mission52 ファーストキスを阻止せよ!
前回のあらすじ。
キスを強要される。
「笹川、冗談がすぎるぞ。それに笹川がパミュリャンと儀式したからもういいんじゃ」
「だめ」
強く短く否定された。いつもの……はどうした。
「全員儀式をしないと……ここからは出られないよ」
思い出したようにつけるな。あと目的が変わってきている。魔力が足りないとかで連れてこられただけでこんな儀式やるとは一言も聞いていないし、儀式もここから出るために行うもんじゃなかったろうに。
「ドラゴンからも何か言えよ。ファーストキスってのは神聖なものでこんな流れで失うようなもんじゃ」
「んー、でもなんだかこの儀式神聖そうだよ?」
太郎が特に嫌がっていないのも問題だ。キスをなんだと思ってるんだコイツは。それでもギャルゲーの主人公か。矜持を持て矜持を。
「こんな◯◯しないと出られない部屋みたいな縛りに神聖さも何もあるか」
「でも結婚式でするキスは誓いのキスで神聖なものだし……」
「ここも神社の敷地内だから……神聖」
なんで二人に責め立てられなきゃならないんだよ。せめて太郎は味方につけよ。水を口に含むな黙ってこっちに近づいてくるな壁ドンするなああもう!
「ポーズっ!」
儀式をしないと出られないというのなら、儀式さえしてしまえば出られるということだ。
「カッス!」
『ぷん!?』
そばで助けもせずに浮いていたゴミことカッスを力一杯握り水の中に沈める。
『ぶぎょぼごふぐぁぶぁあっ!』
口に水が入ったことを確認してそのまま太郎の唇に押し付ける。
『べびょっ!?』
カッスはそのまま放り投げてこちらは終了。あとは俺が儀式をするだけだ。まだかなり抵抗はあるが水を掬い少しだけ口に含む。そして、そのまま笹川の前へと急ぐ。
含んだ口は、相手の口へ。
もちろん相手は笹川……ではなく、パミュリャンだ。なんとなく悪い気がして、笹川が口付けた場所からはずらしたので倫理的な問題もないだろう。このメンツなら一番問題がないのがこのパミュリャンだ。笹川にはできないし太郎とはしたくないしカッスは論外。消去法である。
『なにするぷんっ! 鼻に水が入ったぷん!』
「その程度の感想ですむなら良かったよ」
こちらは貞操の危機を迎えていたんだ。とりあえずこれで儀式は終了したし、あとはあのアホみたいなポーズを残り時間していればいいだろう。壁ドンしている太郎のところに戻るのは気分が進まないが、まあ仕方ない。
「ふぅん」
止まっている時間の中で俺以外の声がする。
「面白いこと……できるんだね」
笹川さららの瞳が、ズレたフードから真っ直ぐに射抜くようにこちらを見ている。
「さ、さかわ……お前……」
『何してるぷんっ! 時間だぷん!』
急いで壁と太郎の間に滑り込みポーズを取る。動き出した時間と共に太郎の唇もこちらへ動き出したので、慌てて太郎を押し除ける。
「ドラゴンっ! 儀式はもう終わったからっ、ほら!」
指差した先には出口がきちんとある。太郎も自分が含んでいた水がなくなっていることに気づいたようだ。キスの記憶はなくとも、正しく儀式を終えたような後味からなんとなく達成感は感じられるだろう。
「本当だ、出口ができてる! やった、これで儀式成功だねっ!」
無邪気に喜ぶ太郎の気持ちに、今はなかなか共感できそうにない。
「ああ、これで儀式は終わり……そうだろ、笹川」
視線を向ける先は、パペットに話しかける一人の少女。
笹川さらら。
彼女のようなミステリアス系のキャラクターは、二次創作の場や時に公式な設定の場合であっても、とある設定を保持していることがある。
メタ的存在。
通常感知できないとされているものを感知でき、干渉できないものに干渉する。オカルトだから、黒魔術だから、あのキャラだから仕方ないと。そうプレイヤーに思わせ、納得させる。
「うん。今日は……楽しかったね。赤来戸くん……古井戸くん」
今日の出来事が吉と出るか、凶と出るか。
今日行った儀式が、後々どんな意味を持つのか。
謎と不安を残したまま、午前八時に笹川さららのイベントは終了した。
「そっか……僕、ほーちゃんとキスしちゃったんだ……」
一つの勘違いも、残して。




