4話 続グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!
大魔森林(リューダ―はワイバーンの森と名付けた森)の奥の奥、とある竜王がおりました。名前は、ファリアンス・アンビバレンス・トリマイト・ブレイン・ワイバーンロードというモブにはもったいない名前で、大魔森林に住むワイバーンの王様をやっています。
ある日、ファリアンスのもとに手下のワイバーンがやって来ました。
「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!」
人間にはただの叫び声に聞こえるかもしれませんが、ワイバーンの言葉では「偉大なる竜王様に置かれましてはウンタラカンタラ」と言っています。ウンタラカンタラには社交辞令的な挨拶が続きます。
「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!(訳:実は、わたくしの縄張りにとんでもなく強い人間が現れまして、偉大なる竜王様のお力添えをいただきたく参りました)」
手下は言いました。当然とんでもなく強い人間というのはリューダ―たちのことです。
【そうか。そのような身の程知らずな人間には、我らワイバーンの鉄槌を下さねばなるまい】
ファリアンスは喋りました。もしこの場に普通の人間がいたなら恐怖で金縛りにあってもおかしくないほどの恐ろしい声でした。
「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!(訳:ありがたき幸せ)」
どうやら普通のワイバーンはどんなにへりくだったセリフを吐いても叫び声のようです。ああうるさい。近所迷惑ですね。え?森の奥だから関係ない?いや、他の魔物とか……。
【グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!】
うわあ。ついに竜王も叫ぶしか能がなくなったみたいです。
そして、ファリアンスは手下の案内(ただし叫び声)に従って、とんでもなく強い人間のもとに飛んで行きました。
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「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!」
おいおい、あまりにも多すぎるだろ。一体一体は大して強くもないし、魔力にも全然余裕がある。というより、魔法職の俺が魔法を詠唱し終わるまでに周りがワイバーンを倒しちゃうからあんまり魔力を消費しないんだよな……。
「あれぇ豚、あんまり倒せてないみたいだけどぉ?」
「ほっとけ」
なんてこと とてもうるさい バカましろ。うーん、30点。
あまりにも暇すぎてそんなどうでもいいことを考えてしまう。
「……ん?」
忍びである月影程ではないが、それなりの精度をもつ俺の索敵に一際強い魔物の反応があった。ここからじゃよくわからないけど、80レベルぐらいか。月影もまだ気づいていないようだし、こいつは俺が倒させてもらおう。
【フフフ、こいつらがそうか……】
「――〈火球〉!」
あれ?なんかこいつ言いかけてたような……気のせいか。人間の言葉を話せるほど強い魔物じゃなさそうだし……。
「おやおやぁ。やっと一匹なのぁ?」
「うるせぇましろ!」
俺だってやってやるよ!100匹だって1000匹だって倒してやるわ!
そうして俺は杖に魔力を流し、大魔法を発動した。
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再び森の奥の奥。リューダ―たちの一方的な虐殺を生き延びたワイバーンたちが集まっていました。
「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!(訳:竜王様がお亡くなりになった。新たなまとめ役を決めなければなるまい)」
「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!(訳:ならば俺が!)」
「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!(いや私が!)」
「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!(ここは僕ちゃんが!)」
ワイバーンたちはまとめ役の権力に目がくらんで気づいていませんでした。ここまでワイバーンを減らした犯人たちがいたことを。
「〈火球〉!」(アポカリプス・リューダー)
「武儀〈散り桜〉!」(八幡ましろ)
「〈浄化〉!」(コラップス・タイラント)
「武儀〈暗黒浮剣〉!」(焼いたミントアイスクリームのようなイケメン)
「武儀〈ダイブアサルト〉」(月影)
「「「「グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!(訳:うわぁぁぁぁぁあああああ!)」」」」
生き残ったワイバーンも亡くなりました。
次回の投稿は10月7日(月)を予定しています。次回からは毎週月曜日と金曜日に更新していきます。お楽しみに!