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寝取り男とは如何にして形成されるのか?

感想、レビュー、ブクマ、評価、ぜひともお願い致します!!

励みになります。


更新遅れてしまいました!

どうぞご覧下さいー

 ーーイク男の中学校時代--


「舞ちゃん。 今日も棋譜を並べてるの?」


「私はこれでも君より先輩なんだ。 少しは敬意をもって接するべきだと思うがね」


 夕方の教室で一人将棋盤と向き合う女の子。

 俺はいつも通り向かいの席に座ってみる。


 舞ちゃんは艶のある黒髪を腰まで伸ばした容姿端麗の美少女。

 だけど周囲に目もくれずに将棋一筋を目指す彼女は高潔そのものだった。

 今思えばイバラちゃんに似ているよな。(イバラちゃんの方が美人だが)


「ちゃんと眠れてる? なんか目の下に隈ができてるけど」


「……だとしたら私も女なんだ。 調子の悪い状態をそんなにジロジロ見ないでくれ」


 彼女の頬に赤く見えるのは夕日だけのせいじゃないはずだ。

 でも、さすがにそこまで指摘するのは無粋だ。


「舞ちゃんは俺と一個しか違わないのに、一生向き合いたいと思えるものがあってすごいな」


 本音でそう思う。

 サッカー部に行きづらくなってからの俺はのらりくらり。

 いや、元々なんでも結構スマートにできてしまう自負はある。

 そのせいか、人付き合いもサッカーも勉強もどれも中の上というか。

 別段こまってはいないけど、一生をかけて向き合えるものを持っている人は素直に尊敬したくなる。


「実は私もそう思う。 私は将棋というものに幼い頃に出会ってからその魅力にメロメロだ。 今では棋譜を見るだけで催す時すらあるし、 会心の一手を打てた時にはこれ以上ないくらいのエクスタシーを感じてしまう事も往々にしてある」


「……イヤだよ。 プロ棋士になった舞ちゃんが対局の度に催して、 絶頂までされる所が全国中継されてたら」


「そのくらい将棋を愛しているという比喩さ」


 そう言いながら恍惚とした表情で棋譜を並べてる舞ちゃん。

 パチンと駒を打つ度に少しだけ肩が震える様が悩ましい。

 明らかに比喩だけじゃない気がする。

 こんな姿を思春期真っ只中の男子生徒に見せたくないから俺はいつも舞ちゃんの所に来ちゃうのかな。


「舞ちゃんは普通に恋をしてみたいと思わないの?」


「どうだろう? そういう感情が私にはあるとは思ってなかったが」

 

 将棋大好きの舞ちゃんならそう答えるよな。

 でもさーー


「俺とかカッコよくない? 結構言われることも多いんだけど」


「……少なくとも、私はもっと奥ゆかしい方が好きだな」


 俺の軽口に対して、目を細めて嫌悪感を出してるけど本気で嫌がってる気はしない。

 だからもう少し、いや、もっと踏み込んでみる。


「だって、 舞ちゃん、 俺がこんだけアピールしてんのに気づいてくれないじゃんか。 おくゆかしくなんてしてられないよ」


「……アピールとは?」


「俺が舞ちゃんを好きだってことだよ」


「なっ!?」


 今度は間違いない。

 舞ちゃんの顔が赤いのは夕日のせいでも、棋譜を並べてるからでもない。

 俺が舞ちゃんを催させたんだ!(?)


「い、いや、 だって渡辺(わたなべ)(イク男の苗字)はてっきり、ぼっちの私がかわいそうだから……いや、 私的にはぼっちで別に問題ないけど、 でもやっぱりこうして話してもらえると嬉しかったり、 というか渡辺ネコみたいで側によって来たかと思うとすぐいなくなっちゃったり、 そんな所も可愛かったり……あぁ……どうしよう」


 舞ちゃんは俺の告白を受けてあたふたと慌て始める。

 これは……イクしかない!(名前だけに)


「かわいいって思ってくれてんなら、 俺の事嫌いじゃないよな?」


「き、きらい!? そんなわけ……というか普通にカッコいいし……」


「それならさ! 俺と付き合ってよ!」


 決まった!

 舞ちゃんは俺を憎からず思ってくれてる!

 つまりーー


「ごめんなさい! 無理です!」


 俺の初恋は砕け散った。

 それ以来俺は年がら年中タンクトップを着るようになった(?)


 少しでも舞ちゃんに男らしさをアピールしたかったってわけさ。


 ーー駅前商業施設ボウリング場--


 イク男の言うデートとは、いわゆるダブルデートという奴だ。

 メンツはイク男の初恋相手、イク男、副会長、俺という奇妙な組み合わせで、正直気乗りしないが俺は好きなやつにはとことん甘い。

 熱意に負けて押し切られてしまった。(イク子に久しく会いたかった、残念)


 イク男はそこそこサッカーが上手くて昔からモテモテだったらしい。

 そのせいか男子からやっかまれる事も少なくなくて部活なんかには顔を出しづらくなって疎遠になってるってのは本人談(べ、別に羨ましくなんかないんだからね!)

 

 で、中学の時、部活に行くのも嫌でフラフラしていた時に一個上で女流棋士を目指す稀少舞(きしょう まい)に出会ったと。

 そん時に告白したが玉砕して、女を恨むようになって寝取り男の完成というわけだ。


「正彦くん。 俺は今君が何を考えてるのかなんとなくわかるよ。 ホント何度言ったらわかるんだか」


「そうか? それよりお前が俺の事わかってくれてると思うと素直にうれしいな。 俺の方はお前を誰よりも理解したいしな」


「……だったら俺の話ちゃんときいてくれよ。 どうでもいいことはちゃんと覚えてるくせにさ」


「お前の話でどうでもいいと思ったことはほとんどないぞ。 俺はお前が好きだからな」


「はいはい……ああ! 舞ちゃん違うんだって! そんな目で見ないで!」


「入玲さんの彼氏ではなくて渡辺の彼氏なのか……だとしたらあの時私に言ってくれたのはどういう……」


 俺たちの会話をジト目で見てくる稀少さん(イク男の好きな人の名前だからすぐ覚えた)

 

 デニールの濃い黒タイツを履いていて、清楚な容姿はイバラを少しだけ彷彿とさせる。

 なるほど、初恋相手に似てるからイバラに一目惚れしてた時期もあるんだな。


 ぱかぱかーん。


 ボウリングのピンがゆるーく倒れた音がこだまする。

 

「あぁー。 せっかく私がストライク取ったのに全然みてくれてなぃー」


 タレ目を吊り上げようとしているが口元は笑っている。

 本当にこの人の真意は読みづらい。


「副会長のスカートが短すぎてパンツが見えるから見てられないんですよ」


「えぇー? それって『彼女』のパンツが他の人に見られてる事に嫉妬してくれてるって事ぉ?」


「……アンタのそういうポジティブなんだか気が狂っちゃってんだか分からないとこ、結構気に入ってきたかもしれないな」


 ハイタッチを求めてくる副会長に手を当てて返す。

 副会長はそのままイク男、稀少さんともハイタッチを交わしていく。


 今回の俺のミッションはこうだ。


『副会長の彼氏のフリをしつつ、イク男の恋を応援』


 訳がわからないだろ?

 俺もわからん。


 稀少さんは明らかにイク男を憎からず思っているけど、告白を受けてからイク男を避けるようになったらしい。

 高校も別れて接点がなくなっていた所に、副会長の友人ということでこの場が成立したとの事。

 

 副会長がこのデートを成立させるためにイク男へ出した条件は『デート中だけでも角田くんを私の彼氏役に抜擢してくれたらいいよぉ』との事だ。


 まったくもって意味わからん。

 イク男にしても、俺を助けるために副会長とは色々あったから初恋相手を取りついでもらうには分の悪い相手だ。

 ま、俺が幼馴染以外に劣情を催す事はないという信頼も無ければさすがにイク男もオーケーしなかっただろう。

 

「気が狂っちゃってるのは角田くんも同じだよぉ」


「……聞いてたなら普通に返事してくださいよ。 怒らせたかと思った」


 イク男が投球フォームに入ると副会長が俺の隣に座って話しかけてくる。


「角田くんってホントに不思議だねぇ。 今だに名前も覚えてないのにそういうのは気になるんだぁ」


「……わずらわしいのが嫌なんですよ。 好きでもない人の感情に一喜一憂するなんて想像しただけで疲れる」


「意外と空気読めるもんねぇ。 生徒会議会の準備毎回大変そぅ」


「そう思うなら少しは手伝ってくださいよ。 毎回俺だけに任せてないで」


「あははっ。 それはそうだねぇ」


 屈託なく笑うけど、多分手伝ってくれないんだろうな。

 諦念している俺をよそにイク男がピンが飛び回るような豪快なストライクを決める。

 

 ガッツポーズと共にハイタッチに回ってくるイク男。

 無邪気さを装ってはいるが実はかなり緊張してるんだろうなとは思う。

 初恋の人を紹介してもらうために、過去色々あった女を親友である俺が彼氏役とかカオスだもんな。


 大丈夫だよ、イク男。

 お前が俺たち幼馴染の関係を変に茶化さないでくれてるだけで感謝してるんだ。

 対人関係のバランス感覚がめちゃくちゃ良いお前がこんなワケ分かんなくなるくらい必死なら俺はいくらだって協力するよ。

 だからTSして俺ともデートしてくれ。(注:正彦は一度好きになった相手を忘れられません)


 イバラの告白を受けたタイミングってのを知ったら流石にイク男も言ってこなかったとは思う。

 そのタイミングでも好きな奴の頼みだったら受け入れちゃうのが俺の理解され難い所以だろうな。

 

(正彦くん……俺のタンクトップ変じゃない?)


 こそっと耳うちしてくるイク男。


(大丈夫だぞ。 ナチュラルに寝取りそうなお前にはむしろタンクトップ以外は似合わないまである……!)


(だから俺は……まぁいいや……カッコいいって事だよな……?)


(ああ……お前以上にカッコいい男を俺は知らない……自信を持て……!)


 こそこそと耳打ちで会話を続ける俺たち。

 なぜかは分からんが稀少さんと副会長が生暖かい視線を向けている気がする。(元々仲良しなのにイク男のTSもあって彼等の距離感はバグってます)


「さ、 次は舞ちゃんの番だよ! 頑張ってー」


「……渡辺もしかして私のせいでそっちに目覚めてしまったのか? なんだろう二人を見てると棋譜を並べてるみたいにドキドキする……」


 子供用よりは少しだけ重いボールに振り回されそうになりながら投球する稀少さん。

 容姿はイバラと被るが見た目通り華奢なようだ。(イバラは全ての所作が美しいのでボーリングしても完璧なフォームで投球)

 投球後、ボールは綺麗に脇にそれてガーターを叩き出す。


「あはは。 舞ちゃんやっぱりこういうの苦手なんだな」


「私が将棋以外してこなかったのは渡辺も見ていただろう? 少しは指南してみようという優しい気持ちはないのか?」


「オッケー。 では、 こちらへどうぞ。 お姫様」


「……相変わらずのタラシっぷりだな」


 憎まれ口のようなものを叩いてはいても素直に投球フォームの指南を受けている。

 その際、腕やら腰やらを触れてはいるがイク男のスマートさから動作にいやらしさはない。

 むしろ触れられてカチカチに固まってしまう稀少さんの方が過敏に反応しすぎでいやらしい。(イク男を取られちゃった気分)


「稀少さん……イク男の事、好意的に見えるけどなんで振っちゃったのかな?」


 ぼそりと呟いたつもりだが、隣には副会長がいる。

 俺の呟きに返答してくる。


「稀少ちゃんは『美少女現役女子高生プロ棋士』だしねぇ。 選ぼうと思えば選り取りなんじゃないかなぁ」


「……アンタがいるのに呟いた俺が間違いだったよ」


「ふふ。 角田くんはホントにロマンチストだねぇ。 初恋なんか実らないし、実ったって別れるのが大半だと思うよぉ」


 くすくすと挑発的な笑みを浮かべてくる副会長。


「だから角田くんだってもっと気楽に生きていいと思うけどなぁ」


 この人のこういう所が相容れないし、気に入らない。

 人を食ったような態度を出すくせに、この台詞は俺の凝り固まった考え方(せいへき)に苦言を呈してるんだ。

 生まれた頃からほぼ一緒にいる幼馴染への愛を語る俺に対して。


『そんなの生きづらいだけだよ』


 って。

 大きなお世話だが。

 すごく腹立つんだ。

 映画なんかじゃシンデレラストーリー、初恋や永遠の愛が好まれるよな。

 興行収入がそれを物語ってる。

 でも現実世界でそれを言い続ける奴がいたら鼻つまみ者じゃないか。

 夢を見るな、現実を見ろ的な。

 好きになったら一生愛し続けたいという理想像を持ちながら、実際にはそれが無理難題みたいに捉えてる輩が俺は大嫌いだ。

 

「大半がそうだからって、それが幸せとは限らないじゃないですか」


「おやぁ? 珍しい。 私に対しても言い返してくるぐらい興味持ってくれたのかなぁ」


「……名前も知らない人に興味なんかない」


「嘘が下手だねぇ。 ホントはもうとっくに私の名前覚えてるはずだよぉ。 認めるのが怖いんでしょ? 私に興味を持っちゃった事がぁ」


「……」


 そう言って俺の肩に腕を回してくる。

 

 入玲(いれ)副会長の言う通りさ。

 俺は好きな人を作るのが苦手なだけで作りたくないわけじゃない。


「ま、それはさておき、 目下私たちは彼氏彼女の関係で? あの二人のキューピッド役なんだから、稀少ちゃんが理想に思えるくらいのアツアツっぷりを見せてやろぉよぉ」


「キューピッド? サキュバスじゃないか」

 

「それが角田くんの理想像なんじゃないのぉ?」


 挑発的な笑みを浮かべて、制服の胸ボタンをはずしてくると下着が少し見える。

 

 この人に劣情を催す要素は俺にはない。

 そもそも好きじゃないし、なんなら嫌いだ。

 だけど、刹那的な快楽を求めるという価値観がどういった環境から生まれるのか?

 俺にはない要素を持っているこの人の話が面白くてしょうがないというのも事実だったーー

またまた1話で書ききれませんでしたが、明日には更新できると思います。

是非ご覧くださいー


次回更新もtwwiterで配信いたしますので良ければフォローお願いします。

https://twitter.com/kazuyurichihi


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