イバラの夢 〜その先へ〜
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ーー夢の中ーー
「ローズ様。 そんな薄着では風邪を召されます。(劣情催しちゃうし) 部屋に戻りましょう」
「……マーシャがそんな他人行儀な話し方するなら絶対に戻らない……」
侯爵家別邸とはいえ豪奢な建築がなされていて、石造りのテラスから見る月夜を肴に一人で大して強くもないワインを飲み続けている。
いつも通りマーシャは心配なのか、薄着のネグリジェ姿のみの私の暴走を止めに来てくれたんだわ。
他の人が止めに来てくれるとロクな結果にならないし。
「ローズ。 別に勘違いさせたい奴にはさせとけばいいじゃないか。 君は社交界でも『高嶺の花』なんだ。 男どもは君に夢中だからこそ少しでも夢を見たいのさ」
「……だからって……私……誰にだって劣情を催すような淫乱扱いされたら傷つくわ……一度もそんな事した事ないのに(マーシャには催すけど)」
「ま、 ローズにしたら嫌な気持ちだよな」
くすくすと笑いながらさりげなく私の向かいに座ってくれるマーシャ。
グラスにワインを注いでるのは私の愚痴に付き合ってくれるのかしら。
「男の人っていつもそうだわ! 私の事『氷の薔薇姫』だなんだと騒ぎ立てて持ち上げるくせに、 実際は私が淫乱な方がギャップ萌えしていいんでしょ!? 不潔だわ!」
「ギャップ萌えってのは古くからある男の嗜好の一つさ。 クレオパトラがそのまま淫乱より、めっちゃ清楚美人だったと言われた方が興奮要素は強いからね。 なんなら今自分で言っててうっかりクレオパトラに恋に落ちそうだ。 つまりは、 そういう事さ」
「……何がそういう事なのよ! マーシャ私の話ちゃんと聞いてるの!?」
「君の話を聞き漏らした事は一度もない。 君の美しい唇から発せられる、アポロン神ですら奏でる事のできない音色に俺は夢中なんだ。 今日のは音楽に少しヒステリックさもあってむしろこっちの方が興奮するくらいさ」
「……なにそれ……もうっ」
相変わらずの軽口に失笑してしまう。
色んな人から美辞麗句並べ立てられる事はあるけど、その中で一番下手くそなのがマーシャ。
何言ってるかわからないもの。
マーシャも私も成長してもう決して子供とは呼べない身体つきになったわ。
それでもマーシャは私から離れない。
私も……離れてほしくない。
「……マーシャも最近すごく嫌われてるね」
「元々だよ」
マーシャはそう言って流すけど、以前より明らかに周囲からの当たりは厳しくなってるはず。
お父様が私の婿選びの際に課す命題は一つだけ。
『侯爵家の使用人マーシャと決闘して勝利すること』
お父様の真意はわかってる。
私とマーシャを引き離したいんだわ。
文武の才能なんてないのは明らかだもの。
それでも彼は決闘をすると負けない。
隠れて落とし穴を掘ったり、対戦相手に下剤を仕込んだり、風評被害を与えたりと、使える物はなんでも使って勝利する。
だから、マーシャの周囲からの評価は散々な物だわ。
それでも決して強くないマーシャの身体は……
「マーシャ……肩のケガは大丈夫?」
「こうして君とワインが飲めるくらいには」
一ヶ月前の決闘でマーシャは肩に一撃を受けて重症を負ってしまったの。
マーシャが血を撒き散らしてる中で、対戦相手は下痢を撒き散らして凄惨たる光景のなかで辛くも勝利を納めてくれた。
ううん、マーシャが決闘してくれた中で一度だって危なげなく勝利した事なんてなかったわ。
いつも、ボロボロで……
「マーシャ……私が淫乱って呼ばれる理由は聞いた……?」
「生憎と君以外に話す友人がいないからな」
特に気にした様子もないぼっち宣言。
私も似たようなものだけど、マーシャのこういう意思のブレない所は憧れる。
それよりも友人と呼ばれた事に思うところがあってワインを飲み干す。
そして意を決してマーシャに告げるの。
「氷の薔薇姫は子供の頃から使用人と……その……デキてるって……(きゃー!言っちゃったわ!) だから……誰とでも催すって……」
マーシャの気持ちを聞くのは昔からすごく怖かったけど、お酒の勢いも借りちゃったし、今日こそはイけるところまでイきたい(?)
けど、私の言を受けてマーシャが神妙な様子で眉をひそめてる。
「……使用人ってのは俺で、 デキてるってのは男女の意味でか?」
「う、うん。 多分……マーシャは……イヤ?」
酔ってるからじゃない。
心臓の音が胸だけじゃなくて、頭でも鳴り響いてるんじゃなかと思うくらい動悸してる。
「俺が騎士階級じゃないから君が余計に勘違いされてたってわけか」
「ち、違うの! そんな事どうでもいい! そうじゃなくて……」
回りくどい言い方のせいでマーシャにすら勘違いされてしまう。
どうして私はいつもこうなのだろう。
今の話はそこはどうでもよくて、私とマーシャが周囲から見たら恋人だと思われてて、私はそれが嬉しくて……
でも、もしマーシャにとってそれが重荷だとしたら、なんて考えると思いを伝えられないの。
涙がこぼれ落ちそうになって言葉が続けられない。
俯く私の頬にマーシャが優しく触れてくれる。
「……そんな顔するなよ。 多分、 勘違いなんかしてない」
そう言ってマーシャが私に口づけを交わしてくれる。
「〜〜!!!???」
「意外と酒くさいもんだな。 これもギャップ萌えってやつか?」
えーーー!?
えーーーー!?
それはそうして欲しかったけど、欲しかったけど!
ここ最近は、いいえ、なんなら性を自認してからはずっと悶々していたのよ!(イバラは前世からエ◯い)
マーシャと……して……する事を想像して何千回も!
それでもマーシャからしてくれたのが嬉しすぎてさっきのシーンを反芻してみる。
そして……
ポスッ!
マーシャの胸を叩く。
「何だよやっぱり俺の勘違いだったか? 両思いだと思ってたのは?」
全然勘違いなんかじゃない。
私だってずっとずっと昔からマーシャの事が……
それでも……それでも……
ポスポスポスーッ!!
何度も腕を振りおろす。
「酒くさいって何!? ずっとずっと今日を夢見てきたのに! 初めてが台無しよ! マーシャのバカ!」
「いたた……ぷ……あははっ!」
「笑わないでよ! マーシャなんて嫌い!」
「そうか? 俺は今日更に君を好きになったかもしれない。 今までだってこれ以上ないくらいに君を愛してたんだ。 その先があった事に驚いてる」
「なんで酒くさいと更に好きになるの!?」
「ギャップ萌え?」
くすくすと笑いながら答えられて、顔が真っ赤に染まるのはキスされたからだけじゃない。
羞恥心や劣情やら、多幸感、どの感情に身を任せていいかわからなくて混乱してるからだ。
「もうやだ! 私ばっかり変な所見せて! マーシャも変な所見せてよ!」
「俺にはむしろ変な所しかないよ」
「そんな事!……そんなこと……あるかも……?」
「ローズはギャップ萌えを楽しめないな。 残念」
そういえばマーシャはお父様の拷問のようなしつけも喜ぶ変な所があった。
子供の頃のしつけで裸で犬に全身を舐めらるなんて屈辱すらも楽しんでるように見えたし。
「だったら……!」
私はマーシャを羽交い締めに押し倒して彼のセンター分けをワシャワシャと崩す。
石造のテラスだから硬い作りでマーシャは痛かったと思う。
「いてて……あーあ、 俺のきっちりセンター分けが」
「前から思ってたけど、 マーシャこっちの方がカッコいいよ。 今日からこっちの髪型にして」
仰向けになったマーシャに跨りながら、ねだってみる。
「それはローズの頼みでも聞けないな」
「なんで?」
「ローズがギャップ萌えできなくなっちゃうから」
「ふふっ。 何それ」
「冗談だよ。 才能のない俺はできる事は何事もきっちりしていたいんだ。 君に釣り合う男になりたいから」
この時どういう意味で言ってくれてるかもっと真剣に考えれば良かったわ。
でも、子供の頃から大好きだったマーシャと思いが通じあえた嬉しさから何にも気づけなかった。
彼が勘違いしていた事に。
その後、他国からの侵攻を防ぐためにマーシャが兵士として派遣された。
お父様は軍事指導者としての役割もあって、王国の軍勢に従事して戦略の立案や指揮を行うことができたから。
武功を上げれば騎士階級に取り立てる事を約束されていたそう。
そんな立場、必要なかったのに。
マーシャさえいてくれれば、私はどこでだって生きていけたのに。
幾人もの決闘に勝利してきたマーシャは兵士として英雄のように祭り上げられて、初戦であっさりと戦死した。
彼に戦争の才能なんて一切なかったんだもの。
ただ、私と一緒にいたかっただけの、普通の人だったから。
訃報を受けた所で、いつも夢は終わってしまってローズの生涯がどうなったかは私にはわからない。
珍しく、1から10までそのまま真面目回でしたね。
設定をそのまま出したら、こんな感じになってました。
個人的には明るい話が好きなのですが、次回はイバラとのデート回の続きです。
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