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mission6 エチケットを順守せよ!


 トイレまで走ってきた俺は水を流し急いで先程のポーズを取り叫ぶ。


「ポーズっ!」


 水の流れが止まったことを確認して再び外へ。ちょっとうんこ! という魔法の言葉で置き去りにした太郎の元へ戻り、両手を双眼鏡のようにして目に当てさらに叫ぶ。


「ステータスっ!」


 目の奥にちりっとした痛みが走り、よくあるゲームのウィンドウが起動した。そこには、太郎の名前、血液型、誕生日等が書かれている。


「おおっ! 見えた! 見えたぞっ!」

『そんな初めて袋とじを開けた中学生みたいな反応をするなぷん』

「中学生はそんな袋とじ開けちゃいけないけどな!」


 年齢的に。それはさておきステータスだ。アカライトカンパニー特製のシステムで主人公の初期パラメータは完全ランダムで決定される。ゲームならリセマラして良いステータスを選ぶことができるが……。



『お前は人生で嫌なことがあったらすぐリセットできるぷん?』



 カッスごときに至極真っ当なことを言われてしまった。とまあ、それはさておき基本情報が表示されていた。パラメータを見るにはどうしたらいいんだ?


「カッス、パラメータを見るにはどうしたらいい?」

『まばたきすると次のページにいくぷん』


 言われたとおり両眼を閉じ、開ける。


「おっ! 出たぞ!」


 その拍子にまばたきをしてしまった。全2ページだったのか最初に戻った。誰だまばたきシステム考えた奴。もう一度まばたきをして、今度は目を閉じないように無駄な労力を使うことにする。


「パラメータは……あー、ん? あー……うん」




 微妙。




 その一言に尽きた。




 通常ならリセマラ対象。五段階評価なら2。下から二番目程度の数値が並んでいた。頑張ればなんとかなるかもしれんが……魅力の値なんてゼロに近い。あの前髪で魅力ある方がおかしいが……うん。


『あと1ぷん』

「正しいんだけどお前はそれでいいのかよ』


 キャラ的に口癖大事なんじゃないのか? まあどうでもいいことなので、トイレに戻って例のポーズで待機する。


『お似合いのポーズぷん』

「黙れ。流されたいか」


 そうして時が動き出す。しかし、整理が必要だ。考えてみればトイレはうってつけの場所だ。座って頭の中を整理する。


 このゲームは複数ヒロインがいるが、体力が高くないと攻略ができない、というように好みのタイプに合わせる必要があったはずだ。基本的には各ヒロインのそれを目指して必要パラメータを上げていけばいいのだが……。


 魅力。


 ややこしいことにこれが容姿扱いとなっていて、魅力が低すぎるとデートイベントが発生しても待ち合わせ時に、



『格好悪い人とは一緒に歩けない』



というゴミみたいな理由でデートなしに帰ってしまう設定がある。そう思うなら最初からデートの約束なんかするなよ。見りゃ分かるだろ。


「カッス、魅力を上げるにはどうしたもんだ?」

『お前がいつもやっている方法を試してみてはどうぷん?』

「精神攻撃をするな」


 魅力高くて彼女いたらこんなゲームのことなんかとっくに忘れてるわ。魅力の上げ方なんか知るか。


『なーんちゃって! 我はチュートリアルを担っているので、明日説明するぷん』

「お前も使うのかよ」


 なーんちゃってなんて言う奴久しぶりに見たとか言ってなかったか? こっちがどひゃーだわ。

 それはともかく、確かにこのゲームは初日にここへやってきて次の日からパラメータを上げつつイベントをこなしていくんだった。それを考えると、明日まで待つしかないのか。



「ほーちゃん大丈夫ー?」



 安息の地が太郎のノックにより奪われた。あまり長居しても怪しまれるし、そろそろ出るか。水を流してドアを開ける。


「ごめんごめん、ふーっ。すっきりしたよ」


 わざとらしい演技だが、小学生一年生ならこの程度で騙せるだろう。


「……待って、ほーちゃん」


 太郎は俺をじっと見つめてくる。



「うんちをしていたはずなのに臭いが全くしないよ」



 気持ち悪いわ! 何? この世界の人間は友達がトイレから出てきたら匂い嗅ぐ習性があるの!?


「それにさっき呼びかけたらすぐに水を流す音は聞こえたけど、トイレットペーパーを巻き取る音は聞こえなかった。手を洗う水の音も。

 ……これって不自然だよね?」


 小さな探偵さん!? よく観察してたなお前! 本当気持ち悪いわ!


「うんちならばおしっこと違って必ずお尻を拭く必要があるし、おしっこならともかくうんちの時は大抵手を洗うはず……」


 え、こいつおしっこの時手を洗わないの……? おしっこならともかくって言ったよな、今。



「ほーちゃん、何か隠し事してる?」



 そこに辿り着くのか。


 そういえば学力は割と高かったな。それがこんなところで活かされるとは……完全に活用方法を間違えているとしか言いようがない。勉強しろ。

 まあ、小学生にしては良い目の付け所かもしれないが、相手が悪い。こちとら、こんな修羅場なんかいくつも潜り抜けてきた社会人だ。



「よく気付いたなドラゴン。確かに俺はうんこをしていない」



 ドラゴンとうんこという言葉が並ぶことによって途中から格好良さが失われている気がするが気にしてはいけない。


「じゃあ、ほーちゃんはやっぱり隠し事を……!」

「ああ、している」


 はっと息を飲む太郎。かかったな。


「ドラゴン、お前にだけ教えるよ」


 これが、とどめの一言だ。



「さっきしていたポーズの完成度が低くて、すぐに練習したくなったんだ」



 内緒にしてくれよ、と付け加える。論理的な解決方法だった。


「あ……うん。内緒にしとく」


 これだけ引いているなら誰かに言う心配はないだろう。人としての尊厳は失った気はするが、太郎の好感度は下げておくに越したことはない。うわぁ……という目で見られるのは精神が削られるが、仕方のないことだ。



『ぷぷーっ! 言い訳が超超超へたっぴぷん!』

「おや、こんなところに虫が」

『ぐぇっ!』



 捕まえた? と聞いてくる太郎には気のせいだったと答えておく。この方法なら人前でもカッスをはたけそうだ。よかったよかった。


「ああ、そうだ。ドラゴン」

「なぁに? ほーちゃん」





 本格的に魅力を上げるのは明日からになりそうではあるが。






「おしっこの後でも手は洗えよ」






 エチケットは、教えておくことにした。





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