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言霊男

山羊ノ宮先生のご推薦を賜りました。

 私はある理由から無口でおとなしい小学生だった。


 学校にいじめっ子がいた。


 理由はわからないが、そいつは私を執拗に苛めた。


 やり方は陰湿。かばんの中を水浸しにしたり、上履きに泥を入れたり。


 椅子が隠された事もあった。


 先生に言ったが、取り合ってくれない。


 私は耐えるしかなかった。


 

 

 でもそれにも限界が訪れた。


 私はそいつが通る道の途中で待ち伏せし、


「お前なんか交通事故に遭ってしまえ!」


とだけ叫ぶと逃げた。


 そいつはせせら笑っていた。




 翌日、そいつが交通事故で怪我をしたことを学校で知った。


 そいつの取り巻き達が一斉に私を見た。


 しかし何も言わない。


 もし私が「死ね!」と言えば、本当にそうなってしまうと思ったからだ。


 そいつらは急に私に媚びるようになった。


 私は全然嬉しくなかったが、苛められなくなったのでホッとしていた。


 

 

 翌日、私の噂がクラス中に広まっていた。


 皆の私を見る目が違う。


 誰かが喋ったのだ。


 私はいじめっ子連中を疑い、睨んだ。しかしそいつらは必死に否定した。


 俺達は喋っていないと。


 私はそいつらに私の正体をばらすメリットはないと思い、信じてあげた。




 その日の下校時、「真犯人」が現れた。


 同じクラスの無口の奴だった。今まで一度も話したことがない。


「お前、言霊使いだな?」


「ことだまつかい?」


 私は初めて聞く言葉に驚き、そいつを見た。そいつは私を見てニヤッとし、


「俺もそうなんだよ。言葉に念を込めて放つと、それが現実になる。お前も俺と同類、仲間だ」


「・・・」


 私はそいつを相手にするつもりがなかったので、無視して歩き始めた。


「おい、俺と組まないか? この力をうまく使えば、思い通りだぜ。欲しいものも、好きな女も全部自分のものだ」


「何言ってるの、わけわからないよ」


 私はそれでも無視して歩き続けた。


「待てよ! 俺を誰だと思ってるんだ。成りはガキだが、言霊使いの中では最上級の力を持っているんだぞ」


「関係ないよ」


「貴様!」


 そいつは激怒して私を追いかけて来た。そして、


「俺の奴隷になれ!」


と叫んだ。私は振り向かずに、


「全部お前に還る」


とだけ言った。


「え?」


 奴の放った言霊は奴に帰り、奴は私の奴隷になった。




 私はそれ以降その力を封印し、二度と使うまいと心に誓った。


 しかし、その誓いが揺らいでいる。


 今目の前にいる男のせいで。


「またお前か!? 何度同じミスを仕出かすんだよ! どうしてお前みたいな間抜けが、わが社に入社できたのか、不思議で仕方がないな!」


 私はこの怒鳴る事しかできない「クズ」をどう「処理」するか考えていた。

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