キャッチボール
よくわからないけど、夏。
「あのさー。今って何?」知らない男が僕に質問してきた。
よくわからないけど、ここは海。
「あのさー。今って何?」また別の知らない男が僕に質問してきた。
よくわからないけど、キャッチボール。
僕は今、知らない男たちと一緒にキャッチボールをしている、ピンポン玉で。
とても投げにくい。小学校の頃、ピンポン玉を投げる授業をサボっていたことが影響している。
もっとちゃんと勉強しておけばよかったなあ、なんて考えていたら、僕はピンポン玉を落とした。
知らない男Aが僕に近づいてきた。知らない男Aとは、最初に話しかけてきた男だ。
Aは僕の笑った。Bもつられて笑った。
このBというのは、後から声をかけてきた知らない男だ。
僕らはキャッチボールを一緒にやったことで仲良くなれた。ただ、会話のキャッチボールはまだしていない。
よくわからいけど、秋。
あれから2か月間、キャッチボールを続けている、ピンポン玉で。
よくわからないけど、ここは海。
僕らは言葉を失くした。感情も失くした。今あるのはピンポン玉だけ。
そうだ、卓球部に入ろう。
僕らのキャッチボールを見ていた小学生が、そう呟いて走っていった。
これですべてよし。明日からはテニスボールを使おうと思う。