mission34 攻略キャラと再会せよ!
次の日。入学式に出るために太郎と昨日通った道をまた並んで歩いていた。現代では割と珍しいものになりつつあるが、昔ながらの入学式のイメージらしく、まだ桜は満開だ。
『ぷぷん! ここで大発表ぷん!』
『ここでか?』
なんでこんな太郎も横にいて歩いてる中発表するんだよ。
『昨日言ってた新機能のことぷん』
『あー、あれな』
なおさら、寝る前とか落ち着いてからでいいんじゃないだろうか。
『今回は相手が必要ぷん。ほら、前を見るぷん』
前の方には珍しく目が深淵に閉ざされていないキャラが歩いている。あれは確か……中安ちゆりか? 幼少期では確か笹川かなんかとイベントが被っていたから出会いを諦めたキャラクターだ。
『ステータスを見てみるぷん』
『簡単に言うな』
あのクソみたいなポーズを隠れてできる場所を探してからじゃないとできねぇんだよ。太郎を一旦先に行かせ、物陰に隠れてポーズを取る。
「ポーズっ!」
ちょっと久しぶり感のある言葉を叫んだ後、すぐに中安の元へ戻り、
「ステータスっ!」
お馴染みのステータス画面を見る。瞬きでページをめくれば、好みのタイプで優しさが80以上の文字。高校時代になってからの太郎のパラメータはまだ確認していないが、まあ無理だろう。
『そしてフラグと叫ぶぷん』
「フラグ!」
何も起こらなかった。
『あ、逆立ちしないとダメぷん』
「ここでか!? あとそのシステム考えたの誰だよ!」
『我ぷん』
「こん畜生っ!」
時間もないので、近くにいた太郎を支えにして逆立ちする。逆立ちなんて久しぶりすぎてやり方も良くわからんわ。
「フラッグ!」
『フラッグじゃなくてフラグぷん』
「クッソ、フラグ!」
その言葉と同時に、電脳世界のような光景に切り替わった。ここがゲーム世界だと改めて思い知らされる。……が、視界が逆さまになっているせいで果てしなく見づらい。
『これが、中安ちゆりのルートぷん』
中安の前後に光る道ができていた。前に長く分岐しながら続いている道がこれからのルートで、後ろに真っ直ぐ伸びている道が幼少期ということか。
『中安ちゆりは幼少期出会っていないのでもう攻略できないぷん。その証拠がこれぷん』
中安ちゆりのすぐ前にあるバツマーク。その先で道が分離しているはずなのに、中安はバツマークのせいで進むことはできない。
『これがあると、攻略失敗ということぷん』
つまり、せっかくルートの途中まで行っても、途中で確認してバツマークがついていたら何かのフラグ管理ミスで、そのルートは攻略ができない状態だってことが分かるわけか。こまめに確認した方がいいな。
『ぷん。月に一回しか確認できないから気をつけて使うぷん』
「は?」
ということは、4月分は終わった扱いになるのかこれ。
『ほらほら、早くしないとポーズが切れるぷん』
「言ってることはもっともだけど、俺はもうちょっとこれ怒ってもいいんじゃないかな……?」
怒るタイミングを失ってしまったため、とりあえずポーズしていた場所に戻る。今のところ登場キャラは10人いるが、みけや鹿峰といった攻略不能キャラは置いておいて優先すべきは桐生すみれと綾咲かなえか……。
3月までで確認できるのは残り11回。5月はさすがに桐生に使いたいし、二学期からは綾咲も来るだろうから、とりあえず2人に絞って使うしかないか。
「ほーちゃん、どこ行ってたの?」
「ちょっとこれからの計算にな」
「ふぅん。さては、高校生活に大分賭けてるね」
さてはじゃねぇよ。そして、どっちかっていうと賭けてるのはお前だよ。すでに望み薄な気がして悲しくなってくるが。とりあえず、帰ってからでも太郎のステータスは確認するか。
「あ、着いたよ」
小学校ほど飾りがあったり絵があったりするわけではないが、なんとなく看板に入学式と書かれ、花飾りを付けた新一年生がワイキャイしている姿は華やかに感じる。
「あ、あれ鹿峰さんじゃない?」
「アイツはもういいよ」
攻略対象外だから、これ以上変に話に絡んでこられても困る。そっとフェードアウトしてほしいものだ。
「あっれー! 赤来戸くんじゃん! なんでなんで!」
気づかれてしまった。他のキャラを探したいのに、話が長くなりそうだ。
「高校からここに通うことにしたんだよ」
「へーっ! じゃあ一年生じゃん! やったね!」
別に他の高校でも一年生には変わりないんじゃないのか?
「アタシも実はここに今日から通うんだよ!」
「見りゃ分かる」
「古井戸くんは相変わらずクールだねー! あ、もしかしてアタシが好きでそんな態度を」
「違う」
何このスーパーポジティブ。ちゃんと考えて喋ってないだろ。
「照れちゃってまったく! 同じ穴のドジョウなんだから仲良くしようよ!」
照れてもないしコイツと同じ穴に入ってドジョウになった覚えもない。えっと、同じ穴のムジナって言いたいんだろうが、それだけだと意味が通らないし、二匹目のドジョウは関係あるのか……あ。
「ああ……同じ中学出身ってことか?」
「そうそう! あ、ちょっと……難しかったかな?」
ニヤリと笑われてもな。難しいのはお前への対応だよ。中学時代の記憶なんて俺にはないし。
「あ、友達が呼んでるから行くね! ぐっばーぁい!」
嵐のように去っていった。フェードアウトしてくれるのかな、これ。
「鹿峰さん相変わらずだねー」
「アイツが高校生をきちんとやれるのかの疑問は残ったけどな……」
まあ、高校入学できたんだろうから大丈夫だろう。多分。
受付で花飾りをもらい、クラス分けの貼ってある掲示板へ。当然の如く太郎とは一緒だ。あとは……みけと、げ。鹿峰もいるのか。面倒なことになりそうだ。それから……。
「あ、ごめん」
「いや、こっちこそ……ん?」
たまたまぶつかったその外見は、昔とそう変わっていないはずなのに。
「……久しぶり」
久しぶりでもないはずの声は冷たく。
「宮藤、か?」
今日からクラスメイトとなったアイドルは、曇った瞳をして、そこに立っていた。




