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mission15 適切な雑誌を購入せよ!


 スポーツドリンクを飲んで回復した桐生は図書館の中へ。再度トイレに行きたくなったらしい太郎も図書館の中へ入り、俺一人が残された。


「おい、カッス」

『何ぷん? 今我は日向ぼっこで忙しいぷん』


 暇そうに日を浴びていた。夏だから暑いぞ。


「一日で起こるイベントは基本ひとつなんだよな」

『そうぷんね。午前中にパラメータを上げて午後に街へ出てイベントひとつの流れぷん。確率で起きるイベントやおまけイベントくらいはあるぷんが』


 その2つは攻略本には記されてなかったな。あの攻略本も発売前に出た雑誌の付録だから、この先は君の目で確かめてくれ方式だったし。仕方ない。


「まだ夕方になっていないが、これから本屋に行っても時空の狭間は現れないか?」

『それは問題ないぷんね。あれは目的地に行かないとか、決められたことをしてない時に出てくるぷん。あと、夜になると出るぷん』

「お月様かよ」


 カッスの長ったらしい説明を省略すると、夜の背景を作り込んでいないのが原因らしかった。作られていないところに一歩でも踏み出すと呑まれるらしい。まあ、夜に外出することなんて早々ないだろうから大丈夫か。




……大丈夫か?




 それはともあれ、本屋へ行きたい理由はひとつ。魅力を上げる本を変えるためだ。カッスが買ってきた適当な本で魅力が上がったのなら、別な本でも問題ないだろう。あの本は早く捨てたい。


『我が買ってきた本を無駄にするのは複雑ぷんが、魅力を上げよう! と思って本を読むことが大事だからなんでもいいぷん』

「プラシーボかよ」


 要は気分の問題だった。それっぽい本ならなんでもいいかもしれないが、実害が酷い。



「ほーちゃんー」



 太郎が戻ってきたことだし、そろそろ行くか。



「見てみて! おっきいミミズ!」

「確かにでかいな。捨ててこい」



 真っ直ぐ戻れって言ったじゃねぇか。あとミミズよく触れるな。俺なんて今ダンゴムシ触るのも無理だぞ。小さい頃なんで触れてたのか分からんくらいだ。


「ばいばーい」

「せめて土の上で捨ててやれよ! アスファルトで焼かれてんぞ!」


 太郎にもう一回拾わせて日陰の土の上に再度放させた。とんでもないことするなコイツ。と思ったが、思い当たる節もある。



 優しさがないのだ。



 太郎のパラメータは学力高め、体力そこそこ、微量の雑学に皆無な魅力と優しさ。デートの際、帰られないためになんとか今日魅力を上げ始めたところだが、人としての優しさが欠けたサイコパスになりつつある。


 攻略本によれば、桐生すみれは学力・体力・魅力重視。明日以降会う本命は学力・体力重視。キープで考えている相手も学力・魅力重視だが……さすがに優しさがないのも不味いか。難しいな。



「ほーちゃん、本屋さんってここ?」



 考えている間に本屋へ着いたようだ。元気に先に中に入っていった太郎が心配ではあるが、とりあえず本を探すか。


『ぷん? そこは教養関係の本じゃないぷんよ』

「それは知ってるんだが」


 レジに近い棚にエロ本が置いてあるのを懐かしんでただけだった。ラインナップを見ても分かる通り相当自由な時代だったと思う。やましい気持ちはないが、とりあえず一冊手に取って中を開こうとすると。



「おいおい、坊主にゃまだ早いぜ」



 エプロン姿の非常にいかついおっさんに話しかけられた。スキンヘッド・サングラス・ひげ。接客業ならワン・ツー・フィニッシュだろう。


「子供はこれでも読んでな」


 渡されたのは自由帳だった。どう読めってんだよ。


「別にやましいことは何一つないですよ」

「何?」


 見た目は子供だが中身は大人の俺を舐めてもらっては困る。



「その本は、全年齢向けです」



 俺の言葉に店員らしきおっさんは急いで雑誌を確認する。


「ほ、本当だ! 表紙の雰囲気から確実に18禁だと思えるが、どこにもそのマークがついてねぇっ! この18禁が数多ある雑誌の中からあえてそれを選ぶとは……お前、何者だ?」


 自由帳は……この棚か。そこに返しながら店員にも返答する。



「別に……ただ本を愛する者ですよ」



 つい強キャラ感を出してしまったが、なんということはない。現実世界の名前が少し違うそれを知っていたからだ。本はきちんと並べたい派だから正しい棚へ持っていこうと思っただけだ。8歳が読んでも怒られないギリギリを瞬時に選び取って読もうとしたわけでは決してない。



「ほーちゃん、じゃぼんあったよー」



 なんか有名な少年漫画雑誌と少女漫画雑誌が融合したような名前だ。


「ママレード・ボールが学校ですごい流行っててね」


 一字違うだけで嫌な予感がするな。というか、じゃぼんは探しにきていない。



「店員さん、ちょっと聞きたいことが」

「おとうさーん、ってあれ? お客さん?」



 声と共にレジ奥の引き戸が開いた。見覚えのある真っ赤な髪にツインテールの女の子。攻略本でも紹介されていた、箱森ひより。確か本屋の娘という記載はあったが、こんな簡単に出会えるとは。桐生の時の苦労が嘘みたいだ。


『確率イベントぷん。1024分の1の確率で、この日に出会うことがあるぷん』


 攻略本に【ここで書いてある出会い方以外で出会う子もいるかも…?】とも書いてあったな。出会いが違うだけで、あとのイベントには支障がないわけか。


「いらっしゃいま……っは、はっ、へっく……ふぅん」


 口に手も当てていたのにくしゃみは出なかった。出そうで出ないのって見てる方ももやもやするんだよな。



「好きだっ!」



 太郎は箱森になぜか告白していた。いきなり何してんのコイツ。と思ったが、アレか。



【女の子が口に手を当てていたらそれは告白待ちの合図です】



 チョットドッグプラスのトンデモ記事を本気にしていただけだった。元ネタの雑誌はここまでじゃなかった気がするんだが。それは置いておくとして、箱森だ。


「ふぇっ!? ちょちょちょ……すきって、えぇ?」


 めっちゃ動揺してた。イケるんじゃないかこれ。



「きゅ、急に好きとか言われても、その。困るっていうか」

「僕は困らないっ!」

「えぇっ!?」


 まあ太郎は困らないだろうよ。とりあえずこのまま静観しよう。


「君のその……赤い髪! 消防車みたいでなんかいい感じだし、目もタガメみたいだ!」

「タガメ?」


 睡眠学習してんじゃねぇよ。それは俺がカッスを微妙に褒めた時の言葉だ。



「おいおい、俺の目の前で娘を口説きだすとは良い度胸だな」



 せっかく良い具合にチョロインしてるんだから父親がチョロガードしてくるな。クソッ、何かこの親父を止める方法は……。


「お父さんはちょっと黙ってて」

「あ、はい」


 あっさりチョロガードガードされていた。なんだろうな。自分より年上の人間が年下の人間に説教されている姿を見るのはなんだかいたたまれない。


「あー……あの年代の子供なんてみんなあんな感じだと思いますよ?」

「そうかい……」


 自分もその年代の子供の姿ではあるがそこはどうでもいい。太郎だ。あと少し押したらエンディングイケるんじゃないか! 思わぬ誤算だ。馬鹿にして悪かったよチョットドッグプラス!



「僕と、この夏を駆け抜けてくれ!」



 告白の言葉かどうかは微妙だが、箱森は真剣に考え込んでいる。早く、早く良い感じのエンディング曲が流れてくれ。頼む。




 箱森は、しばし考えた後。




「あー、うん。ごめんね。うん。私が可愛いから告白するのは分かるけど、ズボンにおしっこつけてる人、私タイプじゃないから」




 普通に太郎を振った。



 うん。不自然なシミあるもんな。さっき見た時より心なしか広がってるし。




「そっかー、残念」

「魅力を上げて出直してきなさい」




 的確にアドバイスされた。まあ、ズボンに盛大なシミ作ってれば、いくらイケメンだろうと魅力なしと判断されるだろう。残当というやつだ。



「箱森、女子の気持ちを男子が勉強したい時はどの本がいいのか教えてくれないか? できたら今から勉強して高校くらいで使い物になるくらいの本」

「なんで私の名前……っていうか、具体的すぎて気持ち悪いわね」



 ほっとけ。こっちは幼少期で終われるかと思ってちょっと期待したことを反省してるんだよ。



「んー。女子の気持ちっていったら、やっぱりこれじゃない?」



 ああ、なるほど。盲点だった。その雑誌を買って家路に着く。



「ドラゴン、明日からはそれを読んでしっかり魅力を上げような」

「任せてよ! しっかり読み込んで、理想の王子様になってみせるよ」



 太郎が手にしている雑誌は、この年代の少女のバイブル。びゃおだった。要するに少女漫画雑誌だ。女子の理想が詰まった男が出てくるなら、まあチョットドッグプラスよりはマシだろう。



「明日からはこの本を読んで、女子達をちぎってはなげちぎってはなげしてあげるよ!」

「ちぎって投げるな」



 化物じゃねぇか。どうにも不安しか残らないが、もう日も暮れる。二人のヒロインと出会えただけ僥倖だったというべきだろう。





「ただいまー!」





 先は長い。ただ、今はとりあえず。








 太郎を先に風呂に入れて、汚れたズボンで動くのを防ごう。





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