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3.そ、いろいろ。ソフトな悪からハードな悪まで

「あの、日中だけというのは、どういうことですか?」

 とカヤはノーエルに尋ねた。

 日中は学校があるし、部活もある。必然的に時間は限られてくる。

 できれば、夜の時間帯にアルバイトをしたかった。

「カヤカヤに天使になってもらったのは、世の中の悪を少しでも減らしてほしいからだったよね?」

 とピリポが言う。

「はい」

 と返事をしながらカヤは思い返す。

 人間は自立・共感・反省のバランスを欠くと心が歪み、悪事に走る。その歪みを矯正することが天使の役割……ということだったはずだ。


「そのためには悪事に走っている人間たちに近づく必要があるんだけどさ、悪にもいろいろあるわけなんだ」

「いろいろ、ですか」

「そ、いろいろ。ソフトな悪からハードな悪まで」

 言ったあと、なぜかクスクスと笑う。

「それでね、本職の天使でも手こずるようなのが夜には多いわけ」

「つまり、私の手には負えない?」

「そういうのがゴロゴロ。もうね、お前ら人間じゃないって言いたくなる。こっちが人間じゃないのにさ」

 そして「ぷふっ」と吹き出す。これが言いたかったようだ。


「そういうのをやっつけてこそ、評価もあがるってのに」

 とデビーが低い声で言う。

 ピリポのギャグはそれによって宙に置き去りにされることになった。

「でも、いきなりは無理よ」と首を振るのはミロクだ。

「私も夜のアルバイトは反対ね」

 それに同意しながらトキオも眉をひそめて言う。

「僕もです。夜は危ない人、いっぱいいますよ」

 地縛霊として交差点に立っているだけに、夜間に出歩く人間たちを数多く見ているのだろう。


「……でも、日中となると、時間が取れるのは早朝だけです」

「中学生なのよ。それは仕方がないんじゃない?」

「動ける時間帯は何時から何時までかな?」

 とノーエル。

「早起きすれば5時から7時くらいまです」

 学校に行く前に父の食事の用意もしておかなくてはならない。

「では5時から6時までとしよう」

「え、たった1時間かよ!」

 目を吊り上げるデビーにノーエルは静かに言い返す。

「学業に影響が出ると本末転倒だ。それに、最初から無理はしない方がいい」


「1時間じゃ、ますますたいしたことできねー!」

 とデビーは天を仰ぐ。

 そんな悪魔の様子を半ば冷笑気味に見ながらミロクが言った。

「そんなに焦らなくてもいいんじゃない?」

「へん。こっちはあんたのように安定したご身分じゃなくてね」

「あら、ひがみ? 悪魔さんにお似合いだこと」

「なんだと!」

「ねえ、やめませんか」

 とトキオが取りなす。

「お前は黙ってろ」


 カヤはそんな三人を見て軽く肩をすくめ、ノーエルに言った。

「では、1時間から始めさせてください。慣れてきたら延ばしてもいいでしょうか?」

「ああ。夜間でなければ」

「決定だね」とピリポが親指をたてる。「他のみんなも、それでいいかな?」

 デビーは不承不承に、ミロクは笑顔で、トキオは生真面目な顔で、それぞれにうなずく。


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