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mission10 攻略本を読破せよ!



 ポチャポチャお風呂に入ったら、お次はあったかい布団で眠るわけで。


「ほーちゃん、一緒に」

「寝ない」


 さすがに小学一年生でも男同士で一緒に寝ることはないだろう。多分。俺は寝たくないし。


「ほーちゃん……なんだか、変わっちゃったね」

「小学生になったからな」


 本当は中の人が変わっているからなんだが。


「重いよ……小学生っていう肩書は、僕たちには早すぎるよ」


 年齢で言えば適正なんだがな。


「その肩書に見合う男になるために、明日から頑張ろうな」


 適当に合わせて、親指を立てて突きだす。こんなもんで納得してくれるだろう。



「違うよ! そうじゃないでしょ! これだけは譲れないよ!」



 注意して太郎は、



①右手を挙げる

②左斜め下に振り下ろす

③その勢いのまま右へ

④左手も同様に

⑤三回拍手

⑥右手の人差し指を立て、上を指差す

⑦にかっと笑う



「はい」

「なにそれ」



 謎のフリをされた。はい、って言われても。



「グッていう合図の代わりにこうしようって2年前に約束したじゃない」



 全く身に覚えのないことで非難された。2年前のほまれは何してるんだよ。あと、譲れないことなら他にもありそうなもんだろ。

 まあ、文句を言っていても仕方ないので一連の流れをやってやる。えっと、確かこんな感じで……最後笑っとけばなんとかなるだろ。



「情熱が足りない」

「求められるものが重いわ」



 その後、太郎の合格ラインに達するまでそれは続き、いい加減に寝なさいと言うほまれの母親の言葉に救われて、明かりを消して布団の中へ。



『おやすぷん』

「お前は寝るな」



 太郎が寝たことを確認して行動を始める。


「カッス、攻略本。今のうちに読んでおきたい」

『え? でもさっき寝なさいって言われたぷん』


 素直か。そして別にお前は言われてないだろう。とりあえず攻略本を受け取り読もうとするが……暗くて読めない。豆球にでもしておくんだった。えっと、スマホは……。


「あ」


 現代人の悪いところが出てしまった。ついスマホに頼ろうとしてしまう。この世界には当然存在しないのに。まあ、昔はバックライトなんてなかったからゲームボーイも懐中電灯で照らしてやってたっけ。思い出話はさておき。



「カッス、なんか明かりないか?」

『ないぷん』



 サポートキャラのくせにサポートする気がなかった。少しは考えろよ全く。いや待てよ。確か昼間……。


「カッス。お前が光ればいいんじゃないか?」


 無駄にも思えた発光機能が役に立ちそうだった。



『我は嬉しい時でないと光らないぷん』



 面倒くさい。しかし、せっかく近くに明かりの元があるなら使うしかないか。



「お。お前の耳なかなか格好いいな!」

『ぷぷん!』



 めちゃくちゃ光った。



「加減を考えろよアホ! 太郎が起きるだろうが!」

『我は実は褒められ慣れてないぷん! そんなこと言われても困るぷん!』



 あんまり褒められる行動してないもんな。しかし、適度な光だとどの程度褒めれば良いものか。


「お前の指先カニに通ずるものがあってイケてるな」

『ぷん』


 結構光った。カニはまだ格好良すぎたのか。


「あー、お前の目はタガメ的な良さがあるな」

『ぷーん……?』


 微妙に光った。このくらいで褒め続ければ一応は明かりとして機能するか。激しく面倒だったがカッスを利用して攻略本を読みきることができた。全17人プラス隠しキャラの情報も大体確認できたし、良しとしよう。ってかキャラが多いわ。



『もう大丈夫ぷん?』

「ああ。攻略キャラも絞れたし十分だよ。たすか……」



 お礼を言うとカッスが光りそうだったので途中でやめておく。



『そういえば画用紙にも書いてたぷんね。攻略×とか不要とか』

「ああ。求められるパラメータがある以上全員キープはきついし、一人に絞ったらダメだった時即ゲームオーバーだからな。必要パラメータが似通ったキャラを三人程度キープが一番効率もいいだろう」



 画用紙にも書いたがみけは当然攻略不要。あの時は必要パラメータは分かっていなかったが、幾人もがイベントを全く起こせなかったキャラクターだ。それに90以上なんて謎のバグがあるようじゃ、攻略しようがない。


『案外考えてるぷんね』

「お前と違ってみんな色々考えながら生きてるんだよ」

『むきー! 我が何も考えていないみたいぷん!』

「なんか考えてるのか?」


 その言葉にカッスは急に得意げになる。別にこの先聞きたくないんだけどスキップとかできないかな。


『神の遣いとして頑張ったらご褒美が貰える予定ぷん』

「そうか。おやすみ」

『少しは興味持てぷん!』


 スキップ機能がないギャルゲーをプレイしていた時はAボタンをセロハンテープで固定していたこともあったか。カッスの口も何かで固定できればいいんだが。



「俺ももしこのゲームをちゃんと攻略できたらご褒美的なものがあるのか?」

『それはないぷん』

「は?」



 こんなカッスにはあるのに。



『お前のどっか行きたいって願いはすでに叶ってるぷん。強欲ぷん』

「ああ、それ叶えたカウントなんだ」



 激しくクーリングオフしたい。というか、詳細まで確認してから叶えてくれよ神様。



「とりあえず寝るか。明日から本腰入れて攻略しなきゃだもんな」



 明日は朝カッスのチュートリアルがあって、パラメータを上げて午後からあのヒロインに会いに行って。画用紙も適当なタイミングで捨てておかないとな。やることが無駄に多い。




「おやすみカッス。また明日」

『おやすぷん』




 至極当然とばかりに同じ布団で寝ようとするカッスは放り出し目を瞑る。長い一日だった。これで眠って夢でした、で目覚めれば一番いいんだが。




「ほーちゃん」




 呼ばれて目を開けるとそこから10センチ先に太郎がいた。




「顔が近い距離が近いここまで寄ることないだろなんなのもう!」




 思わず飛び退いてしまった。またあのホモモード的な空気にはなりたくない。



「おしっこぉ……」



 目を擦りながら甘えたような声で言われた。ああ、確かに小さい頃トイレに行くのは怖かったけれども。仕方ない。ついていってやろう。




「……漏れたぁ」

「手遅れかよ!」




 深夜にほまれの母親を起こし、太郎の布団はかわかすため取り除かれ、結局一緒にベッドで眠ることになった。





「……って、眠れるかぁっ!」





 こうして、朝まで秒針の音を聞く羽目になって一日目は終わった。







 どうか一刻も早く、帰れますように。






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