表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/105

探し物は何ですか?

 私はごく普通の主婦。毎日夫と子供達の世話に追われ、自分の事に気を使うゆとりがない。


 ある日の事。


 私は自転車で近所のスーパーに買い物に出かけた。


 いつも道をいつものように進んで行く。


 スーパーまであと百メートルくらいまで来た時、私はおばあさんが身を屈めて側溝を覗き込んでいるのに気づいた。


「どうしましたか?」


 私は自転車を停めておばあさんに声をかけた。


「はい、ここに落とし物をしてしまいまして。見つからないのですよ」


 おばあさんは側溝を覗き込んだままで答えた。今にも落っこちてしまいそうなくらいの態勢だ。


「何を落としたんですか?」


「大事なものなんです。あれがないと困るんですよ」


「そうですか。私も一緒に探しますよ」


 お節介が服を着て歩いているような性格と夫にいわれる私は、自転車を降りておばあさんに近づいた。


「どの辺に落としたんですか?」


「多分この辺なんですけど。見えないのでよくわからないんです」


「そうなんですか」


 私も側溝のそばに膝を着き、中を覗き込んだ。


 おばあさんは側溝の水の中に右手を突っ込み、バシャバシャとかき回すようにしている。


 そんな方法で見つかるのだろうか?


 私は不思議に思いながらも、目を凝らして水面を見た。


 それにしても何を落としたんだろう?


「探し物は何ですか?」


 私は見当をつけるためにおばあさんに尋ねた。


「すみませんねえ、見ず知らずの方にそこまでしてもらって」


 私は側溝に転げ落ちそうになるくらい驚いた。


「目玉を両方落としてしまったんですよ。見えないから見つけられなくて」


 おばあさんはニッコリ笑って、空洞になった目の部分を私に向けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ