mission2 マスコットキャラと仲良くせよ!
「ぎゃっ……ばっ! はぁぁああああああ!?」
え、何なになに!?
こっち? こっち? こっちなの!?
主人公ならまだ分かる。なんとかできる。
だけどこれはダメ。こっちはダメだろ。
何もしなくても選ばれる可能性あるじゃん、俺の意思関係ないじゃん、十数種類もあるじゃん、ほぼこのエンドじゃん!
「あー、今日休みますって課長に連絡入れないとなー」
現実逃避なのか現実回帰なのか、よく分からない言葉を口に出しても日常には戻れなかった。畜生。
いっそ寝てみれば逆にあちらで目が覚めるのではとも思ったが……結果は時計の針が進んでいるだけだった。どうしろってんだ。
「説明、説明がほしい」
この世界で何かやれば帰れるのか、はたまた……帰れないのか。
いや帰れない説明なんて要らないけど! こういうとき女神様とかなんか説明するやついるだろ、普通出てこいよ出てきてくれよお願いしますだよ!
「うぅ……これだからクソゲーは…………うわ!?」
藁にもすがる気持ちで部屋の本棚を漁っていると、唐突に本棚の下が光った。
飛び出した緑色の光は、ハエのように部屋中を飛び回った後、何かの姿を形作っていく。
『おまたせぷんー!』
黄緑色の体にやたら長い耳。
ウサギを模している割には可愛いとは言いづらくキモカワイイとも言いづらいなんとも微妙な容姿をしたキャラクター。
『我が名はライカッカ・スウェール・ド・ピャリチャードーー』
「カッス! お前カッスじゃないか! クソがっ!」
「ぷんっ!?」
つい、罵倒してしまった。
カッス。水玉ハッピーステップ♪の攻略サポートキャラクター。
あまりに長過ぎる名前に尊大な態度、うさぎなら素直にぴょんにすればいいのにムカつく語尾。
攻略サポートキャラのくせにまるで役に立たない上、喜ぶと目が光るという設定で毎回画面が光ってうっとおしいとプレイヤーのヘイトを集めに集めたキャラクター。
『こんなやつカスでいいだろ』
と誰かが言ったことを発端に最終的にカッスのあだ名で定着した、90年代の腹パン第一位キャラクターだ。
「カッス! カッス! お前リアルで見ても本当可愛くないな! あと出てくるの遅ぇよカッス!」
『失礼すぎるぷん!』
嬉しさのあまりつい罵倒しながら撫でくりまわしてしまったが、カッスは一応何かを知っているらしい。
お待たせとか言ってたし。ああ、ようやく説明が受けられる……。
俺の手を跳ね除けてカッスは軽く咳払いをし、いつの間にか持っていた紙を朗読しだした。
『えー、多分お気づきだと思いますが、これは水玉ハッピーステップ♪ の世界です、だぷん』
「ど下手くそ」
とんでもない棒読みだった。しかも、遅いし。無理に語尾をつけるなよ、紙をよこせと言いたくなるくらいだ。
『驚かれるのも……す、い? いーきょくとうぜん、当然とおぼっ? おもー? 思います』
「紙をよこせ!」
紙には綺麗な字でこう書かれていた。
【こんにちは、神です。
多分お気づきだと思いますが、これは水玉ハッピーステップ♪ の世界です。
驚かれるのも至極当然だと思います。説明が遅くなり大変申し訳ありません】
「お前は……この三行読むのに5分かけたのか…………」
『我は丁寧さ重視ぷん』
「やかましい」
【この世界には多くの望み・願いがあり、それらが多く交わった時に叶えることが私の仕事です。
物語のエンディングにたどり着いてほしい、エンディングが見たい、別の世界に行きたい、他にも小さな願いが積み重なった結果、あなたが今そこにいます】
ん、そんな……なんか願ったっけ…………?
あ。
『仕事のことなんか考えなくていい世界で、楽しく過ごしてみたいもんだ』
「こんなゴミみたいな世界じゃなくてもいいだろ!」
『さっきから何の恨みがあるぷんっ!?』
確かに、カッスからしてみればめちゃくちゃ悪い態度しか取っていないが。
「俺はハーレムとかスローライフとかそんなんが良かったんだよ」
『前に来たプレイヤー達もそんなこと言ってたぷんねぇ』
こんな世界に呼ばれる不幸な人間が何人もいたのかよ。
「じゃあ、前のプレイヤーと同じようにすればクリアできる訳か」
『ぷぷーっ! そんなわけないぷん』
「は?」
なんだこのブタミドリ。
『ぷっぷ! そんなわけないぷん』
「なんでだよ! 本当、説明しろよっ!」
『ぷんっ!? 我は怒られるの苦手ぷん! 褒めて伸ばすぷん!』
「やかましい!」
またはたいてしまった。腹パン第一位は伊達じゃないな……。
『お前も知っていると思うが、このゲームクリアした人間はいないぷん』
「……現実世界とそこは連動してんのかよ」
『ぷん。みんなバグに飲み込まれるかホモになってしまったぷん』
「は?」
バグに、飲み込まれるか……ホモに、なってしまう…………!?
『主人公に転移する人間ばかりだったぷんが、どうも主人公になるとほまれをみんな好きになっちゃうみたいで……現実世界に帰っても気分が抜けないみたいぷんね』
「どういうことだよ!」
そういえば、これの実況やってたナリムーンさんも、最近ゲームの趣向が大分変わってたような…………まさか、まさかな。
『そうした事情なんかがあって、どうすればクリアできるかなーって考えたぷん』
「ああ、どう考えてこうなったんだよ」
『なんか、ぎゃくてんのはっそう、とかすればいいかなって考えたぷん』
「絶対意味分かってなさそうな顔してるくせに……!」
『息をするように罵倒するなぷん! まあ、そうしてお見事! お前は主人公じゃなくほまれになることになったぷん!』
お見事じゃねぇよ。馬鹿にしてんのか。
『このゲームの主人公をエンディングまで導くことが、お前の役割だぷん!』
変なポーズを取るカッスに、はたきたい気持ちを堪えて問いかける。
「ちなみに、現実世界に帰る方法は?」
『エンディングを迎えられたら帰れるぷん。バッドでもなんでもいいぷん』
「軽く言うなよ、もうっ!」
つまり、通常の異世界転生とかならあるアドバンテージも何もなく。
誰も見たことがないエンディングを見つけなきゃいけないのか…………?
『帰れるだけマシだと思うぷん』
「やかましい、いきなりこんな世界に転移させられてから言え」
しかも、俺は主人公じゃないから……主人公に好かれないようにしつつ、そこまで導かなければならないのか。
バッドだと、現実世界でもホモになるし、なんかバグに飲み込まれるとか言われたし……!
『せっかく、仕事のことなんか考えなくていい世界に来たぷん……。お前の望みは叶ったぷん』
「こんな叶い方誰も望んでないんだよ……」
願いを叶えられた感がまるでない。絶望しかない。
『まあ、ゲームの世界だし気楽にやるぷん! ぐぇっ!?』
「お前は、もう、本当さぁ!」
説明を受けても、絶望度合いは変わることなく。
行き場のない気持ちは、カッスをはたくことでしか発散できなかった。
お読みいただきありがとうございました!
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ちなみに、センチメンタルグラフティ大好きです。ヒッチハイクで長崎から東京まで帰るのも楽しい……楽しい。ジャーニーもロード時間長いけど好き。
2026.7.29
昔の文章で気になったところが多かったので、読みやすくを意識して修正しました。
内容については変わっていませんので、修正前を知らなくても大丈夫です!




