mission24 夏の日差しを満喫せよ!
太郎の魅力は初期状態ではゼロに等しいものだった。それはイケメンじゃないとかそんなレベルではない。
何度も強く言ったのに大丈夫と言い張っておしっこを漏らしたり、手を洗わなかったり鼻水を服で拭いたり。いくらイケメンでも擁護できない残念さ。それが魅力ゼロだ。
しかし、今。太郎の魅力は大分上がった。
うがい手洗いはもちろんのこと、しっかりと歯磨きも行い、ハンカチを持ち歩きお漏らしもしない。髪型を変える余裕が出てきたり、肌ケアをしだしたりと、普通よりちょい上くらいの所作ができるようになったのだ。
結果。
「ほーちゃん、一緒に寝る?」
上目遣いで迫ってくる太郎が。
「絶対! 絶対絶対絶っっ対、寝ない!」
なんか可愛く思える不具合が生じてきた。
「ぐぁぁぁあああ」
寂しげに太郎が寝た後、呻き声のような疲れた声が出てきた。精神汚染が激しい。
『なんか楽しいことになってるぷんね』
「何が楽しいんだよふざけんな」
ショタなら可愛いし女の子みたいなもんだよな、って自分の考えがどんどん変わっていく気持ちがお前に分かるか。
「女の子……俺が好きなのは女の子……」
『なかなか重症ぷんね。ご愁傷様ぷん』
「諦めてんじゃねぇよ」
イベント。そう、何かイベントがほしい。歪まされそうな俺の性癖をキュッと修正してくれるような夏のイベント。
『攻略全然関係ないけど、水着イベントなら明日あるぷん』
「それだ!」
残念ながら俺はロリコンではないので、小学生のスクール水着や競泳水着や旧スクを見てもそんなには興奮しないだろうが、女の子の水着姿はそれだけでありがたい。
「寝るぞカッス!」
『おやすぷん』
明日、明日のそのイベントさえあれば精神が回復するはずだ。まさか、太郎の魅力を上げることでこんなことになってしまうとは……。そのあたりも考えてパラメータを上げなきゃいけないのか。
「んっ……ほーちゃんっ……」
寝返りを打ちながらなんか悩ましげな声を出している可愛い生物がいる。
「ぐぁぁぁぁああああ……」
『はよ寝るぷん』
◇ ◇ ◇
相変わらず午前中は本を読んでいる太郎をそわそわしながら待ち、午後から公民館裏のプールに繰り出した。普段は老人クラブや近所の小学校が共同で使っているようだが、今日は夏休み唯一の子供開放日ということで、小学生以下の子供達でいっぱいだった。ただ……。
「こわい」
「どうかした? ほーちゃん」
モブも太郎よろしく前髪の下に深淵が広がっているので、なんか怖い。背景担当がきちんと顔を描いてさえいてくれれば、こんな思いはしなくてよかったのだが。
「ねぇねぇ! 僕の水着どうかな?」
そういうセリフは女キャラから聞きたい。
「いいんじゃないか?」
「えー? ちゃんと見てよぅ」
太郎はくるくると回ってアピールしているようだが、視界にはあまり入れないようにしておく。というか、男子のスクール水着(半パンタイプ)の姿なんてどうもこうもないだろう。
『少しは相手してやったらどうぷん?』
『やかましい。男の子は乳首に規制とかないんだよなとか考え出して苦しんでる俺の気持ちが分かるか』
『ご愁傷様ぷん』
愁傷の意味も分かってないだろうに連発するな。
「おっまたせーっ!」
そんな太郎と俺のところにみけがやってきた。量産的なスクール水着ではあるものの、元気印のみけには良く似合っている。当然ながら胸はないが、ぴちっとしたスクール水着からするっと伸びる細い手足もまた可憐に感じる。
やや焼けた小麦色の肌と大人しい紺色のコントラストも素晴らしく、改めてスクール水着とは、この時期、この瞬間にしか見られない女の子の魅力を引き上げるためだけに生み出されたかのような着衣だと認識した。
「みけ……ありがとう、ありがとう……」
「どしたのほーちゃんっ!? なんかそんな感動する要素あった?」
回復した。俺が求めていたのは男の子の合法的な乳首じゃない。隠れていてもいい。健康的な夏の女の子だったんだ。渇いた心が一気に潤された気分だ。
「あれ? みけ達も来てたんだ」
「あっ、ぴよちゃんだーっ!」
箱森ひよりは競泳水着だった。こういう役どころは体育会系の鹿峰かと思っていたが、気の強そうな箱森にもよく似合っている。
競泳水着特有のラインが入って引き締まった印象を与えるが、みけよりも肉付きが良い体のせいか水着と太腿の境界線ではみ出すかのように主張しているむちっとした肉は手や足についているそれと代わりないはずなのになぜだか目が離せない
競泳水着とは違い、肩のところが紐状になっているところもわずかながらではあるが露出度を上げていて自然と目が離せなくなる。
「ふふん、そんなに見つめちゃうなんて。むあ、私が可愛いから仕方ないけど」
確かに可愛いので、噛んだことは見逃しておこう。
「でも、箱森さんってそんなに可愛いわけじゃないよね」
空気読めない優しさゼロの奴がなんか言ってる。
「え、あ、ふ?」
「だって、みけも可愛いし箱森さんが特別可愛いわけじゃないと思うんだけど……ほーちゃんどう思う?」
固まって単語すら喋らなくなった箱森をそのままに太郎は俺にキラーパスしてきた。なんなのコイツ。
まあ、言いたいことは分かる。正直桐生すみれのようなマドンナ的存在でもなければ、宮藤まなみのようにアイドルでもない。可愛さの肩書きもなければ、ギャルゲーのヒロインの好みが人それぞれなように、可愛いは可愛いけど一番可愛いと思うかどうかまでは分からないといったことが太郎も言いたいんだろう。
だからこそ言いたいことは分かるが、本人に向けて言っていいセリフでもない。どうしたものか。
「ほーちゃんはみけと箱森さんだったらどっちが可愛いと思う?」
ちょこちょこ追い詰めてくるんじゃねぇよ。みけも答えを明らかに気にし出してるし、玉蟲色の表現で逃げにくくなってきた。
「まあ、そうだな」
じりじりとプールサイドを照り付ける日差しのように3人からの視線も熱い。
「俺はーーーーの方が可愛いと思う」
この選択肢が最善でありますように、祈りながら言葉を選ぶ。
随分久しぶりの更新になってしまい申し訳ありません。
また少しずつUPしていけたらと思います。




