3話 グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!
俺たち「破壊者たちの宴」は森を歩いていた。メンバーは俺ことアポカリプス・リューダ―、天使ことコラップス・タイラントさん、人類の敵(俺の主観)八幡ましろ、カタさんこと焼いたミントアイスクリームのようなイケメン、そしてカタさんを殿と仰ぐ忍び月影だ。カタさんが落下してくる時に見つけたという街を目指しているのだ。
「あの、本当に怒ってないんですか?」
タイラントさんが言った。彼女は自分がやったこと――自分のギルドメンバーに会いたい欲望を抑えきれず天界のルールを破って会いに来て自分だけでなく巻き添えでギルドメンバーも異世界に追放されたことに今更ながら責任を感じているのだ。責任を感じるくらいならノリノリで「THE 異世界追放!」なんて言うんじゃねえよ。本当に申し訳なく思っているのか謎じゃねえか。
「怒ってないですよぉ。私は寧ろあのブラック企業から逃げられてよかったですしぃ」
「ほ、本当ですか?」
イライラするな。天使(比喩)で天使(事実)なタイラントさんに関わるんじゃねえよましろ。いやタイラントさんは追放されたし堕天使なのか?まあいいや。
「僕だって怒ってないよ。そんなに責任を感じる必要はないからね」
キャーカタさん。かっこいい――!惚れちゃう――!いや冗談だよ。流石に同性には惚れねえわ。
「あ、あの、リューダ―さんは……」
「気にすんな」
「キュ――ン♡♡」
「あ、タイラント落ちたね」
「はあ?あの豚みたいなのが好みなのぉ?」
カタさんとましろがなんか言ってるが、よく聞こえなかった。まあ別に重要なことならもう一度言ってくるだろうし、気にしないことにしよう。
「はあ。リューダ―さんってかっこいいですね。いつもは割とお調子者な感じですけど、こういう時は優しくて……。急に凛々しく見えてきました~」
「おい!お調子者ってどういうことだ!俺が調子にのったなんてないぞ。いつもクールに振る舞っているはずだ!」
「そういうとこです~」
はあ、なんだよ。タイラントさんもましろみたいになっちゃうのかね。人をいじって楽しむあの性悪みたいに堕天しないでくれよ。
「リューダ―、タイラント早くして」
「おう」
「すいませ~ん」
「まったく、イライラさせるんじゃないないわよぉ」
「あれ、嫉妬?」
「ふざけんじゃないわよ!なんで私があんな豚に!汚くて魔法の趣味も悪くてなによりムカつくやつに嫉妬とかするわけ無いでしょ!」
「……ははは、そこまで言う?本気で嫌いな感じなんだね」
ああましろがうるさい。燃やしてやりたくなるな。
おっと危ない。憎さのあまり〈火球〉撃ちそうになった。危ない危ない。
●
「殿、拙者の索敵に魔物の反応が」
「みんな、魔物だよ」
カタさんのハンドサインに従って、俺たちは武器を構えた。それぞれが高レアリティの武器で、邪神すらたやすく屠る力を秘めている。
グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!
木を何本も前足で叩き折り、姿を表したのはワイバーンだった。
「〈鑑定〉――レベルは……68!」
「大したことはないね。現実での戦い方になれるのには最適かも」
「ならぁ、私一人で行くわぁ」
ましろ以外が武器を下げた。収めないのは万が一に備えてのことな。
「武儀〈散り桜〉」
ましろの構えたツインダガーは魔法補助を受け、異様なスピードでワイバーンを切った。切って切って切って切って切る。1秒弱で何十回も切り裂かれ、ワイバーンは散った。
「うーん、やっぱり素材が取れなくなるのは痛いねぇ」
「デメリットあっての強力な技なのだろう」
ましろにはまったく消耗した様子がない。やはりレベル90にもなると魔力も体力も膨大になるのだ。あの程度で疲れるわけがない。ましろめ、敵(いや同じギルドの仲間)ながらあっぱれ。
グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!
「お、もう一匹かましろ、まだ行けるな?」
グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!
「もう2匹よぉ。豚」
グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!
「3匹ですね」
グゴガァァァァァアアアアアアアア―――!!!
「いや多いよ」
四方八方からワイバーンの声がする。もうここはワイバーンの森って名前で決定。
「……殿、殲滅ですか?」
「そうだね。みんな!いつものやつ行くよ!Show the destruction(破壊を見せつけろ)!」
「「「「If order(命令ならば)!」」」」
大規模戦闘の度に使ってきた掛け声を叫び、士気を上げた破壊者たちは、ワイバーンの群れに攻撃を仕掛けた。
そして……森が消滅した。