同級生
私はある企業のOL。
就職してすでに四半世紀が経つ。
一番良かったのは、バブルの頃だろうか?
毎日男をとっかええひっかえ……。
嘘はいけない。そんな事実はない。
それがあったのは高校の同級生の優香。
どういう縁か、就職先も一緒になった。
彼女は毎日ポケベルが鳴っていた。
私のポケベルが鳴るのは、緊急の出社の時か、休日の変更の時のみ。
持っている意味あるのか? 家族と同居なのに。
家の電話でいいじゃん。
でも、それは僻みだったのかも知れない。
優香は入社直後に同僚の恋人ができ、三年後に結婚。
その一年後には第一子出産。
時の経つのは早くて、もうすぐその子が結婚するらしい。
「優香さ、四十代でおばあちゃんかもよ」
そんなことを同窓会で聞いた。
その同窓会も出席するのが嫌だ。
同級生で結婚していない女子は私と由美だけ。
但し、由美はシングルマザー。そこが違う。
私は、聞いた話では「パーフェクトシングル」なのだとか。
何だそれは? 結婚しない事がいけない事なのか!?
「できない」と「しない」は違うよ、と言われた事がある。
その言葉が一番悔しい。
私は結婚できない女ではない。しない女だ。
どこまでも強がりを言う。そう思われても仕方がない。
「お前さ、ブスじゃないのにどうして結婚できないのかな?」
同窓会で無神経なバカ男にそんな事を言われた。「ブスじゃないのに」は褒め言葉なの?
「どうしてだろうねえ。不思議だねえ」
その時は笑っていたが、本当は激怒していた。
それって、「性格が悪い」と言われているようなもんじゃないのよ!
ああ。
こんな発想がいけないのかも知れない。
同窓会はお開きになり、親しい者同士がそれぞれの二次会に繰り出して行った。
私は誰からもお誘いがなく、そのまま帰宅する事にしてタクシーを探した。
「雨宮」
私の苗字を誰かが呼ぶ。振り返ると、高校の時密かに憧れていた八木君が立っていた。
「あ、八木君。二次会には行かないの?」
「ああ。俺、今傷心中でさ」
「え?」
私はその時、八木君が同級生の香と離婚したばかりなのを思い出した。
香は当然同窓会には来ていない。
「でさ、慰めてほしいかな、なんて思ったんだけど」
「……」
私はどう反応したらいいのかわからず、只立ち尽くしていた。
「頼むよ」
八木君が照れ臭そうに微笑む。私は、
「し、仕方ないな。カラオケでいい?」
「どこでもいいよ」
八木君がごく自然に私の肩に手を回した。ドキッとした。
「行こうか、雨宮」
「うん」
できれば下の名前で呼んで欲しい。
そう思った。