mission17 素顔のアイドルと会話せよ!
宮藤まなみはアイドルだ。
容姿端麗で小さい頃は子役として活躍。アイドルとして売り出された高校時代は、歌や演技もでき、モデルとしても需要がある。その上性格も良く愛らしい。
ビジュアルが良いこともあって、現実世界のこのゲームが発売される前の人気投票でも桐生すみれを抑えて一位になったほどの人気ぶり。間違いなくトップアイドルである。
「宮藤さん……僕と、付き合ってください!」
そんな宮藤がモテるのは世の必然ともいえることで、
「ごめんなさい……。今は、お仕事に集中したいの」
こんなやり取りを見てしまうのも、まあ自然といえば自然なんだろう。
「で、でも、宮藤さん!」
「ごめんね」
宮藤は口でそう言いつつも、告白してきた見知らぬ男子の手を自分の手で包み込み、
「これからも、私を好きでいてくれるかなっ」
満面の笑みを浮かべた。
「い、いいともっ!」
「ふふっ、ありがとう! じゃあね!」
男子がのぼせてしまっている間に8歳とは思えないほど完璧な対応をした宮藤はこちらの方へ来て、
「チョッロ、チョッロ! はーっ、モテるってつらいわー。美少女に生まれたことつらすぎだわー」
すぐ側に俺と太郎がいることにも気付かずにあっさり本音を漏らしていた。
「うわぁ……」
「え、え!? あ、ちょ、これはちが! ア、アンタ達こんなところで何してんのよ!」
今日会えるのが彼女だけらしいので、この辺をうろついていただけだった。攻略本によれば雑学・優しさを重視するらしい彼女に会う意味は非常に薄かったが、まあ何もしないよりマシかと思って来てみたらこんなことになってしまったわけである。
太郎ですら引いていた。
『おい、俺が知ってる宮藤まなみと性格がかなり違うんだが』
朝会得したらしいテレパシーでカッスに話しかけてみる。
『宮藤まなみは一周目と二周目で性格が違うレアなキャラクターぷん。攻略本に書いてあったのは一周目の良い性格の方ぷんね』
二周目の性格を知ると一周目の完璧カワイイ清純派キャラが全て演技に見えるマイナス要素しかなさそうなんだが。スタッフは何考えてこんなことしたんだよ。
まあ、こちらもある意味で良い性格はしているんだが。
『で。なんでいきなり二周目のキャラになってんだよ』
『フラグ管理ミスぷん。本屋での箱森ひよりイベントや他のキャラの会話の関係でうっかり二周目の性格が出てきてしまったぷん』
うっかり出てくるな。みけの必要パラメータもバグかと思えばただのミスだったらしいし、バグだけでなくミスもかなりあるようだった。テストプレイ本当にしたのか? かなり疑わしい。
「仕方ないわね……いいわ。デートしてあげる」
宮藤からは会話をしばらく聞き流したような謎の結論が出てきた。なんでデート?
「一人10秒でいいわね。感謝なさい」
握手会レベルじゃねぇか。
「ほーちゃんどうする?」
「あー……俺はいいや。お前行ってこいよ」
俺がしても仕方ないし。10秒のデートに価値があるとは思えないが、太郎にとっては良い経験になるのかもしれない。
「ええっ!? 僕もやだよ」
押し付けあってしまった。それを見て宮藤はぷるぷる震えている。
「アンタ達、私を誰だと思ってんの!? あのドドスカポンピンパンのハフハーフよ!」
「なんだそれは」
びっくりするほど知らなかった。どんな番組なのか想像もつかないし、ハフハーフが何を意味するのかも分からない。
「僕もその時間はお地蔵100選見てるから」
案外渋いものを見ていた。
「え、嘘。本当に……? ドドスカポンピンパンよドドスカポンピンパン! あの笑ってジャンコロリンのリメイク版の!」
リメイクしすぎだろ。ジャンコロリンが影も形もなくなってる。
「そんな……私を知らない人がいるなんて」
青ざめた顔でよろめかれてしまった。まあ、こっちも既存知識の宮藤まなみからは想像もつかないトンデモ生命体が出てきて驚いたから、お互い様と言いたいところだ。
「それくらい普通にいるでしょ」
珍しく太郎が普通にツッコんでいた。
「大体さっきから失礼すぎるよ。デートなんてこっちは全く頼んでないのに、10秒とか制限までつけて言ってくるし、感謝しろとか言うし」
「あ、あの。だって、それは」
というか、普通に怒っていた。今までも怒るポイントはあっても特に何も気にしてなさそうだったが、今回だけここまで言うのか。不思議だ。
「そういうのを傲慢って言うんだよ。告白してくれた子のこともひどく言ってたし、あんまりじゃあないかな」
「それは……その」
「言い訳する気?」
宮藤は口を噤む。そういや、鹿峰の時も最後らへん結構正論を言ってたし、主人公補正的なもので正義感が強かったりするのだろうか?
「ここまで人の心が分からないゲロ以下の人間は初めて見たよ。吐き気を催す邪悪とはまさにこのことだね」
辛辣。確かに宮藤も酷かったがそこまで言わんでも。さすがにそろそろ止めておくか。
「ドラゴン、そのへんにしとけ。泣いてんじゃねぇか」
宮藤は先程と同じように震えて、大きな瞳いっぱいに涙を溜めていたが、
「……ないてないもんっ!」
プライドのせいか。少しばかりの強がりを見せた。
「いや泣いてるでしょ。この上に嘘までつくなんて、邪神と言っても過言じゃないよ」
「やめたれ」
さすがに過言だった。邪神て。
「お、おぼえておきなさいよ! 今度デートしたいって言ってもしてあげないんだからっ!」
そう言って宮藤は泣きべそをかきながら俺達のいる方とは反対方向へ駆けていき。
「ひゃいん!」
盛大にこけた。
「こけてない! こけてないんだからぁ!」
そうして、姿が見えなくなるまで何か叫んでいた。なんか見ちゃいけないものを見てしまった感が強い。
「ほーちゃんっ! どうだったかな?」
どうも何もない。何言ってんだコイツは。
「これからくるのは、俺様男子ってびゃおに書いてあって。じゃぼんで見た俺様っぽい人の真似してみたんだけど」
なるほど。あれが元凶か。
「さっきの子、メロメロになってくれたかなぁ」
無邪気な言葉への返答に困る。
「メロメロも案外死語なんかな」
「え?」
関係ない話題でお茶を濁して終わった。
守備範囲外なのでよく知らないが、俺様男子でも邪神とか言わないと思う。




