プロローグ1
過去に投稿したお話をブラッシュアップしました。
旧作をご存じの方も是非ご一読ください。
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「信太朗……。お父さんとお母さん、もう帰ってこないの。」
「……お姉ちゃん?」
「これからは、私が、毎日学校まで送って行くから、信太朗は安心してね。いつも通り、笑顔でいて。」
そう言うと、私はもう堪えきれずに泣き崩れ、その後のことはよく覚えていない。
叔母に車を出してもらって、何とか信太朗と一緒に家にたどり着いたらしい。
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嘉応元年(1169年)、私は平清盛の弟・経盛の娘として生まれました。兄が5人いる、平家全盛期の頃です。
父は武士というより文化人で、京の文化人を集めてサロンを開き、彼らを支援していました。信心深く、いつも神仏に祈っていました。
ある日、病に倒れた兄・清盛公の回復を祈っていた父のもとに、不思議な声が聞こえてきました。「今度生まれる子が、男子なら女子、女子なら男子として育てれば、一族の危機を救える」と。父はその言葉に従うことを誓い、清盛公は奇跡的に回復しました。
翌年生まれた私は、女子でしたが、父は私を男子として育てることを決意しました。母は反対しましたが、父の決意は固く、私は六男として育てられたのです。
なぜ私が男子として育てられるのか、幼い頃から父に尋ねました。「一族の危機を救うため」と父は言いました。そして、美しい笛の音を奏でてくれました。その音色は、私の心に深く響きました。
私は京で評判の美しい公達となり、父から教わった笛の腕前は一流でした。10歳の時、高倉天皇の前で演奏し、褒められました。父は私に二つの名笛を贈ってくれました。
13歳からは弓の稽古も始めました。東国から来た少年に教わった弓の練習は、私にとって貴重な経験でした。
時は流れ、平家滅亡の危機が迫ってきました。私は初陣を飾り、戦場に赴きましたが、力及ばず、敵に捕らえられました。
「あなたは何者だ?」と尋ねられた時、私は幼い頃の自分を思い出しました。そして、神仏に祈りました。
その時、不思議な光が現れ、私は意識を失いました。