mission49 魅力的な出し物を企画せよ!
笹川さららに謎の約束を取り付けられて桐生の家に泊まりに行く約束を取り付けた次の日。老人ホームでの出し物を決めなければいけないので太郎を捕まえてそんな話をしようとしたが。
「ドラゴン、出し物の内容だけど」
「今日は暑いなぁ」
「あの、老人ホームのさ」
「ほら見て、あそこでカマキリが交尾してる」
「ドラ」
「次の数学、宿題やってなかったー」
といった感じで全く話にならない。ここまで頑なに話さないってことは……土曜日にある桐生のイベントまで太郎と話をすることはできないってことか。まあゲームだからそんなものと考えると、仕方がないのかもしれない。
「桐生ルートを問題なく進めているといいんだが…」
攻略本にはイベントスチルとして二枚の画像が掲載されていた。ひとつは夜に震えている桐生を助ける画像、もうひとつはペンダントを片手に遠くを見ている桐生の画像。いずれもまだそれらしい場面は見ていない。
「カッスがアホみたいなことでルート確認の機会を潰しさえしなければこんなことには……」
『文句の多い男は嫌われるぷん』
「俺が嫌いなのはお前だけどな」
『ぷん!?』
やたらとびっくりしているカッスは置いておいて、他のやつとも話をしておくか。笹川も土曜日にイベントが入っているからきっとそれ待ちだろうし、もう一人のメンツといえば……。
「宮藤」
「……なによ」
アイドル活動が忙しい(らしい)宮藤まなみ。そもそもこれに乗り気ではなかったし、頼るのもなんだが相談してみるか。
「老人ホームでやる出し物なんだが、宮藤は何か良い案あるか?」
「丸投げしてんじゃないわよ……全く、しょうがないわね」
言いながらノートを出してきた。開かれたページにはきっちりとした企画書が作られている。ガチじゃねぇか。
「いい、仕事を受けるならきちんとターゲットを分析して、お互いにメリットがあるような、より良いイベントとなるように努力しないといけないのよ。予算は基本的にないからやれることは限られているだろうけど……せめて爪痕の一つでも残せるようにしないと」
「ボランティアで爪痕残そうとする奴は初めて見たな」
「悪い?」
ジロリと睨みつけられた。それには両手を小さく上げて降参ポーズで応える。
「いや、いいと思う。宮藤が仕事にすごく向き合ってるのがよくわかった。この年でここまでちゃんとしてる奴はなかなかいないぞ」
「……た、大したことじゃないわよ」
言いながらシャーペンをぐりぐり動かしていた。せっかくの企画書の一部に黒い穴が誕生したけど良いのかこれ。
ブラックホールはともかく企画書の中身を見てみる。形式は大人のそれに則っているようにも見えるが、まだまだ浅い。対象者は老人ホームのお年寄りとざっくり書かれているし、提案内容も歌、劇、クイズ……ありきたりといえばありきたりな内容だ。
「もっと顧客のことを知る必要があるな」
「顧客のニーズね……でも、老人ホームでできることなんてこれくらいじゃない?」
予算はなく、学生でできることは確かに限られているが……。
「老人ホームをお年寄りがいるところって捉えると案外齟齬があるしな。例えば宮藤、お年寄りの好きな歌ってどんな歌があると思う?」
「演歌……とか、歌謡曲?」
「正解。ただ、お年寄りに好きな人が多いってイメージだけで100%じゃない。そんなイメージを持つなって怒るような人も中にはいるし、逆に好きだけどそればかりで飽きたって人もいるかもしれない」
「確かに……」
こういう受け入れをしている老人ホームだと、案外と他の学校の生徒やボランティア団体の活動と被ってしまうことも多い。出し物が評価されなければ、桐生の好感度にも関わってくる可能性がある。由々しき事態だ。
「となると、何が求められているのかの話を聞けるのが一番良いんだが……先生に相談してみるか」
「それか事前に一度訪問できないかしら。下見というか……ステージの位置も確認したいし」
宮藤の言うとおり、生の声を聞くことができればそれに勝ることはないのかもしれない。
「それもあわせて先生に相談してみるよ。ありがとう宮藤、お前のお陰で大体固まってきたよ」
「まっ……まあ、このくらい、大したことじゃないから」
「いや、言葉の通じない奴が多い中ですごく助かった。味方がいるって嬉しいもんだな」
その言葉に宮藤はまたシャーペンをぐりぐりし出した。
「か、勝手に味方扱いしないでよ。仕事だから仕方なくやってるだけで別に」
ブラックホールの量産体制に入った宮藤は放っておいて大丈夫だとして、先生に先の件の相談に行く。あっさり話が通ったところを考えると、これもイベント達成のための一部だったのかもしれない。
「次の土曜日に老人ホームに訪問してイベント内容考えたら進行しそうだし。順調だな」
ん?
「カッス」
『ぷん?』
「笹川さららと神社に待ち合わせの約束をしたのは?」
『土曜日ぷんね』
「桐生に血の雨が降ってでも行くって言ったお泊まりイベントは?」
『土曜日ぷん』
…………おや?
もしかして、まずった……か?
背中に嫌な汗が流れるのを感じた数秒後、凄い勢いで首根っこを誰かに掴まれた。
「はぁ……はぁっ! つ、次のっ!」
赤が三つ編みのこじらせガールこと箱森ひよりは、息を切らしながら。
「土曜日って、あいてるっ!?」
断ったら死ぬんじゃないかという顔で、事態をさらにややこしくする言葉を贈呈してくれた。
大変に……大変にご無沙汰していて申し訳ありません。
少しずつ更新していきますので、もしもよろしければお付き合いください。
お待たせしすぎてしまって、大変申し訳ないのですが、もしこれまでのあらすじを忘れたけど読んでみようかなと思われた方は直近のこれまでのあらすじを説明せよ! からお読みいただけると話がつながるかと思います。




