっきりと見える天の河。

 頬を冷やす12月の冷たい風。


「寒い……」


 俺はまたそうつぶやいた。できるだけ小さい声で。


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