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第1話 ふたりの告白

処女作です。


今まで小説を書いたことがないので不安ですが完結するまでは続けてみたいです。


優しいアドバイス是非お願いします。

 一条(いちじょう)双葉(ふたば)は悩んでいた。告白するべきか。


 入学式から2ヶ月経ったのも束の間、双葉は恋をしていた。


 相手は同じクラスのマドンナ的存在・(おか)エリナだ。彼女はハーフで帰国子女。成績優秀で英語は学年1位。ブロンド髪をなびかせ、いつも微笑む姿が美しい。噂によるとある資産家の御令嬢だとか。


 そんな高嶺の花がごく普通の、いや、下手したら普通以下の、カースト底辺野郎に振り向くはずなんて…まず無い。


「はぁ…。」


 双葉は溜息をついた。


 季節は梅雨。私の心も雨模様、といった様子で双葉は、誰もいない放課後の教室で落ち込んでいた。


 向こうの体育館からは同じバスケ部の練習する声が聞こえる。だが、双葉は今部活をする気にはなれなかった。


 双葉は悩む。告白するべきか。そして砕け散るか。いや、無理だ。まだ心の準備が出来ていない。


 ・・・でも、何か行動に移さなくては。


 双葉は考える。


「そうだ。」


 双葉はふと思いついた。そして、昨日買ったばかりのノートを鞄から取り出し、机に置き何かを書き始めた。







ITIZYOU(いちじょう)FUTABA(ふたば) ha() OKAERINA(おかえりな) no() koto(こと) ga() sukida(すきだ)……っと。」




 双葉は彼女に対する想いを綴った。何故か『ローマ字』で。


 と、いうのも最近、双葉は啄木の日記を知ったらしい。所詮ネットで見つけたムダ知識だ。しかしそれは双葉にとって妙に心惹かれるものだった。


 双葉は啄木の真似をした。側から見れば意味不明で滑稽な猿真似。だが、双葉は真剣な目つきで黙々と書き綴った。


 因みにこの少年、英語の成績は学年最下位。文法どころか英単語すら覚えていない。察しの通り書けるのはローマ字だけ。得意なことは運動くらい。そして何よりも不器用。


 一言で表すと『バカ』なのだ。




 思い立ったが吉日。それから双葉は、毎日ヒミツの日記をつけることにした。日に日に募る彼女への気持ちを綴った片想い日記。いや、日記というよりはポエムに近い。




Kyou(きょう) mo() anata(あなた) no() egao(えがお) ga() suteki(すてき)…いや、違うな…。もっとこう……別の方がいいか…。」




 とりあえず今はここに書いて考えよう。どうすれば告白が成功するか。まだ時間はある。


 双葉は独り言を吐きながら綴った。




 双葉は書き続けた。そして肌身離さぬよう、いつも持ち歩いていた。家に隠しておいても家族に見つかる可能性がある。特に姉貴。アイツにバレたら多分バラされる。


 手元にあれば安全だろう。バカながら考えた。







 バカだった。すぐに予期せぬ事態が起きた。




 昼休み。双葉は鞄の中を探した。


 いくら肌身離さずとはいえ、流石に体育の授業までは持ち歩くことができない。


 4限が終わり着替えを済ませた双葉は、鞄の中にある日記を確かめた。いや、確かめるはずだった。







 ・・・無い。いつもならここにあるはずの日記が。







 双葉は焦った。


 幸い、日記の表紙には名前を書いていない。もし失くしても誰のものか分かることはまず無い。筆跡鑑定でもしない限りまず無い。







 ・・・だが問題はその中身だ。







 中身を見れば双葉の名前がある。1ページ目にくっきりと『ローマ字』で。怪しまれるのは確実だ。


 一刻も早く誰かに見られる前に探さないと。


 双葉が席を立つ。


 すると後ろから誰かの声が聞こえた。







「えーっと…なにかしら?……一条…双葉は、丘エリナの…ことが……好き…だ…?」







 彼女の声だ。




 振り返るとそこには、午前まで鞄に入れてあったであろう日記を手に取り読み上げるエリナがいた。


 エリナは双葉に気づくと、歩み寄り尋ねた。







「これは……ラブレター…なのかしら?…それとも、誰かの悪戯なの?」










 ・・・・・・終わった。何もかも。読まれた。







 バカだった。


 冷静に考えればローマ字なんて誰でも読める。


 しかし何故彼女が、彼女が持っているのだろう。







 いや、そんなことよりも今はこの状況をどうにかしないと。


 こんなところで終わらせるわけにはいかなかった。まだ入って2ヶ月の高校生活。




 双葉は絶望とともに地の底から考え始めた。


 ここで本当のことを言えばお終いだ。かといって誤魔化した所で、彼女に先手を打たれてもお終いだ。


 どうすればいい。どうすれば。










 ・・・思い出した。もう1人いた。いた。




 OKAERINA(おかえりな)が。










(確か……苗字が『岡江(おかえ)』で…名前が『里奈(りな)』…だっけ。)




 双葉は思い出した。




 岡江里奈(おかえりな)。このクラスの学級委員で嘘と曲がったことが大嫌い。いつも明るく元気なお調子者。ショートヘアーでエリナとは正反対である。


 双葉は入学してからというものの、エリナ以外の女子には興味がなく、彼女のことなどそれほど気にも止めていなかった。


 そして何より、里奈は双葉の好みでは無かった。







「一条さん。あなた…ワタシのことが…好きなの?」




 双葉は問い詰められた。


 事情を察し、その場に居合わせた周りが騒つく。


 とりあえずこの状況を打破しなくては。


 今は告白が回避できればそれでいい。ここで本当のことを話せば、必ず返事がくるに違いない。まだ心の準備も出来ていないのに。


 こんな展開でフラれるのは嫌だ。


 双葉はバカなりに考えた。どうすればフラれずに済むか。










 双葉は閃いた。










「い、いえ!こ、これは誤解だって!!!!


 お、お、俺が好きなのは、


 岡江(おかえ)里奈(りな)だァっ!!!!!!!」







 双葉は叫んだ。心にも無いことを、必死で心の中から捻り出した。


 双葉の声は教室中に響き渡った。当然、彼女の耳にも届いた。


 彼女は窓際の席に座り、机に突っ伏していたが、自分の名前が呼ばれるとすぐさま顔を上げ振り返った。







「岡江…里奈さん?ああ…委員長さんの方ね……。てっきりワタシのことかと思ってしまいましたわ///」




 エリナは少し顔を赤らめながら、申し訳無さそうな顔をした。







(あの委員長ならどうせネタで受け止めてくれるだろう…)







 双葉は考えていた。


 先に誰かに告白すれば、これ以上聞かれることもフラれることもないだろうと。誤魔化すには勢いだ。


 そして、お調子者の里奈の性格なら笑いに昇華するはず。そもそも真に受けるはずが







「え?えええ?え?アタシ…?アタシで…いいの?」




 違った。


 様子がおかしい。


 里奈は満面の笑みを向け、歩み寄ってきた。







「実は…アタシも双葉くんのこと…ずっと前から好きだったの!!!!!!!!!!」







 バカだった。


 こんなはずではなかった。なぜ好きでもない人に告白しているのだろう。







 双葉(ふたば)は、里奈(りな)()()()()ことになってしまった。




 つづく

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