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mission60 今後の攻略方針を決定せよ!


 笹川ささらと謎の儀式をしたり、宮藤まなみと老人ホームを訪問したり、箱森ひよりに殺意が芽生えたり、桐生すみれのお化けイベントがあったりと忙しかった土曜日が終わり、家に帰ってきての日曜日。


「平和だ……」


 何のイベントもない。何にも拘束されることのない四月末日の日曜日。明日からは五月。四月にアホのカッスのせいで無駄にしてしまったフラグをきちんとこなせているかの確認ができるようになるタイミングも控えている。


『なんだか余裕ぷんね』

「ああ、桐生シナリオには驚いたけど、今のところ問題なく進めてはいるだろうし……早くシナリオが進められるといいんだが」


 ゲームキャラとはいえ、あの痛々しい傷とそれほどのストレスを抱えている桐生の身を案じないわけがない。早く楽にしてやれるといいんだが。


「フラグ確認タイミングをいつにするかも考えないとな。順調に進んでる今確認するよりは中旬か月末に確認した方がいいか……」

『月に一度しか使えないから大事にするぷんよ』

「今月初めの記憶がねぇのかこのバカッス」

『むきーっ! また我を馬鹿にするぷん!』


 カッスはどうでもいいので放っておくとして、一応太郎のステータスを久々に確認しておくか。下がることはまあないだろうから心配いらないはずだが、ミスやらバグやら多いゲームだ。念には念を入れておこう。


「ポーズっ!」


 例のアホ極まりないポーズをしてからドアを開けて急いで太郎の部屋へ。


「うっわ! なんでちんちん出してんだよコイツは!」


 なぜか下半身裸で仁王立ちしている太郎の姿がそこにあった。自分の部屋とはいえ居候している家で何やってんだよ。限りなく雑念が呼び起こされてイライラすることこの上ないが、時間も限られているので元の目的を果たすことにする。


「ステータスっ!」


 久しぶりにやると感覚が掴みにくいが……瞬きで次のページへ移動するんだったな。よしよし、学力、体力、魅力は70を超えて良い感じに高い。桐生の好みも学力・体力・魅力が50以上だから何の問題もないはずだ。優しさは15。ゴミだな。攻略には関係ないが人としてもう少しあげた方が良い気がする。


「ん?」

『どうしたぷん? おならでも出るぷん?』

「お前と一緒にするな」


 例によって例によるが、時間の都合上また元に戻る。このシステム本当なんとかならないのか。


「いや、結構伸びてたんだよな。雑学が」

『確かに、45まで上がってたぷんね。短期間でなかなかの伸びぷん』


 中安のクイズイベントに辟易して、雑学をつけようというような話を太郎とした気はするが、それがこの伸びにつながったわけか。


「このゲームは案外ぽんぽんステータスが上がるのか?」

『そんなわけないぷん』


 あっさりと切り捨てられた。


『そんなわけないぷん』

「2回も言わんでいい」

『ぷぷん。このゲームはリアル性も追求している部分もあるぷん』


 カッスは得意げに鼻を鳴らして言った。なんでお前が得意げなんだよ。


「で、リアル性って?」

『ダイエットしても最初はわりと体重が落ちやすいぷんが停滞期に入って心が病むぷん。それと一緒ぷん』

「リアルの嫌な部分を真似るな」


 つまり、ある程度上がると伸びが悪くなるわけか。本当にクソなシステムしかないな。前例のないシステムは需要がないからないということを身にしみて理解してほしい。


『裏技アイテムでもあれば上がりやすくなるらしいぷんが……』

「でかしたサポートキャラ! 俺はお前を信じてたぞ!」

『なんと御神器と呼ばれる三つの超希少アイテムを集めて隠しキャラに渡すと交換できる超超超希少アイテムで』

「悪いな。さっきの言葉は嘘だ。全面的に取り消して謝罪する」


 解散。んなもん集まるわけがないだろ。


『むきーっ! 信じてたってのも嘘ぷんっ!?』

「あー、早く帰りたいなー」

『話を聞くぷん!』


 カッスが騒いでいるとドアがノックされた。


「ほーちゃ」

「ドラゴン! ノックできるようになったんだな! 偉いな! よくエチケットが守れるようになったな!」

『とんでもないベタ褒めぷん』

「えへへー」


 何かと一般常識にかけている感じがする太郎だ。褒めて伸ばしていきたい。


「ほーちゃん、今からみけと出かけるんだけど、一緒に行こう」

「みけと?」


 どうやら俺の預かり知らぬところで約束をしてきたらしい。ゲームの主人公は太郎なんだからこういうこともままあるが……一体どんな選択肢を選んでそうなったのか。


「ああ、準備するから待っててくれ」

「あと五分後に神社だから早めにお願いね」


 神社までここからは十五分はかかる。


「お前はっ……五分前行動を心がけろよ! くっそ、財布さえあれば何とかなるな、よし、出るぞ!」

「ほーちゃんはやーい」

「呑気にしてないで走れ!」


 優しさか? 一般常識は優しさからくるのか? 悲しくなってくるがとりあえず走りに走って十分で神社には着いた。


「二人ともおそー……わっ、尋常じゃない汗っ!」


 今日もこの前と同じワンピース姿のみけは、怒ろうとしたが全力疾走してきた俺たちの気迫に負けて汗を拭いてくれた。優しい。


「ドラゴン……はぁ、これ、が……優しさだ」

「はぁ……はぁ……みけは、優しいんだね」

「もうっ。そんなのいいからお茶飲んでっ!」


 みけが差し出した小さな水筒のお茶を太郎は全て飲み干して元気になった。優しさ。


「あ、ほーちゃんの分がない!」


 気づくの遅ぇよ。


「ぼ、僕の口に少し残ったしずくでよかったら……」


 良いわけないだろ。そのしずくをどうやって俺に飲ませる気だ。


「仕方ないわね……大丈夫? ほら、私の飲み物あげるから」


 みけに気を取られていて気づかなかったがもう一人いたらしい。


「お前もいたのか……」

「な、何よその言い草っ! 可愛いみけちゃん以外いらないってこと!?」

「そうは言ってないだろ」


 今一番関わるのが面倒な女こと箱森ひよりが飲み物を差し出してくれていた。ありがたくいただく。


 が。秒で吐き出した。


「げぼっ、ごほっ! なんだ、これ……土と草と鰯が混ざったような味がして最後に嫌な甘みが残るし、鼻にも臭いがつく……」

「ひ、ひどい……私が作った美味しいジュースなのに」

「これがジュースだと……?」


 そこのへんの草をすりつぶして飲んだ方がまだマシに思える味がした。そういやコイツの好みは変わってたな……おまけに、もしや料理も下手系のキャラか?


「ほーちゃん、それはさすがにひどいよ」

「いや確かにひどい反応したけどさ……そう思うなら飲んでみてくれよ」

「ごくごく……ぶーっ!」


 太郎でもダメならもうダメだろ。この時代の料理下手系キャラは度を越していて命に関わる。今後は気をつけよう。……しかし太郎は本当躊躇いなく飲むな。


「箱森さんこの味はさすがにひどいよ! エイリアンを煮詰めたような味がしたよ!」

「う……確かに、みけのも苦手な味かも」

「え、え、そんなにひどい?」


 素直な太郎と限りなく気を遣ったみけの言葉に箱森はうーんと首を傾げる。まあ人の好みはそれぞれだが……死人を出さないでくれると嬉しい。ゲームによっては料理食べたらバッドエンドとか正気を疑うようなルートもあるしな。


「味覚の合う人を探すしかないか……」


 そこはポジティブなんだな。合う人がこの世界にいるといいが。と、気になったので三人を先に行かせて例のポーズを取る。


「ポーズっ!」


 そして。


「ステータスっ!」


 見てみればみけは変わらず全ステータスが90以上と鬼のようになっている。が、箱森はどうだろう。


 確かなんかのパラメータの関係で攻略上重視はしていなかったはずだが、魅力を重視するのだとしたら、太郎の魅力が上がった今、攻略が可能になっているかもしれない。桐生ルートは問題なく進んでいるが、もし万一の時のための保険も一応考えておかないと……どれどれ、箱森の好みのタイプは。



【魅力95以上、優しさ95以上】



「とんでもねぇな……」


 みけみたいにミスじゃなくこれかよ。



『ぷん。箱森ひよりは一番リアルさを追求したキャラらしいぷん』

「開発者は全世界のリアルな女性から怒られた方がいいな」



 ステータス画面を閉じ、元の場所に戻ってポーズを取る。そうして三人の元へ戻り、箱森に声を掛けた。


 


「青い鳥はどこにもいないのかもしれないな」

「何の話っ!?」




 幸せを呼ぶ青い鳥は近くにいたのでした。


 と、そんな感じで太郎で妥協してくれればいいんだが。




 やはり桐生ルートしかないことを再認識させられて、日曜日が終わる。

 




お読みいただきありがとうございます。

90年代のギャルゲーの歴史をちょこちょこ調べながら書いていますが、懐かしさに読み出すとあっという間に時間が溶けていく……。

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