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mission48 攻略ルートを邁進せよ!



 笹川さららは可愛い顔して言った。



『私と、付き合ってほしいんだよ……』



 伝家の宝刀である聞こえないフリも掻い潜り、二度も同じことを言った。



 つまり、これは。




 告白である。




 人生で、初めてされた。




「さ、笹川……」

「あっ……いけないね。パミュリャン。ふふ、私ったら……ドジなんだから」




 笹川は、顔を赤らめてパミュリャンと話をしている。いや、待て待て落ち着け。好きなんてみけにも何度か言われたこともあるし、決定打を放たれていないだけだし、そもそもこのゲームの主役は太郎だし、でも直接的な言葉でこんなふうに言われるの初めてだし、攻略の重要キャラじゃないと言っても俺が付き合うわけにはいかないというか長い前髪から覗く瞳がキラキラしてて可愛いなとかとりあえず。



「あの、笹川。俺は」

「間違えちゃった……。私と、じゃなくて。私に、だね」



 は?




「私に……付き合ってくれる、かな。行きたいところ……あるんだ」




 は?




「実は……この魔術書に記された場所に行きたいんだけど……なかなか私一人じゃ、魔力が足りなくて」




 あー、あー。そういうことね。うん。







 死ね! このゲーム作った奴マジで死ね!







 あーあーあー! 分かってた分かってた分かってた! こんなバグだらけのクソゲー作る奴らなんてシナリオもクソですわ! バーカバーか! 分かってたさ分かってたよああもう!



「古井戸くん……どうしたの? 悪い電波……受信しちゃった?」

「ははは、いやなに。ちょっと呪詛をね」



 死ねとまでは言わんが(いやさっき思わず言っちゃったけど)このゲーム作った奴らにそれなりの不幸が訪れれば良いとは思う。仕事で田舎に出張行った時に電車一本乗り逃して焦るくらいの不幸があれば良いのに。



「ふふ……面白いことしてるね」

「まあそれはいいんだ。どこへ付き合うって?」



 笹川はパミュリャンを手に可愛らしく笑う。




「来てのお楽しみ……ふふっ」




 いやだからどこだよ。目的地は謎でもいいけど待ち合わせ場所とか日程はお楽しむわけにはいかないんだよということで、言葉の限りを尽くして今度の土曜日に神社下で待ち合わせとなった。また余計な予定が増えてしまった……。



「本当に今日中になんとかしたんだね……」

「まあ、仕事でも何でも追い込みも大事だしな」

「仕事、ね」



 そうして放課後。委員長にメンバーの名前が書かれた資料を提出した後、老人ホームの場所や出し物の時間などを教えてもらった。夕方に十五分程度であとは話して終了か。お年寄りの方々がいきなり来た中学生とどの程度話したいのかは分からないが……出し物が微妙だとトークタイムが辛そうだ。



「大体、ちょっとした劇とか歌が多いみたい。こんな感じで手話しながら歌ったりとか」

「ああ、なんか見たことあるな。ありがとう委員長。また考えてみるよ」



 ということで、メンバー集めは心に傷を負いながらもなんとかなった。あとは、太郎と桐生をくっつけるだけだ。…………桐生?





『あのときの、あの言葉。まだ、有効ですか?』





 そういえば、その詳細はまだ確認していない。それもなんとかしないと……確か、今度太郎と一緒の時にとかなんとか言ってたな。




「ほーちゃーん」

「ドラゴン。ちょうど良いところに。一緒に桐生探さないか?」

「いいよー。これだけベースケくんに届けたらー」

「ベスボに? なんだこれ」

「全部蛾の卵だよ」

「ひっ!」




 太郎の持っている箱から慌てて身を離す。



「あはは、冗談だよー」

「なんで何にもならない冗談言っちゃうの……?」



 笹川といい、何にもならない冗談で寿命を縮めないでほしい。



「ベースケくんもボランティア活動するんだって。僕たちとは行くところが違うみたいだけど」

「ああ、別の老人ホームか」

「ううん、デイサービス」



 似ているようで微妙に違った。あのへんの区分もややこしいのでなんとかしてほしいものだ。



「ハムレットするらしくて」

「ハムレット!?」



 なんで短い時間で老人相手に大体毒で登場人物がバタバタ死んでいく話をしなきゃならないんだ。復讐とか葛藤とか確かに見所はあって面白いけど十五分でできるとも思えないし、もっと平和な話があるだろう。



「今運んでるのはその毒だよ」

「それはさすがに嘘だって分かるぞ」

「嘘でもないんだよ」



 改めて箱の中を見てみれば大量のそれっぽい瓶があった。なるほど、毒瓶に見えるな。




「なんか裏庭に大量に落ちてたんだ」

「裏庭は大丈夫なのかそれ」




 何があったんだよ裏庭で。



「ベースケくんも頑張ってるし、僕達も負けずに頑張らないとね」

「まあ勝ち負けがあるもんじゃないけど、せっかくだから楽しんでもらえるもんがいいよな」



 そうしてベスボに謎の空瓶を大量に届けて、桐生を探しにいく。と、あれだけ苦労をしていた桐生が教室であっさりと見つかった。都合よく誰もいないし、もしかしたらイベントなのかもしれない。




「桐生。この前の件だけど」

「ええ、覚えていてくださって嬉しいです」




 ごめん、約束についてはマジで覚えていないんだ。



「以前、言っていらっしゃいましたよね」

「…………ああ」



 何言ってたか早く教えてくれ。






「能力を駆使して化け物から君を守るのが赤来戸太郎の使命。って」







 あー……。うん。うん、言ったかなー……。

 ヤッバイ、これ全然覚えてないやつだ。年取るともう本当駄目なんだよ、本当に。



『た、たしかに! 【mission13 ピンチからヒロインを死守せよ!】 でバグ(触手)に襲われている桐生すみれを助けた時に確かに言っていたぷん!』

『わざとらしい解説ありがとなカッス』



 そういやそんな適当なことを言っていた気がせんでもない。しかし、オカルト娘の笹川ならともかく桐生がそんなものを気にするのか?



「実は、私の家に……その、おばけが出るようになったみたいで」



 そんなゴキブリみたいに見かけるものではないとは思うがゲーム世界だ。そんなこともあるのだろう。




「もしよかったら……今度の土曜日、家に泊まりに来ていただけませんか?」




 泊まり。女の子の家に、お泊まり。





 これはもう桐生ルートいけたんじゃないか!?





「もちろん! 血の雨が降っても太郎と一緒に泊まらせてもらうぜ!」

「えっ、なんでそんな食い気味なのほーちゃん!?」






 ようやく、ようやく報われて攻略が軌道に乗ってきた気がする。






 今度の土曜日は、お化け退治だ。







「………………ふふっ」



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