現実と理想の差は思いのほかないようで
詰め込み始めて3時間たった。
気づけば外が暗くなり始めていた。
その時、玄関に荷物を持った女性がまさにノックしようとしていた。
その後ろ姿に見覚えがあるように見えたが…まさかな。
「博士、荷物が来たみたいなので取りに行ってきます」
「ん?おぉ、そうか」
「…まさかとは思いますが、今、本に隠れて居眠りしてませんでした?」
「ぬぅわ!?な、何を言うのだ!この私が隠れて居眠りなどするものか!きちんと君のためを思ってだな…」
「服によだれ付いてますよ本にも」
「そんなはずは…!ほれ、みろ!ついてないだろ!ちゃんとタオルでカバーしてたんだから!」
「寝てたんですね」
「はっ…」
「行ってきます」
俺は固まってしまった博士を置いて玄関に向かう。
書斎から出て少しすると後ろから博士が机に伏せる音が聞こえる。
現実逃避する事にしたようだ。
少し整理しておいたのですんなりと玄関にたどり着く。
やっぱりいつもそばにいる気配がするんだよなぁ…絶対海だろ。
「待たせました、どうぞ中へ」
「あ、はい、すいま…って俊くん!なんでしれっといなくなるのよ!」
「ちゃんと伝言は残したじゃないか…それに訓練だってあるのになんでここまできたんだ?この時間に着くには訓練してからじゃ海では間に合わないと思ったんだけど…」
「ちゃんと終わらせてきたよ!終わった後にちょこっとお母様に力を貸してもらってここまで来たの!」
「母さんかよ…」
俺の母さんは元秋月家の女性だ。
母さんも例にもれず、集団戦に特化した技術を身につけているが今の霧と大きな違いは動きの多さだな。
霧は全てその場で完結する技の種類が多いのに対して母さんは戦場を動き回るタイプが多かった。
戦場に立つ時は必ず鬼の仮面を被ることから鬼舞姫と呼ばれてたとか。
その仮面の下は普段穏やかな表情なのに戦場に出る時は激しく感情を表に出し戦うそうで。
俺は一度も母さんが武器を握っているところを見た事はないのでいつかその姿を見ることができたら良いなと思っている。
そんな状況になったらいよいよ世界滅亡の危機とかのレベルになるんじゃないのか…。
「それより、これ。お父様の剣よね?何に使うの?」
「これを二刀流で使うのさ」
さらっと答えたが海はしっかりと受け止めて、考え込んでいる。
「今聞き間違いかな?剣と刀で二刀流にするって聞こえたんだけど?」
「その通りさ」
「いや、そもそもがおかしいでしょ!?剣と刀の二刀流なんて聞いたことないし!」
「誰も剣と刀での二刀流なんて一言も言ってないぞ?」
「いや、形質変化の話をしているならそんなのは机上の空論だって決着がついてるじゃない!」
「机上にはあるんだ、手が届かないところにあるわけじゃない」
俺はそんなことよりもどうやってこの不可能とされているものを可能にするかの脳内実験がさっきから始まってて今すぐ実際にしたくてうずうずしていた。




