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mission11 男の魅力を向上させよ!



 次の日。朝ご飯の後、部屋に戻ってカッスの説明が始まった。


『はじめましてぷん! 我の名前はーー』


 ここはゲームと完全に一緒だな。何やら一生懸命太郎に話かけているが、


「…………」


 反応が何もなかった。チュートリアル中に主人公喋らないもんな。仕方ない。


『あっぷっぷん!』

「…………』


 反応がない奴相手に話していて悲しくならないのだろうか。現実世界の会議でもあったな。せめて頷いたりこっちを見たりしてくれれば……いかん、嫌なことを思い出してしまった。


『今のはあっぷっぶに我の口癖のぷんを足したもので……』


 解説の需要はないので早く話を進めてもらいたい。というか今の言葉必要だったか? 話半分に聞いていたからさっぱり分からん。



『では、パラメータを上げる方法について説明するぷん!』



 ようやくか。重要なことだしメモでも取ろう。


『学力を上げるためにはこの本を読むぷん』


 メモらなくても大丈夫そうな説明だった。プレイしている時も学力とか体力とかのアイコンを選択したら上がったはずだし。そんなもんなのか。


『魅力を上げるためにはこの本を読むぷん』


 ……なんか雲行きが怪しい。


『体力を上げるためにはこの本を読むぷん』

「そこはダンベルかなんかでいいだろ」


 思わず口を挟んでしまった。なんで全部本縛りなんだ。カッスは説明のためか俺のツッコミは無視し、そのまま本の紹介を延々として、



『以上ぷん。バイバイぷんー!』

「…………」



 チュートリアルを終えた。バイバイと言いつつ俺の隣に戻ってきただけではあるが。これで太郎はカッスが見えなくなるわけか。しかし本を読めしか言ってなかったな。この綺麗なメモ紙はどうしてくれよう。



『全く……途中のアレは何ぷん! 思わず吹き出してしまうところだったぷん』

「悪かったけど、アレはツッコミたくもなるだろ」

『そっちじゃなくて押し入れの話ぷん。うぷぷんっ! 今思い出しても面白すぎて困ってしまうぷん!』

「押し入れ?」



 カッスは何を言ってるんだ? 俺が全く反応しないことにさすがに疑念を抱いたらしく、カッスは笑うのをやめた。段々顔が曇っていく。


『え? あ、あの……途中押し入れから白い手がいっぱい出てきてたのって、あれ? お前じゃないとしたら、ぷん?』

「急にホラーにするのやめてくれる!?」


 要らない情報だけはしっかりと伝えてくれる奴だった。そして面白くもない。とりあえず押し入れからは距離を取ろう。



「わあ! 本がいっぱいだねー。今日は何をしようかな?」



 沈黙というか硬直というか、その辺から解放された太郎が本棚をキラキラした目で見ている。可愛いな。



 いや、可愛くはない落ち着け俺。



「まあ、本を読む前にまずは夏休みの宿題を……」

「ドラゴン、この二週間は本を読め」

「え?」



 俺の唐突な言葉に太郎は驚く。そりゃそうだ。小学生として正しいのは毎日宿題をやることなんだから。


「帰ってからでもできることは一先ず後だ。まずは本を読むことだけ考えろ」

「で、でも朝顔の観察記録と絵日記は……」


 意外に真面目だった。学力が高めだからか?



「朝顔は今日で枯らそう。絵日記は再来週に思い出して書くんだ。日付と天気はその日の新聞を見れば分かるし、大体暑いって書いときゃ問題ない」

「ほーちゃん……すごい!」



 羨望の目を向けられるシーンではないはずだが。とりあえずこちらに従ってくれるようで何よりだった。さて、今日は魅力用の本でも読ませておくか。


「このチョットドッグプラスって本でみりょくを高めるんだね!」


 なんだその名前は。俺の怪訝な顔に気付くことなく太郎は謎の本を読み始めた。



「カワイイコほどなんでも見せたがる」

「音読するなそんなわけないだろ貸せ!」



 本を太郎から奪い取りパラパラとめくる。



 【あの娘をオトすための勝利の方程式】

 【緊急アンケート! お尻の触り方大研究】

 【しっかりサポート、メイク・ラブ!】



 全く持って碌な文言が並んでいなかった。


「だめだよほーちゃん。今みりょくを上げてるんだから」

「いやいやいや! こんなもんで上がるわけないだろ!」 

「でも、これはみりょくの本だよ」


 信じてもらえなかった。強い調子で言われたので仕方なく本を返してカッスに話しかける。


「カッス。あれで本当に魅力が上がるんだよな」

『ぷん? この時代の女子なんてあれで大抵落ちるぷん』

「多方面に喧嘩を売るな」


 誇大広告甚だしい。どんな年代の女子も勝利の方程式だけでオトせるわけないだろう。


『大丈夫ぷん。人気のある信頼できる雑誌ぷん』

「お尻の触り方を緊急でアンケートしている時点で大分信用力が低下してるんだが」

『え? でも本屋さんで店員のおすすめって……』

「お前が買ってきたのかよ!」


 おすすめる店員も店員だ。無垢な小学生が信じたらどうする。



「女の子が口に手を当てていたらそれは告白待ちの合図です。なるほど!」



 信じていた。いたたまれない。


『だ、大丈夫ぷん! どんな本でも読めばちゃんとパラメータが上がるようになってるぷん! きっと大丈夫ぷん!』


 最後の方で自信なくなってきっととかつけてんじゃねぇよ。不安しかない。


 そのまま太郎は午前中本を読み続け、読み終わったところで、



「ステータスっ!」



 確認してみた。確かに魅力の値が上がっている。


『ほら! ほらほらほらほら! 大丈夫だったぷん!』

「たまたま結果的にそうなっただけでドヤ顔するな」


 さっきまで上がらなかったらどうしようぷんとか騒いでいただけに余計鬱陶しい。



「ほーちゃん、午後は何をするの?」



 無垢な笑顔をこちらに向ける。手をしきりに動かして尻の触り方を練習しているのが気掛かりではあるが。




「そうだな。外へ行こう」




 お待ちかね。








 ヒロイン攻略スタートだ。







大変どうでもいいところで恐縮ですが、カッスのかっこが『』になっていなかったところがあったので修正しました。

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