取立人
俺は新橋義雄。
リストラで職を失い、生活保護を受けるために市役所に行ったが、税金の滞納があるため、難しいと言われた。
どうやら資格なしという事のようだ。
あきらめた。そんなところで粘っているくらいなら、職を探した方がいいと思ったからだ。
しかし、それも甘かった。
俺は三十代後半。妻も子供もいないお気楽人生だったが、それでも遊んで暮らせるほどの蓄えもない。
ハローワークも冷たかった。と言うより、俺にはそう感じられたという事かも知れないが。
そんな訳で、俺はつい消費者金融に頼ってしまった。
一時はそれで飢えをしのぎ、俺は生き延びる事ができた。
ところが、そこから別の苦難が始まった。
俺が借りたのは所謂闇金だったのだ。
とにかく催促が激しく、俺はアパートに帰れないほどだった。
最初は友人の家などを転々としていたが、そのうちにそこまで見つけ出され、乗り込まれてしまった。
友人も激怒してしまい、俺は追い出された。
そして行き場を失い、公園やガード下で夜露を避ける生活を始めた。
ところが、絶対に見つかるはずがないと思っていたのに、闇金は俺を探し出し、脅した。
「金返せよ、おっさん。ふざけてるんじゃねえぞ!」
ヤクザと変わらない凄みで、闇金の取立人は俺に怒鳴った。
「わ、わかった。返す。返すから」
俺は遂に決断し、そいつを伴って歩き出した。
「おい、どこに行くんだよ?」
「この先に親戚がいる。そこで金を貸してもらうから」
俺は咄嗟に嘘を吐いた。取立人は訝しそうに俺を見て、
「嘘だったら只じゃおかねえぞ」
「あ、ああ」
俺はトボトボと道を歩いた。
人もいない。ここなら。
「おい、家がなくなって来たぞ。てめえ、騙したな!?」
取立人が怒り出した。俺は隠し持っていた護身用のナイフで、いきなりそいつの胸を刺した。
「うおおお……。てめえ……」
完全に不意を突けた。取立人はそのまま仰向けに倒れ、死んだ。
俺はナイフを引き抜き、近くの川に投げ捨てた。
これで逃げられる。そう思った。
俺は安心し切ってアパートに戻った。
そして、久しぶりに暖かい布団で眠った。
しかし、そううまくは行かなかった。
また取立人が現れたのだ。
しかも、殺したはずのあいつが。
死んでも取り立てに来るなんて、何て執念なんだ。
「てめえ、金返せ! それと俺の命も返せよ!」
窓を少しだけ開けて見てみると、胸から血を流したあいつが立っていた。
「おい、いるんだろ!?」
奴はドアを叩く。顔色は青白くなっていて、まるでゾンビだ。
俺は怖くなって、窓から逃げ出した。
そして近くの公園の滑り台の下の穴に隠れた。
「おい、何逃げてるんだよ!」
奴が覗いていた。
「わあああ!」
俺は絶叫して駆け出した。
どこに逃げても奴は追って来た。
俺はとうとう耐え切れなくなり、海に飛び込んで死んだ。
これで解放される。そう思った。
しかし。
「てめえ、何死んでるんだよ!? 金返してから死ねよ、おい!」
俺はあの世に行っても、奴に追い回されている。
もう逃げ場はなかった……。