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お義父さん

 大恋愛の末結ばれたわけではありません。


 幾度となくしたお見合いの末、やっと結婚に漕ぎ着けた、という私です。


 夫はとても優しく、そのご両親もとてもいい方です。


 一男一女にも恵まれ、私はとても幸せ。


 独身時代、恋愛できない自分に焦りを感じていました。


 あの頃の憂鬱感が嘘のようです。


 友人達にも羨ましがられました。


 多くの人が大恋愛をして劇的なゴールインをし、やがて熱が冷めるように冷え切った夫婦関係に陥っているのに、私と夫の間にはそんな事は皆無です。


 妄想ではありません。


 私は本当に今の生活に満足しているのです。


 只一つの事を除いては。


 この際だから、思い切って言ってしまいます。


 唯一の不満。我慢しかねる事。


 それは、お義父さん。


 いえ、優しい方です。


 子供の面倒も良く見てくれます。


 私に対するセクハラはありません。


 そんな方でしたら、まだ対処のしようもあります。


 私が我慢できないのは、お義父さんの生活習慣です。


 手を洗わないんです。


 トイレに入っても、外から帰っても、手を洗わないんです。


 ああ、お願いだからそんな手で子供を抱いたり頭を撫でたりしないで!


 そんな手で冷蔵庫を開けて中のものを触らないで!


 私は毎日お義父さん達が寝てから、家中の消毒をしています。


 子供達はお風呂で念入りに殺菌効果のある石鹸で洗ってあげます。


 夫に相談した事もありました。


「気にし過ぎだよ」


と言われました。


 確かにそうかも知れません。


 それでも、こればかりは譲れないのです。


 私は直接あの優しいお義父さんにそのような事を言えません。


 自分がおかしいのでしょうか?


 日々その感情が高ぶるのを抑えるのが大変です。


 ああ、今日も洗わない手でつまみ食い。


 しかも2切れ取ったキュウリを1切れ器に戻しました。


 私はつい包丁をジッと見つめてしまいます。


 お義父さん! いい加減にして!


 そう言える日と私が暴走してしまう日のどちらが早いのか……。


 ああ、また包丁をジッと見ている私……。

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