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mission45 桐生すみれの攻略を開始せよ!



「そ、そんな、やめてください! 古井戸さん!」



 委員長との話の後。俺は本気で土下座していた。



「……頼む! 一生に一度のお願いだ」

「こんなことに一生に一度の機会を使わないでください!」



 桐生は案の定戸惑ってはいたが、勝算はあった。前にも何回か頼みごとをしたことはあるが、戸惑いながらも受けてくれていたからだ。つまり、押し切れる公算が高い。




「それに……そうした出し物なら、私よりも適任の方が」

「桐生しかいない」

「ええっ!?」

「桐生以外考えられないんだ」




 太郎は後でいくらでもなんとかなるにしても、桐生だけは先に捕まえておかないと。この機会を逃したらバッドエンドが限りなく近くなる気がする。それだけは、なんとしても避けたい。



「桐生じゃなきゃ駄目なんだよ……」

「どうして、そんなに……」



 ホモエンドを避けるためです、とは言えない。




「これが、今の桐生に必要だと思ったからだ」




 桐生は頭が良い。だからこそ、考え過ぎてしまうきらいがある。俺のこの適当極まりない言葉も、自分の悩みに照らして、何かあると思ってくれるだろう。




「私に……必要」




 目論見通り、桐生は考えて。




「分かりました。お引き受けします」




 真っ直ぐにこちらを見て、承諾してくれた。一々凛としていて、目を背けたくなるほどに眩しい。



「じゃあ、実行委員は私と古井戸さんで?」

「いや、太郎だ」

「え! 赤来戸さんなんですか?」

「嫌なのか?」

「嫌ではないのですが……。流れ的に古井戸さんかと思っていました」



 まあ、誰も太郎と桐生をくっつけるために俺が土下座しているなんて思わないだろうしな。



「俺は副委員長の仕事もあるからな。手伝いがいるようならいつでも言ってくれ」

「分かりました」



 納得したのかふわりと笑う。桐生はこのゲームの中でもやけに可愛く見えるが、単純にメインヒロインというだけじゃなく、まともなキャラだから余計に可愛く見えるのかもしれない。桐生とみけくらいしかまともなキャラがいない気がするが、このゲーム大丈夫なのか?




「呼んだっ?」

「呼んでねぇよ。部活に戻れ」




 何を察してやってきたのか分からない鹿峰を速攻で追い返し、メンバー集めについて考える。俺、太郎、桐生とあと2人もいるのか。出し物についても、太郎と桐生がうまく接近するものを考えないとな。



「この後はどうしたら良いでしょう? 赤来戸さんは帰られたようですし」

「ああ、太郎には俺から話しておくから、今日は大丈夫だ。……いや」



 せっかく捕まえた桐生をここで返す理由もないか。





「一緒に帰らないか?」





 少しでも、情報を得ておきたい。そうして、諸々を後回しにして桐生と帰ることにした。何から切り出して良いものか……。そうだ。



「桐生。俺達小さい頃会ったよな」

「ええ。私の見間違いかもしれないのですが……おばけみたいなものに追われていたところを、古井戸さんに助けていただいて、図書館のところでお話しして。多分、古井戸さんにとってはなんてことないことかもしれませんが、私にとっては大切な思い出です」



 触手はおばけみたいなものと認識されていた。フィクションであるゲーム内でもあの扱いには困るだろう。とりあえず、おばけとしておこう。



「俺も覚えてるよ」

「え……?」

「ちゃんと、覚えてる」



 と言ったものの、幼少期の2週間の序盤にあった出来事なので、言うほど覚えてはいない。なんかバグって桐生が変な方向に行ったところを時空の狭間に追われて、太郎が公園で遊んでたのを迎えに行って……なんか漏らしてたくらいの記憶しかないな。年取ると色々忘れるんだよ。




「古井戸さん」




 風が吹いてきた。春なのにまだ少し冷たい風は、地面に落ちていた桜の花びらを再度舞わせる。






「あのときの、あの言葉。まだ、有効ですか?」






 ん?





 うん、俺に言ってるな。








 俺なんか言ったっけーーーー?









 ちょ、ちょ、ちょぉ、ちょっと待ってよ。うん、落ち着け。何言った? 何があったっけ? また会えるといいなくらいしか言ってないよな。確か。でも、まずいやつだわ。覚えてないとか言ったらなんか旗的なアレが折れそう。まあ、うん。ここは。





「ああ、有効に決まってるだろ」





 すごい適当に良いこと言った気がする。よく見たら桐生は何か思い詰めたような、今までのものを吐き出すかのような、割と重要な話をしそうな顔をしている。

 畜生っ! なんでここに太郎がいないんだよ! 先に帰りやがってばかばかっ!





「……良かった」





 桐生の瞳から一雫涙が溢れたような気がした。なんかそこそこ喜んではもらえたようだが、詳細が気になって仕方ない。



「なあ、桐生。そのことなんだが……」

「あ! すみません。それで思い出しました。今日が本の返却日で」



 俺と太郎と昔出会った図書館に行かなければならなくなったらしい。いや、今!?




「ごめんなさい、閉館まであと少しですし、今から行ってきますね!」

「いや、あの。ちょ」




 返却日はどうでもいいとは言い切れないが、攻略的にはこっちの方が大事なのに思い切り振り切られようとしている。せめて、何か思い出すヒントだけでも。そう思って声をかけようとするが。





「じゃあ、先程の話は赤来戸さんと一緒の時に」





 とても良い笑顔で、桐生は去っていってしまった。




 太郎も一緒? ということは、太郎と合流してから何かあったのか? ちょっと待てよ。なんか太郎が無駄にジュース買ってきた記憶はあるけど……なんだ?






 一歩進んだような、この話をうまくやらないとフラグが折れそうな。







 嫌な予感だけを残して、煽るように風が吹き続けていた。








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[気になる点] これほーちゃんとフラグ立てたやつじゃ……
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