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mission42 攻略対象とハンバーガーを堪能せよ!


 そんなこんなで太郎と桐生と一緒に帰る運びとなった。なんでただ攻略相手と帰ろうとしただけでここまで疲れたのかは知らない。



「でね、そこでカメムシが言うんだよ。それでもお前らは俺の仲間だっ! って。名言なんだよー」

「そういえば、セミやタガメはカメムシ目でカメムシの仲間だと聞いたことがありますね」



 太郎が何の話をしているのかも分からないし、桐生がついていけているのも謎でしかないが、今のところ良い雰囲気だろう。このまま、ハンバーガー屋に寄ってもう少し仲を深めてもらおう。



「じゃあ、クーポンも貰ったことだし寄って帰るか」

「寄り道……はじめてです」



 少し下を向いて照れたように笑う桐生は、確かに寄り道に慣れているようには見えない。設定では財閥だか大会社だかのお嬢様だったか。ハンバーガー屋も初めてだろうし、ナイフとフォークで食べ出してもキャラ的に違和感はないな。



「ほーちゃん、僕お金30円しかないけど」

「予見済みだ。よし、入るか」



 太郎の分は出すとして……この場合、桐生にも奢った方がいいのか? 時代的にはそうなんだが、2人にイチャイチャしてもらうために俺が金を払うのはなんとなく納得し難いものがある。何のプレイだよ。



「ご注文はお決まりですか?」



 店員に言われてメニューを見る。ハンバーガー単品が130円!? この頃って60円くらいの安いイメージあったけど、違ったのか……。ゲーム世界の架空のハンバーガー屋だが、メニューを見るにあのハンバーガー屋をイメージしてそうだし……うぅむ。



「僕このセットにするね。ドリンクはオレンジジュースで! 桐生さんは?」

「わ、私は……晩ご飯もありますし、軽いもので」

「じゃあ、このシェイクにするといいよ! ポテトとかは僕のをつまんだらいいし」



 ハンバーガー屋に初めて来た人間のエスコートとしては完璧な対応を太郎がしていた。いつの間にそんなできる子になったんだ……。さっきまでバッタに翻弄されていた奴には見えない。成長したな。



「じゃあ、俺はこれで。店内で食べます」

「かしこまりました!」



 スマイル0円かは知らないが、良い笑顔でテキパキと仕事をこなし、あっという間に商品を渡してくれた。良い店員だ。複雑な気持ちで金を払った俺の心が少し浄化される。



「いただきまーす!」



 言って、太郎はハンバーガーにかぶりつく。桐生は興味深そうな顔でシェイクを啜っているが……太郎、お前ポテトとかを桐生にあげる話は忘れてるな。



「ドラゴン。ポテトとか分けるんだろ」

「忘れてた! はい、ポテト。ハンバーガーも食べる?」



 口つけたハンバーガーをいきなり女子に渡すな。案の定桐生は気にするタイプだったようで、困り顔で断っていた。恋人同士ならともかく、さすがにハードルは高いだろう。人による部分もあるので、鹿峰だったら案外気にしないのかもしれないが。



「俺のはまだ口つけてないし、一口だけでも食べたらどうだ?」



 初めてハンバーガー屋に来てハンバーガーを食べないのもなんだろう。



「じゃあ……一口だけ」



 包みを開けていないハンバーガーを渡して気付いたが、これって俺と桐生が間接キスすることになるんじゃないだろうか。俺や太郎より小さなその口でパンに口をつけ、整った歯でパティを噛み、ちろりと舌でソースを舐めとる。



 それが行われたハンバーガーが、俺の手元に返ってくる。



 食べない方が変に思われるだろうし、俺はその、桐生が口付けたハンバーガーの同じ部分を食べーーーー。



「ありがとうございます。いただきますね」



 と思っていたら、ハンバーガーが予想より早く返された。ハンバーガーは少し形を変えており、そことぴったり合うようなハンバーガーの一部分が桐生の手に収まっていた。ああ、なるほど。ちぎったのか。女子ってそういうところあるよね、畜生。



「ほーちゃん、僕も食べていい?」

「ああ……いいよ」



 太郎に渡すと、あっさりと桐生のちぎった部分に口をつけ、太郎の唾液が付着した状態でさらに姿を変えたハンバーガーが返ってきた。信じて送り出したハンバーガーが……。いや、食べるけどさ。



「ハンバーガーもポテトも美味しいですね! あ、シェイクも。寄り道、なんだかハマっちゃいそうです」

「良かったー! あれ、ほーちゃんなんだか元気ないね」

「ああ……うん。胸がなんだかいっぱいでな」



 要らぬ期待をしたせいでせっかくのハンバーガーがよく分からない味になってしまった。とりあえず、気を取り直して攻略を……そうだ。



「ごめん、ちょっとトイレ」

「うんち?」

「そういうことは口にしないのがマナーだ」



 あの太郎と桐生を二人きりにするのはそれはそれで不安だが、先にやっておかなければならないことがある。トイレの個室に入り、



「ポーズっ!」



 そして、急いで先まで戻って、



「ステータスっ!」



 桐生のステータスを確認する。基本情報も一応さらっておいて……よし、攻略本からそこまで差異はないな。好きなタイプは……。



 学力・体力・魅力が50以上。



 攻略本から変わりなし。数値もみけとは違い現実的なものだ。今の太郎だと魅力がギリではあるが、すべて上回っている。良かった。雑学と優しさを捨てた甲斐があった。女子にとって雑学はともかく優しさのない男がどう見えるかは知らないし、それ以外の要素が満たされていたら目が瞑れるものかどうかも分からないが。


 急いでトイレに戻りポーズを解く。カッスのアホのせいで来月までフラグがきちんと立っているか確認できないのは難点だが、まあまだ始まったばかりだしその辺りは気にしすぎても仕方ないか。



 さて、太郎と桐生を二人にしておいても碌なことがなさそうなので、速やかに席へ戻ろうとすると。






 トイレを出たところで、後ろから服を引っ張られた。






「ほーちゃん……。なんで、桐生さんと一緒にいるの?」







 春日野みけの。









 登場を想定していなかった幼なじみが、じっとりとした上目遣いでこちらを見ていた。








2024.12.20に修正しました。

もともと「130円!? 今より高いじゃねぇか!」とハンバーガーの値段にツッコミを入れるシーンがあったのですが、値上げで現在はハンバーガー単品170円になってしまいました…。


1995年4月までは上がり調子で一時210円になったこともあったようですが、そこからデフレで方針転換。当時生きていた方には衝撃的だった65円は2000年から二年程度実施されていた価格でした。作中世界は1995年設定のため130円にしています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 太郎が魅せるナイスプレイ。流石ドラゴン。そこに痺れる憧れる! [一言] キャラが多いので人物紹介が欲しいです。こいつ誰だっけって時に便利なので
2020/07/12 14:34 退会済み
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