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mission66 まだ見ぬ未来を救出せよ!


 そうして桐生に会えないまま、時間だけが過ぎていく。


「ほーちゃん、大丈夫?」

「ああ……せめて桐生に会えればいいんだが……」


 太郎は桐生の席をちらりと見やって言う。


「そうだね……あのあとずっと休んでるもんね」


 またかまいたちが出ていないといいんだけど。と太郎は太郎なりに心配して言う。だが、もうバッドエンドルートに乗ってしまった以上、太郎にできることはない。


「ドラゴン……これは、友達の話なんだが」

『お、自分の話かぷん?』

『初手で話の腰を折るな』


 そうして、太郎に桐生であることはぼかして、多分変えなくても気づかないだろうが若干設定も変えて桐生のことを相談する。これで何か変わるわけではないかもしれないが……何もしないままでは桐生の身が危ない。


「家庭の事情でその子が傷ついているなら……児童相談所とかかなぁ」


 案外と難しい解決策を出された。


「学校の先生とか保健室の先生でも相談するとつないでくれるらしいんだけど、おじいちゃん達にも相談できないなら難しいよね」

「そうなんだよな……周りには助けられる存在もいるはずなんだが」


 あとは桐生が声を上げるだけ。それだけでも自体は動くはずなんだ。

 会えないから説得も何もないけど。


「家に行っても会えないんだよね。その子が行きそうな場所にもいないし」

「ああ……」


 バッドエンドルートに入ったからか、時間の進みがいつも以上に早い。太郎が行動できないからか、俺もいつの間にか夜になっていて朝になってと身動きのとりようがない。


「じゃあ、もう物理しかないよね」


 転移者こと委員長が話しに割って入ってきた。


「そう思わない? 古井戸くん」

「物理……って」


 どういうことだ。そして、まだ彼女の正体も当てていなければキスもしていないというのに、彼女が情報を与えてくる理由は。


「だって、()()()()()んだよね」


 彼女には、わかっているのだろうか。

 エンディングが。バッドエンドが近づいているということが。


 だからこそ、もう接触できる数少ない機会にヒントを与えにきたということか?


「じゃあ、彼女が出てくるタイミングで物理的に捕まえるしかないんじゃないかな」

「いや、彼女が出てくるタイミングって」


 ある。


 1つだけ。確実に。

 彼女が、死ぬタイミング。


「古井戸くんなら、知っているんじゃないかな」


 思い出せ。彼女が死ぬあの夢を。ペンダントを片手に遠く……月を見ている桐生。月、夜、明かり、線路、駅のホーム、スーツケース、警笛、ブレーキ音、最悪の結末。その中で、何かヒントになるものは……。



「月、か」



 あの夢では、満月が出ていた。


「次の満月はいつか、わかるか?」

「残念ながら私にはわからないけど」


 詳しい子ならいるよね。と、彼女に促された先は。



「……わかるよ。月の満ち欠けくらい。ね……パミュリャン……」



 あのイベント以降無駄に接しづらい笹川さらら。オカルト少女。

 確かに、笹川ならそのあたり詳しそうだが。


「次の満月だと……明日、だね……」


 新聞を見るわけでもなく教えてくれるが、まあ笹川が言うならそうなのだろう。

 全然時間がないな。


「サンキュー。笹川」

「明日……何かあるの?」


 言いながら、笹川はフードの下からじろりとこちらを覗く。何を企んでいるのか。


「いや、月見でもしようかと思ってな」

「ふーん……そう」


 納得したのか納得していないのかはわからないが、笹川はそれで落ち着いてくれたらしい。


「夜は……色々出るから。くれぐれも……気をつけてね……」


 不穏な言葉を残して、ではあるが。



「途中から話がわからなくなっちゃったんだけどさ」



 そういえば、最初太郎に話をしていたんだった。委員長が途中で混ざってそのまま指さされた笹川のところに行ってと動いていたが、その間も太郎はずっとついてきていたっけ。


「何かあるなら明日、僕も手伝うよ! 僕のパンチをお見舞いしてやるよ!」

「物騒だな……」


 パンチはいらないが、太郎がいてくれるなら、それはそれで一人よりは心強い。主人公補正でなんとかなる部分もあるかもしれない。

 だが。



「大丈夫だよ」



 太郎にできることは、残念ながら何もない。

 このバッドエンドを回避するためには……きちんとルートを通っていない太郎の言葉ではきっとだめなんだろう。数多のギャルゲーで「これはどう考えても付き合ってるじゃん! 相手もこっちに気があるじゃん! あんなに頬染めてさぁ!」と思ったとしても、きちんとフラグが立っていなければ寂しいエンディングを迎えるように、太郎には為す術はない。


「その代わり、成功するように家で祈っててくれるか?」


 その言葉に一瞬、太郎は寂しそうな顔をしたが。



「まかせて! 僕にできる100%で帰りを待ってるね!」



 すぐに笑って、俺を信じてくれた。いつだって、俺を信じてくれるんだな。素直に。


「明日が終われば、また忙しくなるだろうしな」

「うん。ミュージカルもそろそろだしね!」


 すっかり忘れかけていたが、もともと桐生イベントかと思って取り組んでいたそれは、明日さえ乗り切ればやってくる、見知らぬ未来のイベントだ。


「色々……まだやっていないイベントあるもんな」

「うん、体育祭に文化祭にお地蔵祭りにむしむしフェスティバルに色々あるよね!」


 知らないイベントが多かった。


「ま……知らなくてもなんとかなるか」


 攻略さえ続いていれば。鹿峰わかなの攻略が失敗しても、桐生すみれの攻略につなげられたように。



「これからも楽しみだね! ほーちゃん!」



 満面の笑みを見せる太郎に、一生墓参りで悔やませないためにも。



 桐生すみれを救ってみせる。




 決行は、明日。

お読みいただきありがとうございました!


まだこちらは続きの書きだめ分がなく少しずつ更新となりますが、以前書いた完結済みの長編をお茶請けがわりに更新させていただきます。


もしよろしければそちらも読んでいただけると幸いです。

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