mission25 適切な選択肢を模索せよ!
「俺は、みけの方が可愛いと思う」
箱森のフォローは急務だ。矢継ぎ早に言葉を繰り出す。
「確かに箱森も可愛い。甲乙つけ難いところではあると思う。ただ、一点だけ箱森に欠けているところがあるとすれば」
頼むぞ。これでなんとかこの場は収まってくれ。次の手は思いついてはいるが、あまり当てにならないんだ。
「可愛い可愛いと自分で言い過ぎているところだ」
なるほどね、としたり顔で聞く太郎。お前はどんなポジションなんだよ。
「世界一おいしいお菓子! と宣伝されているお菓子を食べても、これなら別のお菓子の方が、と思う人間も多いだろう。それは、世界一おいしい、と言われていることで、反発したくなる人もいるだろうし、期待値が上がり過ぎてそこまでではない、と思ってしまう人もいるからだ。すなわち」
二択から一般論にすり替える。
「期待値を上げていないみけの方がいくら可愛くても期待値が上がり過ぎている箱森より可愛いといえるんじゃないか?」
まあ、俺がいる世界では可愛い可愛い自分で言ってるキャラが人気になることもあるので、一概には言えないが。
「うわーん!」
と話したところで、箱森は泣いて逃げ出した。なんでだよ。
「箱森さん僕の言葉がショックだったみたいで、ほーちゃんの話はあんまり頭に入ってないみたいだったからなぁ」
「話し損かよ!」
「みけもほーちゃんに可愛いって言われてからはあの調子だし」
照れて独り言を言いながらくねくねしていた。当然俺の話なんか聞いちゃいない。
「聞いてくれてたのはドラゴンだけか……」
「ううん」
ううん、じゃねぇよ。
「なんかあのへんにちっちゃい虫がいっぱいいるからそれ数えちゃってた。えへっ!」
俺の話は虫以下かよ。
「376匹いたよ」
「意外といるな」
そしてよく数えたな。掃除してないのかこのプールは。
「じゃない。ドラゴン、箱森を追いかけてフォローしてやれ。泣いている女は落ちやすいぞ!」
「分かった!」
本当に分かったかは不安なので、少しして追いかけることにする。みけは……当分帰ってこなさそうだし放っておこう。
「あれ? 古井戸くんじゃーん」
振り向くとそこには鹿峰がいた。キャラ的に競泳水着だと思っていたが、まさかの市販の水着。学校指定の水着が多い中、浮いている感はあるものの、文句を言う奴はいないだろう。
すごく似合っているのだ。
白がベースになっているが、ハイビスカスが歌っているかのように楽しげに刻まれていて、小学生には珍しいビキニタイプ。つまり、健康的なおへそまで見せてしまっている。体の真ん中、少しへこんだそこに降り注ぐ日差しもまた鹿峰の魅力を引きあげている。
おまけにビキニの下部分は片側にリボンが付いており、否が応でもそこに目がいき、その近くの太ももに釘付けにする役目を担っている。健康的でセクシー。小学1年生の可愛さがそれに加わり、鹿峰にしては完璧な出で立ちでのお出ましだった。
「じゃーん! どう? お父さんに買ってもらったんだ!」
「またお前は親に苦労をかけて……」
ただ、これはお父さんの功績を讃えざるをえないか。
「今日は赤来戸くんいないの? 1人? 競争する?」
「しない」
なんでいきなり競争する流れになるんだよ。しかしそうだ。鹿峰の相手をしている場合じゃない。太郎を追わないと。
「えー、1人にしないでよ。一緒に遊ぼう! ほら、スイカもあるよ!」
「ビーチボールじゃねぇか」
よくあるスイカっぽいビニールのボールだった。
「ちぇー。騙されないかぁ」
「よくそれでいけると思ったな」
多分3歳児でも騙されない。
「まあいいや。で、何する?」
「お前と別れて太郎を探す」
「冷たくない!?」
やかましい。攻略対象外になった途端出てきやがって。まだ毎日海まで無駄に往復した傷は癒えていないんだよ。
「ねーねー。ちょっとだけ、ちょっとだけでいいからさ! 1分! 1分でいいから!」
何がコイツをそこまで駆り立てているんだろう。友達いないのか?
「分かった、1分な」
「やったぁ! じゃあ、あっちまで競争しようよ!」
「1分以上かかるものは却下だ」
「え? 時計ないのになんで分かるの?」
この時代の子供は時計がないと時間は測れないんだったかな。まあ、そんなはずはないんだろうけど。
「大体お前今日は1人で来たのか?」
「ううん、友達と! ほら、ボール取りに行ってたの!」
友達待たせて何してんだよ。
「いっけなーい! 忘れてた! 早く戻らなきゃ!」
忙しい奴だ。
「思い出させてくれてありがとう! へへっ、借りができちゃったね」
「安い借りだな」
「あはっ! ぐっばーぁい!」
嵐のように去っていった。謎の貸しはできたが、多分返却はされないだろう。それはともかく、太郎がどこへいったか探さないとな。プール周辺にはいないみたいだし……更衣室の方か?
「きゃっ!」
「あ、ごめん」
まさか更衣室の影になるところに人がいるとは思わなかった。
それがさらに、
「え、あ。な、またアンタなの?」
「なっ……お前っ……!」
旧スクを着た、宮藤まなみだとも。
思わなかった。




