久々の全力は規格外のようで
もうすでに三回あるチャンスのうち一回は使ってしまっているので出来る限り残る二回でこの二人を黙らせなければいけないとなるとなかなか骨が折れそうだ。
久々に天叢雲剣を引っ張り出したからか刀が鳴き始めている。
こいつが勝手に暴れだす前に終わらせなければ。
そうでなくとも現実世界がやばいことになっているしな。
「本当ならもっと楽しみながら戦いところなんだけど、そうもいかないからさ。二振りで終わらせるよ!」
「…っ!!」
僕の構えを見て二人は後ずさる。
これから僕が出すのは冬月家に伝わる最速の抜刀術。
終の型・後光
ただの刀でさえその剣筋を認識することが出来ないのに、異常なほどの訓練をしてきた俺が天叢雲剣を使ってこの技を使ってしまうとそれこそ光のみならず時間すら置き去りにして切り伏せる。
「その技は発動させてはいけない…!」
「騎士よ最初の時間は稼ぐ!次の手を考えておけ!」
侍が斬りかかってくる。
しかし、彼らは勘違いをしている。
発動させるのを防ぐのでは意味がない。
発動しようと考えさせている時点でこの技は始まっており終わっている。
この技はその存在すら考えさせてはならない無敵でありまた禁忌の技でもある。
時間すら切り裂いていくこの技を使うのは色々と制約があるのだ。
現実世界での話ではあるが。
今は精神世界のようなところにいるのだからそんな制約は気にしない。
「冬月家抜刀術…終の型・後光二閃」
「二閃だと…?」
この技は少しずるいけど二回振るうのだがカウント的には一度扱いなのだ。
これがありなら増やしていけば…と考えたこともあるが三回目がどうやっても繋げられなかった。
そもそも、終の型なのに二回続いているだけでもおかしいのだ。
こちらに向かうために侍が足を踏み出すがそのまま崩れていく。
「なん…グッ…」
「おい、どうし…ガァッ!」
二人とも外傷はない。
しかし、今頃彼らは切り刻まれている痛みを味わっていることだろう。
あまりの痛みに視界が白く染まってしまい、神経が悲鳴を上げていることだろう。
それこそ、俺に後光が差しているかのように見えるだろう。
しかし、この技の真髄はそこではない。
光は後からやってくるのだ。
眩い光の線が二つ、彼らを袈裟斬りになぞる。
そこでようやく、彼らの体に傷が生まれる。
そして再びくる痛みとの戦いだ。
この二段構えの斬撃こそがこの抜刀術の恐ろしいところである。
一刀目で切り刻まれる痛みを与え、二刀目にとどめを刺す。
説明するのは簡単だが、これを光よりも早く行なっている時点で人間ではない。
「さてと、まだやる?そろそろ降参してくれないと本格的に現実世界がやばいし君たちも滅ぶことになるけども」
「我らが滅ぶことは刀の消滅を意味するぞ…」
ようやく意識を戻した騎士が問う。
「いや、ぶっちゃけ天叢雲剣出しちゃえばこの世界終わるけど、それじゃ面白くないじゃん?程よくやり合わないとね」
「参った…其方を主人と認めよう…」
俺はお礼がわりに微笑むと真っ暗な海の底から這い上がる。
目を開くと目の前には師匠が仰向けで倒れていた。
周りを見渡してから俺は…土下座した…。




