同棲
ああ。
信じられない。
ずっと夢だった。
叶えたいと思っていた。
でも到底叶わないとも思った。
それが信じられない事に叶ってしまった。
子供の頃から憧れていた同棲。
その何となく後ろめたくて、それでいて眩しいような言葉。
ずっとずっと好きだった高校時代の同級生。
その彼に偶然街で出会った。
彼も私の事を覚えていてくれて、嬉しさのあまり、
「一緒にお食事でも」
と思い切って誘ってみた。
彼は快諾してくれた。
私は有頂天になった。
デートでも何でもない。
只単に昔の同級生に久しぶりに会ったから、というだけ。
彼の心の中は、その程度だと思う。
いや、そうだ。
きっとそうだ。
それでも良かった。
幸せだった。信じられなかった。
夢なら冷めないで、と思った。
でも夢じゃなかった。
「楽しかったよ」
別れ際にそう言われた。
失神するかと思った。
それくらい私の心は高揚した。
そして今、更に信じられない事に私はその彼と同棲している。
私の狭いアパートに二人。
もう何もかもが輝いて見えるくらい嬉しい日々。
でも一つ困った事がある。
彼自身。
同棲を始めて一ヶ月。
そろそろ何とかしないと。
強力な防臭剤、どこかで見つけて来ないとね。
じゃ、仕事行って来るね、ダーリン。