その日来る
怖い。やり切れない。何であんな事をしてしまったのか?
後悔ばかりが頭の中をよぎる。
今日は「死刑執行」の日。遂に来てしまった。
一日一日とその日が近づいて来るのを恐れていた。
その日が来る前に死んでしまいたいほど恐ろしかった。
しかし私が悪いのだ。誰のせいでもない。全て自分の責任だ。
もうどうしようもない。諦めるしかない。
今日がその日。係官が歩いて来る足音が聞こえる。
その冷たい響きはまさに「死神の笑い声」に聞こえた。
ガチャンと重い鉄の扉が開く。
「時間です」
係官の無機質な声がした。私はその声にビクッとした。
「さあ、立って」
私は顔を上げて係官に従い、死刑執行室に向かった。
何度も足がすくんで動けなくなった。
そのたび係官が私を抱き起こすようにして歩いた。
執行室の前まで来ると、私は暴れた。
「嫌だ! 絶対に嫌だ!」
係官は遂に応援を呼び、私は引き摺られるようにして中に入った。
「やっぱり嫌だ! 死刑なんて嫌だ!」
私はまた尻込みして暴れた。係官の一人が私を羽交い絞めにした。
私は抵抗するのをやめ、脱力した。
「嫌なんだ。死刑は嫌だ。嫌だ」
それでも言葉では抵抗を続けた。
「今更そんな事を言われても困る! あんたが望んだことだろう?」
業を煮やした係官の一人が怒鳴った。
「あんたはあんたの奥さんを殺した犯人をその手で殺したいと望んだんだ。早く電気椅子のスイッチを押しなさい!」