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Case.1 桐生すみれの場合-12

 それから、お祖父様とお祖母様に本当のことを話して。お父様とも、緊張したけれど話をして。お義母様達にもこれまでのことをしっかりと言って。私の言葉は否定されずに、案外ととんとん病死に物事は進んでいった。


 どうも、虐待があったことは認知されていたのだけれど、私がいつも言葉を噤んでしまうので、そのあたりも足かせになっていたらしい。こういうときは、本人が助けを求めるのも必要なんだって、初めて知った。誰か任せで助けてと思っているだけじゃ進まないことを、ここでも痛感することになった。


 もともとお父様とお義母様は会社の力関係の結婚だったから色々と会社を含めてゴタゴタとしてしまったけれど、今後は別れて良い方向に進んでいきそうとのことだった。

 お母様がいなくなって、それでも会社のことをしなくちゃいけなくて、私に構えていなかったことや助けられなかったことをお父様に詫びられたけれど、お父様に言うのを勝手に怖がっていた私にも原因はあったことだし、そこはトントンというか、これから少しずつ関係も改善できて行けたら良いと思う。



 と、何はともあれ色々あって。そのことで少し学校を休んでしまったけれど、私はまたこの街に、学校に戻ってきていた。



「すみれちゃんおはよー」

「すーちゃん、今日も美人さんだねー」



 友達が増えて、円満な学校生活が送れるなんて、あの夜には思いもしなかったけれど。

 自分の足でしっかりと動いて、楽しい毎日を過ごせている。なんて幸せなことだろう。



 と。



 赤来戸さんは会って挨拶をしてくれたのに、古井戸さんは後ろの方でなかなか挨拶をしてくれない。どうしたことだろう。



「私には挨拶してくれないの?」

「……おはよう。桐生。元気そうだな」

「おはよう。誰かさんのおかげですっかり元気だよ」



 あれから。

 あれから初めて会うから。


 私も、どう接して良いのか分からないけれど。

 だけど、友達みたいに、仲の良い友達みたいになりたいと思った。



「何にも聞かないの?」

「聞いてほしいなら聞くけど」

「案外冷たいんだ。あんなに私のために泣いてくれたのに」



 軽口を交わせるくらいに仲良くなって。



「ありがとう。本当に……色々してくれて。すごく嬉しかった」



 本当の気持ちを伝えて。

 今なら、いいかな。


 古井戸さんなら、怒らないかな?




「ね。ほーちゃん」




 あだ名で、呼んでみた。

 友達レベル。アップしたかな。



 照れて顔をそらす彼に、私は満面の笑みで返す。




 空は青くて、彼の頬は赤くて。

 なんだか不思議な水玉模様が生まれたみたい。




 そんな彼の横顔を見て、前を向く。

 ここから、ハッピーステップを。



 しあわせになるための第一歩を。





 私は誰よりも嬉しく、踏み出すんだ。



お読みいただきありがとうございました!

分割した関係で短くなってしまいましたが、以上でCase.1 桐生すみれ完結です。

こんなことを桐生すみれは思っていたんだなと思っていただけたら幸いです。


思ったよりかなり長くなってしまいましたが(1話で当初終わる予定だったはずなのに……)、桐生すみれについて改めて書けて良かったです。

これからの桐生とほーちゃんの関係性も見ていただけると嬉しいです!


次は久々のほーちゃん視点に戻ります。カッスもいるよ!

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