日本それほど昔ではない話(平成残酷版)
あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
そしておじいさんは山の中で一本の光り輝く竹を見つけました。
「あからさまに怪しい竹じゃな。そのままにしておいた方が良さそうじゃ」
おじいさんは必死にアピールしている竹を無視して、そのまま家に帰ってしまいました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れて来ました。
「おお、こりゃまた大きな桃じゃこと。市場で売って金儲けじゃ」
意地汚いおばあさんは、桃を拾って市場に持って行き、それを高額で売ってしまいました。
そして、おばあさんは家に帰っておじいさんと儲けた金で飲めや歌えのドンチャン騒ぎをしました。
翌日のことです。
庭で犬のポチがけたたましく鳴くので、おじいさんはポチを叱りました。
「うるさい、このバカ犬! 静かにせんか!」
ポチは叱られてしょげてしまいました。
午後になりました。
おじいさんはいつものように山に芝刈りに出かけようとしました。
「行ってらっしゃい、おじいさん」
意地汚いおばあさんが言いました。するとその時です。
「柄巣阪月子さんのお宅ですね?」
刑事が現れました。
「はい、そうですが」
「保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕状が出ています」
刑事は凄みのある顔で言いました。おばあさんはびっくりして、
「何の事ですか?」
「貴女が市場で売った桃の中から生後間もない乳児の遺体が出て来たんです。知らないとは言わせませんよ」
「ええ!?」
おばあさんはいろいろ言い訳をしましたが、
「話は署で聞きます」
とパトカーで連行されてしまいました。
おじいさんは呆然としていましたが、やがてにんまりとしました。
「これで大手を振って浮気できるぞ」
おじいさんはその日若い女をたくさん集めて夜通し遊びました。
ところがおじいさんの酒池肉林の生活も長くは続きませんでした。
ある日、おじいさんが山へ芝刈りに出かけると、長い髪の美しい女性に出会いました。
その女性はおじいさんが今まで会った女性の誰よりも美しく、魅力的でした。
「わしと暮らさんか?」
即実行のおじいさんはいきなり言いました。
「はい」
その女性はニッコリ微笑んで言いました。
おじいさんは喜んで、芝を刈るのも忘れてその女性を家に連れて帰りました。
その夜です。
おじいさんは生気を吸い取られたように痩せ細り、泥のように眠っていました。
相当激しい夜だったようです。
「起きろ、ジジイ」
「む?」
おじいさんはゾッとするような声に目を覚ましました。
「ひっ!」
そこには雪女が立っていました。あの美しい女性の正体は雪女だったのです。
「お前は私の友達を見殺しにした。その報いを受けよ」
「見殺し? 何のことじゃ?」
おじいさんは意味がわからず、尋ねました。すると雪女は、
「竹の中にいたかぐや姫だよ! お前が竹を切って出してくれなかったから、あの子はそのまま死んでしまったんだ!」
「知らん、そんなこと!」
おじいさんはとんだ濡れ衣だと思いました。
「うるさい! お前のような奴は、ずっとこうしているがいい!」
雪女は猛吹雪を起こし、おじいさんを氷漬けにしてしまいました。
「かぐや、仇は討ったよ」
雪女は涙ぐんで山へと帰って行きました。
そして次の日の朝です。
「ふあーあ」
家の奥から目ヤニだらけの男が起きて来ました。
「いやあ、三年寝たら、気分爽快だな」
男は歯糞だらけの口で言いました。
「お?」
男は見知らぬ老人が氷漬けになっているのに気づきました。
「また、俺が寝ている間に、勝手に住み着いた奴がいたのか」
男はおじいさんが凍っていることにはまるで関心がないようです。
「わんわん!」
外でポチが鳴いています。
「おお、ポチ、元気だったか? どうした?」
どうやらポチはこの男の飼い犬のようです。
「わんわん!」
ポチは庭の土を掘り返しました。
「何かあるのか?」
男は庭をスコップで掘り返しました。
すると土の中から大きな葛篭が出て来ました。
「おお、これはすごい」
中には金銀財宝がたくさん入っていました。
しかし、財産に興味がない男は、警察に遺失物として届けてしまいました。
「さてと。旅にでも出るか、ポチ」
「わんわん!」
ポチは嬉しそうに答えました。
男は一本のわらを手に持ち、家を出ました。
ポチは男と幸せに暮らしました。
めでたし、めでたし。