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mission64 バッドエンドを回避せよ!


 そんなこんなでゴールデンウィーク明けの月曜日。嫌な予感はするが、桐生すみれは今日も休みだ。バッドエンド回避を目標にしたもののどうするか……。


「お呼びかなっ!」

「鹿峰、驚くほどお呼びじゃないんだ」


 鹿峰わかな。攻略本の記載が間違っていたために幼少期のイベントを発生させられず、非攻略が決定したキャラクター。同じくフラグが折れているクイズ少女の中安ちゆりと同じく、関わる理由はあまりないんだが。


「もー! 最近冷たいよ! この前も手紙入れたのにいつのまにか帰ってきてるし、手品?」

「手品じゃないんだが……あの手紙は何の用だったんだよ」

「ん? 桐生さんの誕生日パーティーのお知らせだったよ」



 桐生の、誕生日イベント?



「ほら、ゴールデンウィーク前の土曜日。桐生さんの誕生日だったでしょ。だから、不肖私が誕生日パーティーを計画して、クラスのみんなを呼んだんだよ! すごくない? 偉くない?」


 そういえば、あの土曜日は笹川と宮藤と箱森のイベントをこなしてから桐生のお泊まりイベントがあって……そこから、バッドエンドが始まったんだ。思い返してみれば、鹿森を避けても中安と出会いそうになっていた。あれは誕生日イベントを知るのに必須だったのか……。


「確かマナティとみけちゃんが声かけようとしたけど、用事があるって言ってたって……」


 その間に、俺と太郎が行ったのは箱森イベントだ。箱森は別のクラスだから桐生の誕生日イベントには関与しない。クッソ……他キャラとの絡みで桐生の誕生日イベントがあるなんて分かるわけないだろうが。



『もしかしたら、今日はお会いできないんじゃないかと思っていましたから……』



 お泊まりイベントの冒頭。そんなふうに語っていたのは、誕生日パーティーにいなかったからか。


「鹿峰」

「ん? なになに。ジュース奢ってくれるの?」

「今後、俺や太郎に大事な話があるときは、話の前に必ず『重大ニュース!』って言うようにしてくれ。あと、ジュースは奢らん」

「重大ニュース! ショック!」

「その調子だ」


 ジュースが奢られなかったことごときで使ってほしくはないが、とりあえずの保険にはなるかもしれない。問題は鹿峰の場合、三歩歩いたら忘れてしまいそうな危うさがあるところだが……。


「鹿峰、誕生日パーティーでの桐生の様子はどうだった?」

「ん? 喜んでくれてたよー! サプライズのつもりだったんだけど、うっかりみんなと同じパーティーの準備のお知らせも送っちゃっててさ! 準備段階から手伝ってもらったんだよー!」


 うっかりがすぎる。


「あとあとっ! プレゼントも渡したんだっ! お嬢様だと何送って良いか分かんなくて悩みに悩んだんだけどさっ!」

「何送ったんだよ」

「亀」

「は?」


 鹿峰のことだからどうせろくなもん渡してないだろうとは思ったが、亀とな?


「ほら、お金持ちって何でもお金で買えるじゃん」

「その認識はその認識でどうかと思うが……」

「だからさ、私もないなりに頭を使って考えてみたんだ……お金では買えないもの……愛、時間、不老不死、あ! ってね」


 鹿峰は鼻を鳴らして得意げに言うが、脈絡が分かるようで分からん。つまりは不老不死から鶴は千年亀は万年でも連想して、亀を送ったっていうことか? ついでに、ペットを買うことでの愛情形成かなんとかでも思ったのかもしれない。



 鹿峰の思考回路なんて考えるだけ無駄なような気もするが。



「今、ミシシッピアカミミガメっていうのを空輸してるから、まだ引換券なんだけどね」

「ミドリガメじゃねぇか」


 空輸せんでもそのへんで放されて問題になってるだろ。


「ま、そんな感じで楽しいパーティーだったよ! またやりたいなぁ」

「桐生は楽しかったのかこれ……」


 準備から手伝わされて多少なりとも期待しただろうプレゼントが亀の引換券とは……。企画者が根本的にダメだったせいだからどうにもならないが。


「あ、そろそろ授業始まるねっ! ぐっばーぁい!」


 情報収集できたような要らない情報が増えたような、モヤモヤを増やして鹿峰が去った後、瞬きのうちに昼休みになっていた。いつこんな感じで時間が飛ばされるか分からないから、できるうちにできることをしておかないと……。



「古井戸くん」



 そう思って廊下を歩いていたところ、聞き覚えのある声が後方でした。振り向こうとしたところでそのまま抱きつかれる。……抱きつかれた?


「お困りごとかな。だったら……力になれると思うよ」


 混乱している俺に、彼女はさらに追い打ちをかけるように言った。



「私も、同じ転移者だから」



 ねぇ、と耳元で古井戸ほまれではない、俺の本名を囁かれる。背筋が凍ったような気がして、慌てて彼女を振り解いた。




「あなたのことが好きだから……力になりたいの」




 胸に手を当てて、このクラスの委員長であり攻略対象外のキャラクターである彼女は、




 艶かしく、笑った。




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