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1.空を飛ぶことにもずいぶん慣れてきた

こんにちは。作者です。

アクセスいただき、ありがとうございます。

この作品は『天使は、時給で。 白い羽根をつけた美女子中学生は貧困家庭を救えるか?』の続きです。


エタなることはないので、よろしくおつきあい下さい。

 カヤの住むイルカヤマ町が朝焼けに染まっている。

「チチチ……」

 というのどかな鳥のさえずりがあちこちで響く。

 道を行く人はほとんどおらず、いるとしてもウォーキングに勤しむ老人だ。 


 午前5時。

 いつものようにアラームなしで目覚めた空野カヤは自室のベッドの脇に立ち、パジャマをするりと脱いだ。

 そのあと、机の引き出しから天使のセットを取り出し、まずは円盤を胸の上部に押し当てる。そのままボタンを押すと、シュルッと乾いた音をたてて、円盤から純白の光が放たれた。

 光と見えたのは実は特殊な繊維で、薄く弾力性のある生地がカヤの全身を覆う。

 

 ついでブラ状のベルトを胸に装着し、白く輝く輪っかを頭の上に置く。

 輪っかはかすかなハウリング音をたてた後、宙に浮いた。

 最後にリモコンを持ち、ストラップに手首を通す。


 準備が整ったところで、カヤは静かに窓を開く。

 隣家の窓にはカーテンがかかっていて、カヤの姿を目撃する者はいない。

 カヤはソッと羽根を広げ、そのまま軽やかに空へと舞い上がる。

 途中、自分の家を振り返り、父の部屋をちらっと見る。

 電気はついていない。

 どうやら寝落ちせずに、ちゃんとベッドのなかで寝たようだ。


 舞い上がった後は思うままに可視不可視を調節できる。

 基本的には不可視……人間の目には見えない状態を保つようにしていた。

 もちろん、天使としての仕事を行うにあたっては、人間に姿を見せるようにしている。

 それは天使界からの要請でもあった。


(空を飛ぶことにもずいぶん慣れてきた)

 とカヤは心のなかでつぶやく。

(もう2週間だもんね)

 そのまま西の方角、サケノハラ市へと向かう。

 このあたりではもっとも大きな都市で、カヤの通う中学校の学区からは外れている。

 天使のアルバイトを始めたカヤに与えられた担当エリアが、このサケノハラ市だった。

 学区から外れていることもあって、知人や友人たちに見られることはないというノーエルたちの判断だ。

(確かに、私がこんな姿をしているのを見たらビックリするだろうし)


 と、カヤの頭上に浮かんでいる輪っかが光を放ってまわり始めた。

「トキオです」

 という声が聞こえる。

「どうしました?」

 とカヤは飛行しながら応える。

「4丁目のアジタ交差点で信号無視のクルマ。赤のセダンです。スマホ運転をしています」

「すぐに向かいます」

 カヤはスイと方向を斜め下に調整し、スピードをあげた。


 アジタ交差点にたたずむトキオが走り去ったクルマを眉をひそめて見ている。

「どうして、そこまでして……」

 自分の将来がスマホ運転によって閉ざされただけに、トキオはやるせない思いがする。

 自分のような犠牲者はこれからも減ることはないだろう。

 だからと言って何もしないわけにもいかない。

 それだけに、天使としてのカヤの仕事を手伝うることにトキオは使命感を覚えていた。

「バイパスに向かっています」

 とトキオは口元のマイクに向かって言った。


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