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mission62 ゴールデンウィーク


 紆余曲折あった出し物が軌道に乗り始めた月曜日が終わり、五月二日の火曜日。これが終われば五連休という学生や土日祝日休みの社会人にとっては嬉しいところであるが、ゲームだとデートの約束でもない限り流れゆくだけのありがたみのないゴールデンウィークを迎える。


 昨日は桐生ともそこそこ良い感じだったが、個別ルートのイベントの兆しも何かほしいところだ。今日でそれが少しでも見えればいいが。



「休み?」



 雑学の上がった太郎がクイズにそこそこ正解した後、出題者であるクイズ少女、中安ちゆりはあっさりとそう言い放った。


「うん。桐生さんなら休みだよ。先生が言ってたもの」


 クイズの正答数が多かったせいか、中安は以前の人間未満を扱うかのような対応が嘘のような対応を見せる。そんな雑学大事か。


「変なもの食べてお腹壊したのかなー」

「桐生に限ってそれはないだろ……」


 となれば、あの件が影響しているに違いない。看病イベントということか。太郎に振り向き伝える。


「よし、ドラゴン。今日の放課後は桐生の家に」

「放課後?」


 太郎は部屋で首を傾げる。




「もう、夜だよ」




 太郎の方を振り向いたと思ったら、太郎の部屋に戻ってきていた。古井戸ほまれの自宅の、以前は古井戸ほまれの部屋だった今は太郎が生活している部屋に。


「なっ……」


 学校じゃない。家に帰ってきている。外は真っ暗。太郎もほこほこと顔を赤らめ風呂上がりの様相だ。見舞いに行ける時間はとうに過ぎている。

 朝、桐生が休みだったという話を聞いて、それだけで、そのまま夜になったのか?


「明日はなにして遊ぼうかー。ゴールデンウィークもそろそろ終わりだもんね」

「ちょ……待て、ドラゴン。今なんて」


 言われた太郎はきょとんと首を傾げる。



「ゴールデンウィークもそろそろ終わりって」



 違う、今は五月二日の夜ですらない。


「ドラゴン……今は、五月何日だ?」


 頭の整理が追いつかないまま、噛み締めるように太郎に聞く。



「今日? 五月六日だよ。明日でゴールデンウィークは終わり」



 五月六日。土曜日。明日の日曜日でゴールデンウィークは終わり。ゴールデンウィークは何のイベントもないまま、桐生の看病にも行かないまま終わってしまったのか……。


「ほーちゃん、ゴールデンウィークまだまだ続くと思ってたの?」


 可愛いところあるんだから、と悪戯っぽく笑うのは桐生すみれにでもやってほしいところだが。


「そう、だな。もっと休めるもんかと思ってたよ」

「あはは、休みの間楽しかったもんねー」


 ゴールデンウィークはというと、当然桐生の看病には行っておらず、俺と太郎の二人で四日間も連休をただただ過ごしたらしかった。桐生の看病ができなかったとしても、せっかくのデートのチャンスになんて勿体無いことを……。


「明日、明日こそ桐生の看病に行こう」

「うん。桐生さん元気になったかなー?」


 のんびりしている太郎を置いて部屋から出る。授業が飛ぶことや時間が飛ぶことは今までもあったが、さすがに飛びすぎだろう。自分の部屋に戻りカッスから攻略本をもらう。


 掲載されている二枚の一枚絵。ひとつは夜に震えている桐生を助ける画像、もうひとつはペンダントを片手に遠くを見ている桐生の画像。場面場面で分かりやすくこれがイベントスチルです! という音でも鳴ればいいが、そういったものは特にないので想像することしかできないな……。


 今までの桐生との絡みから察すると、一枚目の画像はこの前のお化け退治の時のものか。背景は桐生の家だし、きちんとイベントスチル判定が出ていたかは知らないが、震えている桐生は見たので問題ないだろう。


 となると、もう一枚を見る必要があるが……ペンダントについても探りを入れておかないとな。


『もう三時になるぷん。明かりが眩しくて質の良い睡眠が確保できないぷん。いい加減寝るぷん』

「攻略を手伝ってくれるサポートキャラはどこにいるんだろうな」

『隣を見るぷん』


 隣を見ると、眠りにつこうとしているブタちゃんがいた。サポートキャラは確か青い鳥ほど見つけにくいものではないはずなんだが。


『おやすぷんー』

「へいへい、おやすみ」


 その日。



 土曜日の夜。夢を見た。



 ペンダントを片手に遠くを見ている桐生。ああ、これは遠くじゃなくて月を見ていたのか。月、夜、灯かり、線路。これは、駅のホームか。こんなところで何しているんだ?


 やけに顔色が悪い桐生は、重そうなスーツケースを持って、バランスを崩して、そして。



 電車の警笛が鳴り響いて、甲高いブレーキ音の中に、何かを、轢き潰すような音が。




「………………っ!」




 起きてすぐにトイレへ駆け込む。喉まで迫り上がってきた胃液を躊躇いなく吐いた。何度も。何度も繰り返して。



『だ、大丈夫ぷん? 変なものでも食べたぷん?』



 吐けるだけ吐いて、洗面台まで這うように移動して口をゆすいだ。



「カッス」



 落ち着いたところで、ぐったりしながらカッスに問いかける。


「土曜日の夜は、今向かっているエンディングのルートが夢で見られるんだったな」


 いつだかカッスがそんなことを言っていた。だからこそ、毎週土曜日は太郎とのラブラブ生活を見なければならず、気落ちしていたんだが。


 今日の夢は、明らかにそれじゃなかった。あれは、つまり。桐生が……。



『そ、そうぷん。いつから太郎じゃない夢を見るようになったぷん?』



 今日から……いや、違う。先週だ。


 先週、桐生の家に泊まったのは土曜日。話を聞いて、桐生が泣いている夢を見た。クソっ……なんで気付かなかったんだ。あの時から、俺は。



『桐生すみれが泣いていて、ホームで電車と接触するのは、間違いないぷん』



 俺の話を聞いて、カッスは重たい口を開いた。




『桐生すみれの、バッドエンドぷん』




 どこでミスをしたのか分からないまま。





 桐生すみれのバッドエンドルートに入っていた。


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