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マリッジブルー

 圭太はもうすぐ婚約者の美春と結婚する。付き合い始めて三年、何の支障もなく二人の関係は進展し、後は式当日を待つばかりだ。式は長野県の某教会で挙げ披露宴はその近くのレストランで行う事になっている。

 しかし、今頃になって圭太は結婚が不安になって来た。美春は憂鬱そうな圭太の顔を見て、

「何よ、男の圭太がマリッジブルーなの?」

とおかしそうに言う。圭太はそんな美春の問いかけに苦笑いし、

「そういう訳じゃないんだけどさ」

と適当に返事をした。


 圭太が不安になったのは決してマリッジブルーだからではない。彼は美春に重大な隠し事をしていたのだ。

(絶対にばれるはずがないとは思うけど……)

 そう思う圭太だったが、どうしても不安は拭い切れなかった。


 美春は美春で、圭太の様子がおかしいのを気にしていた。彼女はそれを親友の千絵に相談してみた。

「前の彼女と完全に切れていないんじゃないの? 土壇場で躊躇する男ってそれが多いらしいよ」

 離婚まで経験している千絵の言葉は美春にはそれなりに説得力がある。

「何しろ、それを身をもって体験したんだからさ、私は」

 千絵は自嘲気味に言った。


 千絵のアドバイスを受けた美春は圭太ともう一度話をしようと思って彼を呼び出した。

「何だよ、話って?」

 喫茶店に現れた圭太はイライラしていた。美春はそんな圭太を心配そうに見ながら、

「圭太、何か結婚を躊躇うような事があるの?」

「ないよ」

 圭太は更にイラついたように言い切る。美春は弱々しく微笑み、

「貴方の事が心配なのよ」

「大丈夫だよ。話はそれだけか?」

 圭太はムッとしたまま席を立つと、サッサと店を出て行ってしまった。


 美春の前ではそんな態度をとってしまった圭太だったが、

(美春に悪い事をした)

と心の中で反省していた。


 やがて式当日。あれほど思い悩んでいたのが嘘のように圭太は終始笑顔でいた。美春もそんな圭太を見て安心した。

 披露宴も無事終わった。二人はレストランの近くのホテルに泊まり、翌朝新婚旅行に出かける予定だ。

「美春」

 圭太がホテルの部屋に入るなり美春を後ろから抱きしめる。

「圭太」

 美春の手が圭太の腕に触れる。

「え?」

 その腕は何故か焼け爛れたようになっていた。

「うわ!」

 圭太は美春を突き飛ばした。

「あんただけは何があっても幸せになんかさせない。この女に取り憑いて、一生あんたを苦しめてやる」

 そう言って圭太を睨んだその顔は圭太が五年前に殺して遺体を燃やして捨てた留美のものだった。

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