Case.1 桐生すみれの場合-7
前回のあらすじ。
古井戸さんと赤来戸さんにおばけの相談をしたところ、かまいたちの仕業かもしれないいうことが分かった。
「ありがとうございます……。お二人に相談して、良かった……」
一通り話ができて、しかも、二人ともしっかりと相談に乗ってくれてホッとした。
思わず涙腺が緩んでしまう。
そう、そうだよ。私は何も間違っていないはず。
二人に話して、これで解決するはずなんだから。
『話しただけで、本当に解決するの?』
『そんなわけないじゃない』
『だって、おばけなんて本当は――――』
頭に響くそんな声は無視して、ぎゅっと目を瞑る。
なんで、なんでそんなこと言うの?
「あれは……桐生のお母さんか」
古井戸さんの声に目を開けると、写真の中のお母さんと目が合った。
「綺麗な人だな。桐生によく似てる」
「……そう言っていただけると嬉しいです。お母様のことは、もうあんまり覚えていないんですけれど」
写真立てを手に取って抱きしめる。
「優しくて、大好きだったことは、覚えているんです」
『うそつき』
古井戸さん達には、動揺したことはバレていないだろうか。
その後少し話をして、古井戸さんと赤来戸さんと別れた後、声はもっと聞こえるようになった。
『あははっ! うそつき、うそつき、うそつき!』
「やめてよ!」
ころころと踊るような楽しげな声に思わず大きな声を出してしまう。
……外には届いていないみたい。良かった。
『だってそうでしょう』
私が話すのをやめても、声は続く。
『そんなに優しいお母さんに無理をさせたのは誰?』
『大好きなお母さんを殺したのは誰?』
『会うのが怖くてお墓参りにもろくに行けていないくせに』
やめて、やめて、やめて……。
『わたしがもっと良い子だったら、こんなことにはならなかったのに』
私を見下ろしてくるのは、私自身。
ふわふわと空中を楽しげに舞う、意地悪なことしか言わないもう一人の私。
『古井戸さん達だってあきれてるんじゃない?』
「やめてよ」
『高校生にもなっておばけなんて言い出してさ』
「やめて」
『普通の人はもっと普通に友達くらいできるんだよ』
「……やめて」
『こんなことを言い出さなきゃ構ってもらえないの?』
そんなことない。
古井戸さん達は入学式の時から、ずっと話しかけてくれて。
昔のことも覚えてくれていて。
今日だって、誘ったらちゃんと泊まりに来てくれた。
だから。
『じゃあ、なんで誕生日パーティーには来てくれなかったの?』
反論しようとした口は、噤むことしかできなかった。
『クラスのみんなは知ってたのにね』
『二人だけ都合よく知らなかったんだ』
『本当は来たくなかっただけだったりして』
もう一人の私が笑うと、パンッと破裂音のような音が響いた。
あれは、調教用の鞭の音だ。
『どうしたの?』
『もうここにはお義母様はいないのに』
『何でこんな音がするんだろうね』
やだ、やだ、いやだいやだいやだいやだいやだ!
怒らないで叩かないで放っておかないで。
『いつまでたっても、私が悪い子だから怒られるんだよ』
パンッ!
「桐生、やめろっ!」
音と同時に痛みが走った。
腕にまた傷ができている。赤い、赤い、赤い血の痕は無数にあって。
なのに。
「かまいたちだ」
そんなものなんていない。
「かまいたちが、現れたんだ」
私がやったんだよ。
唇を噛んで悲しげにこちらを見ている古井戸さんがついた嘘と一緒に、その言葉は飲み込むことにした。
お読みいただきありがとうございました!
大変久しぶりの更新となり申し訳ありません…;
お待ちいただいた方、また新しくお読みいただいてここまで来ていただいた方、本当にありがとうございます。
そんなに長くなると思わなかったCase.1 桐生すみれが長くなってきてしまったので、キリが良いところまで書いてから……と思っての投稿となりました。
桐生すみれ編最後までとその次のお話も書けたので、しばらく毎日更新できそうです!
繁忙期と体調不良で死にかけていましたが、書けるのってやっぱり楽しい!
読んでいただけるのもとっても嬉しい! 反応をいただけてさらに嬉しい!(お読みいただけるだけでももちろん大丈夫です!)
と色々な気持ちが詰まっての更新となりました。
全然書けていなかったのってやっぱりストレスになっていたんだなぁとか、書くの楽しいなぁとかみなさんにキャラクター達のお話を読んでいただけて嬉しいなぁとかそんな気持ちでいっぱいです。
また更新していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
後書きもお読みいただきありがとうございました!




