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mission30 息を潜めて行動せよ!



 次の日。



 結局みけとしか出会えず遊んで帰って1日が終わった。





 はずだった。





「行くなってちゃんと言った」





 神々しく輝く満月の光が、もぬけの殻の布団を優しく照らしている。



「俺は行くなってちゃんと言った……」

『人生思う通りにはいかないぷん』



 そりゃそうだけどさ。何も本当に夜の学校に行くこたないだろ。



『いつまでもめそめそしてないで早く追いかけるぷん』

「もれなく時空の狭間がついてくるってお前言ってたじゃないか……」



 多分、イベント用に夜の学校や家の背景はあっても、その途中までの道は描かれていないせいだろうな。それを正しくないと認識されるのは甚だ遺憾だが、あの触手は柔軟に対応してくれないらしい。



「行きたくない行きたくない行きたくない」



 言っていても仕方がない。太郎がいなければ攻略もクソもないからな。




「行くぞカッス」

『骨は拾ってやるぷん』




 最近簡単に殺しすぎだ。ともあれ、そんなことを気にしている余裕はないので、魑魅魍魎が跋扈するであろう外界へと繋がるドアに嫌々手をかける。





◇ ◇ ◇





「ふっざけんなクソがぁ!」




 夜になると増えるのか、やたらと触手の手数が多い。気を抜くとあっさり捕まってしまいそうだ。あっちを見ても触手、こっちを見ても触手という望んでもいない触手ハーレムを突き抜けてただひたすらに学校を目指す。



『そこは右ぷん!』

「右だな!」

『あっ! あー、うん。右からでも行けるぷん』

「間違えてんじゃねぇよっ!」



 触手の数が多いせいでいつもよりさらに早く走らないと対処ができない。一分の油断もできない状況でなんでコイツは間違えるんだよ。



「次っ!」

『次? 次はどこぷん?』

「ここだよもうっ!」



 当てにならないので適当に曲がる。と。




「学校……?」




 やっと着いたのか。これで触手も……ん、変わらず追ってきてる気がするが。



『間違えたぷん! こっちは高校ぷん』

「こん畜生っ!」



 一回止まると走りづらくなるんだよ! 分かれよ!


 心の中でカッスに思い切り毒づき、今度こそ小学校を目指す。途中冷や冷やする場面は幾度となくあったが、なんとか。本当になんとか辿り着くことができた。



『あとは帰りもこれと同じことをやるだけぷん』

「もうやだ……」



 触手と関わりの深い女騎士はいつもこんな気持ちなんだろうか。コイツまたやってるよ、くらいの感覚で読んでいたが、今なら分かる。いっそ殺せとか言いたくなるあの気持ち。


 息が落ち着いたところで入るところを探す。この時代の小学校なら簡単に入ることができると思っていたが、なかなかどうして。きちんと施錠された門に監視カメラまである。もう帰りたい。帰れないけど。



「カッス。監視カメラだけなんとかしてくれるか?」

『ぶち壊せばいいぷん?』



 物騒だな。



「葉っぱか何か持ってレンズを隠してくれるだけでいい」

『分かったぷん』



 まだ青い紅葉の葉っぱを手に取ったカッスを止め、そこのへんにあった謎のでかい葉っぱを渡す。紅葉でよく隠そうと思ったな。


『大丈夫ぷんー』


 本当に大丈夫かは疑わしいが、その言葉を信じて門をよじ登る。帰りもこれをやらなきゃいけないのか……。



『さて行くぷん』

「お前もうちょっと隠しとけよ」



 戻ってくるのが早い。映ってたらどうする。



「理科室がどうのとか言ってたな」

『ぷん。理科室は玄関から入って……左ぷん』



 なるほど。玄関から入って。



「玄関が施錠されているんだが」

『夜だからそりゃそうぷん』



 防犯意識の高いこって。どうしろってんだよ。


「アイツ本当にここにいるの……?」

『いるぷんねぇ。あっちの方から気配がするぶん』


 仕方なく外側からそちらに行き、入れそうな場所を探す。途中、渡り廊下のところで、施錠されていないドアが見つかったので、ようやく中に入れた。


 しかし、静まり返った夜の学校はいつの時代も不気味に映る。



「はやこと終わらせて帰りたいな……」

『ぷん。あっちから何か聞こえるぷん』



 確かに何やら音がするな。太郎か? だが、ここは理科室じゃない。図書室か。



「太郎以外何もいませんように……」



 おそるおそるドアを開ける。中は廊下同様暗く、月明かりが本を照らしていた。特に何もなさそうか。……ん? この本は。確か、箱森の家で。



『わっ!』

「ひっ!」



 突然の声に振り返ればカッスがニタニタ笑っていた。


『ぷぷん! つい脅かしたくなってしまったぷん』

「つい、じゃねぇよこのブタちゃんが! 簀巻きにして川に放り込むぞ!」


 こちらもついカッスを怒鳴ってしまった。




「誰かいるのか?」




 そこに、太郎でも自分でもカッスでもない。謎の人影があるとも知らずに。



「……誰かいるのか?」



 影は懐中電灯をつけたようで、同じ言葉を繰り返しながら、こちらに歩みを進めてくる。見回りの先生か? 見つかったら面倒だ。一先ず隠れた本棚の陰で息を潜める。




 ぶぼっ!




 なんか爆発音みたいなのがした。



『ぷぷん、ついおならが出てしまったぷん』

『おまっ……本当、こんなときに……!』



 あまりの臭さに鼻と口を塞ぐ。クソッ! なんでこんな目に合わなきゃいけないんだよ。目にまで染みてきた。涙が出てくる。



「ん、こっちか?」



 凄まじい臭さにえづいてしまったのに気づかれたか。懐中電灯の灯りがこちらの近くまで来た。ピンチを呼び込んでるんじゃねぇよバカカッス! 




 ぬっ、と覗き込んだ陰は、





「みつけた」





 嬉しそうな声を出し、






 そして。




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