表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/36

その先へすすまんとする二人

感想、レビュー、ブクマ、評価、ぜひともお願い致します!!

励みになります。


現在ブクマ190

見ていただけてると思うと嬉しいです。

引き続き頑張って更新していきます。

 目が覚めるとイバラの膝の上だった。

 ベンチで寝そべらせてもらってるらしい。

 特に振動は感じないから、そういうプレイはもう終了したってわけか。


 辺りは暗くなり始めているけど街灯やらのイルミネーションが幻想的に光っている。

 ロマンス物語な感じの世界観に入り込んだ感じは一向におさまらない。


「……」


「ん? すまん……俺も一体どこからが現実で、どこからがリモートなのかわからなくなっていてな」


「……」


「ああ。 そうだな。 イバラはここにいる。 それだけは真実だ」


 もう俺が気絶するのは慣れっこなのか唇をわずかに曲げて微かな笑みを浮かべるイバラ。


「……」


「ははっ。 自分でもそう思うよ。 気絶ばっかりしてさ。 いつも迷惑かけて悪いな」


「……」(ふるふる)


「イバラは優しいな。 俺なんかとじゃなきゃもっと遊べただろうに」


「……」(ふるふる)


「……そうか……」


 俺とだったから楽しかったのか。


 ここ最近のイバラの行動は正直よくわからん。

 俺はイバラを愛している。(家族として)

 でも、それはイバラの気持ちを踏みにじっているとイク男は言っていた。

 俺自身そうなんじゃないかと思って図星を刺されたと思ったからあれだけイク男と喧嘩してしまったんだと思う。

 なんて思っていたらイバラはゴリと付き合っている。


 悲しかったけど、俺には悲しむ権利なんてない。

 だからそんな事、態度に表しちゃダメなんだ。(正彦は取り乱してるのがバレていないとおもっています)

 とりあえず、幼馴染とはいえ彼氏がいる相手に膝枕なんかされちゃいけないよな。 


 イバラの膝から起き上がろうとすると、イバラが俺の頭を押さえつける。


「? イバラ? 起き上がれないし痛いんだけど?」

 

 イバラが万力でも使ってるんじゃないかっていうすごいパワーで俺を押さえつける。


「……」


「いや……離れる離れないの問題じゃなくて、ずっと俺を介抱してくれてたならイバラそろそろ膝いたいんじゃないかと思って」


「……!」


「痛くない? だとしたら俺の方が……いだだ! 痛いんだけど!? それもうアイアンクローなんだけど! イバラ握力何キロあんの!? めちゃくちゃいだだだ!」


あまりに強力すぎるその『鉄の爪』の恐怖にイバラの手を掴んで押し返そうとするが、押し返されまいとするイバラ。 

かつて日本中のレスラーを恐怖に落とし入れたフリッ〇フォンエリック(握力130㎏)がジャイア〇ト馬場に仕掛けた攻防に似ている。


「……!……!」


「『ショウちゃんの時は嫌がらなかった』!? あれはそういうルールだったろ!?(ルールもよくわからんが) とにかくギブアップだ! 脳みそでちゃう!」


 一旦、起き上がるのはあきらめてイバラの顔を下から見上げる。

 この角度からイバラの顔をみることはめったにないが、形の良い胸のふくらみはあれど、硝子のようにたわわが話しかけてくることはない。

 均整の取れた唇や鼻筋、どの角度からみてもイバラの美しさがそこなわれることはない。


「……!……!」


「ぐ、ぐわあああ! 恥ずかしいから下から見ないでって! なら起き上がらせてくれ! あああああ!」


 起き上がるのはだめ、顔をみるのもだめ。

 八方ふさがりの俺は甘んじてイバラのアイアンクローを享受するしかなかった。


 ーーとりあえず、イバラのハンドタオルを顔に被せられるーー

  

「ねぇこれ遊園地が楽しすぎて死んじゃった人みたいになってない? ここまでするなら俺起きてよくない?」


「……」


「しかもイバラの顔が見えないから何言ってんのかわかんないよ」


 まぁタオルは柔軟剤しっかりな感じでいい匂いだ。

 乾燥機でしっかり乾かしたんであろうモフモフもグッド。

 

 普段電話とかだと息遣いとかでなんとなくわかるけど、今日のイバラは遊園地の雰囲気にあてられてテンションが高ぶっているのか分かりづらい。

 そのうえ、視界までふさがれたら色んな意味でギブアップだ。(もう痛くしないでください)


 胸中で敗北宣言していたらイバラが上品で洗練されていながら耳心地の良い声なのに、小さく話しかけてくる。


「正彦の顔を見てると……うまく言えない……私もう正彦に勘違いされたくない……」


「勘違い?」


 どれだ?(注:多分ほとんど勘違いしてます)

 タオルに顔を包まれながら考える。

 硝子はいつも言っていたが、イバラの事で俺が勘違いするなんてありえないと思っていた。

 でも、当人が言ってくる以上、やはり俺は何か間違えてしまっているのか?(注:いつもです)


「ずっと怖かった……気持ちを伝えたら、 正彦は私のそばからいなくなっちゃう気がして……」


「……」


 押し黙って聞いてしまう。


 俺はイバラから離れたくない。

 イバラもきっとそう思ってくれてる。


「でも……もう、子供のままでいたくない……いれない。 私正彦のおかげで強くなれた。 だから、 聞いて正彦」


「……」


 超怖いんですけどー。

 俺の何を見てたら強くなんのよ。

 リンカにいつもヘコまされてるところとか? 

 普段しゃべんないのに、そんなに急に緩急つけられたら耐震素材発砲スチロールで作ってある欠陥住宅マサヒコの壁もう崩れてるんだけどー。


 タオルが邪魔でバフバフと変な呼吸をしてしまう。


「私ね……」


「……」


 この神妙なこの感じは……あれか?

 ゴリに俺と会うなって言われた感じか?

 やっぱり異性の幼馴染なんて、あんまりいい気持ちしないもんだよな。

 あ、やばっマジで泣きそう。

 イバラと会えなくなるなんて今後何を生きがい(オカズ)にしていけばいいんだ。 


「私……正彦が好き。 今も、 昔も、これから先もずっと……!」


「……? おれ……?」


「うん……」


 いつものように『俺も』と言いかけて、ストップがかかる。

 これは、いつもと違う。

 これは多分……そういう事だよな?

 でも、だとしたらおかしくないか?

 イバラはゴリと付き合ってるはずじゃ……?


 そして耐えきれずにタオルを外して飛び起きる。

 飛び起きた先に見えたのは、顔を真っ赤に染め上げた美しき幼馴染。


 状況が整理できなくて独り言のように呟いてしまう。


「好きって家族としてか……?」


「……」(ふるふる)


 真剣な様子で首を振るイバラ。

 だとしたら……


「……男女の意味でか?」


「……」(こくり)


 頷きながらイバラの目には涙が溜まっている。

 俺の返答を本気で怖がってるんだ。

 それでも、言わずにはいられなかったんだ。


『イバラちゃんの気持ちを何年も踏みにじってきた自覚はあるよな?』


 イク男と喧嘩した時のセリフが思い出される。

 あの時は、結局わけわかんなくなって……

 そうだ……

 ゴリと付き合ってるんだと思って、結局、俺自身の気持ちも有耶無耶になっちゃって。

 もしかして、ゴリとは何にもないのか?

 だとしたら、イバラは誰とその先へ行ったんだ?

 違う違う!

 今俺が考えるべきは、イバラとどうなりたいかじゃないのか?


 考えがまとまらない中で、俺は胸中の思いを言葉に出す。

 

「俺は……イバラを誰よりも愛している」


「……」


 「知ってる」とイバラは答えた。


「俺以上にイバラを愛せる奴なんていないとも思ってる」


「……」


 「そうだよ」とイバラが答える。


「でも……そうじゃないんだよな?」


「……」(こくり)


 頷いて、頬に涙がこぼれかけたのをぬぐっている。


「……」


 「泣く気なんかこれっぽっちもなかった」とイバラは言う。

 

 俺たちの関係性は歪だ。

 主に俺が。(注:一応自覚ありました)

 劣情を催しておきながら、男女としての仲を、性別なんて無いように振舞おうとするからほころんでいく。

 そしてイバラをここまで傷つけてしまう。

 イバラだけじゃない。 

 

『大丈夫だよ。 リンカもマサを一人にしたくないから……!』


 俺の自分勝手な願いを理解しようとしてくれるリンカだって傷つけてる。


『18歳になるまでにマサヒコの本当のいちばんになったら、私マサヒコのそばからいなくなる!』

 

 ……最近さっぱり意味のわからない硝子は正直よくわからん。


 幼馴染たちへの思いを巡らせて、どう返答していいか考えあぐねていた時だった。


 イバラがばちーんと自分の頬を叩く。


「わ!びっくりした! イバラ!?」


 驚く俺をよそに、ベンチから立ち上がってから背をむけて問いかけてくる。


「正彦。 今 ショウちゃんの事、考えてる?」


「え?……う、うん。 ていうかホッペ大丈夫?」


 消え入りそうだった先ほどとは打って変わって、澄んだ声に圧倒されてしまう。


「燐火の事も?」


「……考えてる。 ねぇ大丈夫?」


「正彦らしいね」 


 俺の疑問には答えず、振り返ったイバラの形の良い切れ長の目には涙は浮かんでいなかった。

 儚げな印象のあった薄い唇が少しだけ上がっていて自信のようなものを感じる。

 ていうかホッペ真っ赤だった。


「決めたの……ずっと待ち続けてるだけじゃダメだって。 正彦勘違いしちゃうし」


 そして硝子みたいに人差し指を指して宣言してくる。


「私、 ショウちゃんにも燐火にも負けない。 正彦の一番になってみせる!」


 ズビシッ!

 と、イバラには全く似合わない効果音すら聞こえてくる程、堂々とした姿だった。

 儚げな美しさと威風堂々がミスマッチして俺は見惚れてしまう。


「カッコいい?」


「ホッペ真っ赤だけど、なんかカッコいい!」


「正彦に守ってもらうだけじゃダメだからね」


 想定外な事が続きすぎて、俺の知能指数は小学生並みに退行してしまって、イバラの質問に勢いよく肯定する。

 子供の頃から声を出して話す事を怖がってて、俺は彼女を守ると決めていた。

 庇護欲かき立てていた同一人物とは思えない程、堂々と宣言するイバラから目が離せない。

 見惚れてしまったからだろうか、さっきとは別の意味での動悸が止まらない。


「正彦、 今、 私を見てドキドキしてるでしょ?」


「う、 うん。 イバラより綺麗な存在なんてみた事なかったのに、 今日はいつもより……」 


「正彦はギャップ萌えに弱いの。 私ずっと前から知ってる」


「え!? (ドッキーン!)」


 そ、そうだったのか。

 だから、『清楚系ギャル』っていう相反する要素に惹かれるのか。


「だから正彦……時間がかかってもいいから私たち三人の中で一番を決めて」


「……時間かけてもいいなんて甘やかしたら、 俺は結論を出すのに100年かかるかもしれないぞ」


「いいよ今更。 私なら100年経っておばあちゃんになっても待ってあげる」


「え!? (ドッキーン!)」


「それに待ってるだけじゃないもの……私、正彦の事誘惑し続ける!」


「ひえぇぇ! おて、 お手柔らかに!」


 くすくすと笑うイバラが珍しすぎて動悸がとまらない。


「さ、 まだ時間があるから回りましょう? 私見たいところがあるの!」


 そういって俺の手を引いてくれたけど、イバラの綺麗な顔には真っ赤な手形がしばらくついたままだった。

 楽しそうに俺の手を引いてくれるイバラを見て、思考がぐるぐると巡る。


(イバラは100年でも待ってくれるって言ってくれたけど、そんなわけにはいかないよな)


(硝子の事もあるし、やっぱり高校生活内にはきちんと結論ださないと)


(生涯みんなとは一緒にいたいって思ってるのは変わらない、 一生幼馴染の関係はやっぱり続けたい)


(でも、それが一番大切な人たちを傷つけてるんだとしたら、本末転倒なんだよな……)


(そもそも、一番って単語は一人にしか使っちゃいけないのは……ホントはわかってたんだ)


 思考がバーストしている俺に「正彦」とイバラが笑いかけてくれる。


「私たちの事で悩んじゃう事は止められないし、変えられないかもしれない」


「イバラ……」


「でも今日は私の事だけを見て、 正彦」


「……うん!」


 子供の頃に泣いているイバラを慰めるために俺が言ったセリフをそのまま返してきた。

 それはつまり、イバラが俺に守られるだけじゃいたくないという意思表示を強く感じた。


 そのあとも園内を巡ったり、花火を見たりした。

 俺はイバラをこれ以上ないくらい愛していると思っていたけど、年相応に可愛らしく笑ったりするイバラを見ると動悸が止まらなくて目も合わせられなくなった。

 それを見たイバラがからかってきたりする。

 新鮮すぎる感情に振り回されて、イバラを思う気持ちに『その先』があったことに驚いていた。

 

デート回終了です。

イバラは今後普通にしゃべるのか、ぜひご覧になってください。


次回更新もtwwiterで配信いたしますので良ければフォローお願いします。

https://twitter.com/kazuyurichihi


良かったら下の☆☆☆☆☆お願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ