表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/186

96.着いて早々

 ハーベルクの修練場からワイバーンを駆り、そのまま今度は違う町での休憩も含めておよそ3時間で北にあるオルハールの町へと辿り着いた。

 ユフリーが言う通り、ここには国立図書館の1つがあるらしいのだが彼女も正確な位置までは知らないらしいのでまずはその情報を集めなければならない。

 だが、そんな彼等の情報は既にこの町にも回っている様だった。

「……おい、シリル」

「ああ、分かっている」

 目立たない様にニールを囲む形で町の中に入った一行だったが、自分達に向けられている多くの視線が嵐の予感をさせるのにシリルもエリアスも気が付いている。


 そしてそれと同時に、町の出入り口付近から「居たぞー!」と声が上がる。

 その方向にパーティメンバーが目を向けてみれば、男女問わず明らかに殺気立った武装した人間や獣人達が大勢で駆け寄って来るのが見えた。

「あいつ等が修練場を潰した連中だ、逃がすなよ!!」

「ぶっ殺してやらああああ!!」

「待ちなさいよ!!」

 修練場の単語が出て来ると言う事はギルドの連中に間違い無いので、その修練場の壊滅情報を受けたギルドではこうして男女問わず冒険者の連中にパーティメンバーの待ち伏せをさせ、何としてでもここで捕まえようと言う作戦らしい。


 思ったよりも早く回っている情報に舌打ちをしつつ、5人はやむを得ずこの土地勘の無い町でバラバラに行動する破目になってしまった。

(ちいっ、来て早々にこれか!!)

 もう少し「」があっても良いんじゃないのかと思いつつも、ニールは身軽な動きでメインストリートの人混みの中に紛れる。

 北にある町の中では比較的大きな町だとユフリーが言っていたし、ギルドの連中ばかりでこの町が構成されている訳でも無いので、一般人の中に上手く紛れ込む形で追っ手のギルドの連中を振り切りに掛かるニール。


 やはり自分としては「木を隠すなら森の中、人が隠れるなら人の中」と言う考えで、散り散りになってしまった他のパーティメンバーと違うルートをニールは進んで行く。

 この言葉を教えてくれた同じカラリパヤット使いの兼山曰く「厳密に言えばこれはKOTOWAZAじゃなくて、一種の比喩表現なんだ」との説明があった。

 似た様なものの中に紛れ込んでしまえば区別がつき難くなって、敵の目を欺けると言う言葉の意味らしい。

 しかし他のメンバーが何処に居るのかと言うのをニールは知らないし、他のメンバーもニールが居る位置が分からない以上は、自分以外のメンバーの行方をそれぞれ心配しながら人混みに紛れての逃走劇だ。

(これじゃ図書館に行くどころの話じゃないな!!)


 一方で、英雄のエジットやその裏切り者からの命を受けてニール達一行を追い掛け回しているギルドの冒険者の面々は、後一歩の所で今までずっとニール達を逃がして来てしまっている。

 その事もあって、自分達の面子に掛けてでも捕まえる前に町の各地に逃げ出したパーティメンバーの5人を捕まえなければいけない。

 追跡部隊を分ける形で数人がニールを追跡している一方で、他のグループもまたそれぞれで小分けになってこの町中を散り散りになる形で探し回っていた。

 パーティメンバーの裏切り者が色々と捜索部隊の手筈を整えてくれているだろう……と追跡部隊の面々も考えてはいるのだが、英雄から詳しく連絡を受けているのはニールの話だけ。

 他の4人に関して、実際にその背格好や服装を良く知っているのはその4人の中でこちらと内通している裏切り者しか居ない事も知っている。

 その裏切り者からは「本気で捕まえに来ないと自分が裏切り者だとバレてしまうから、自分の事も気にせずにみんなで追い掛けてくれ」と言われているので、メンバー達もそのカモフラージュの為に本気で裏切り者を追い掛け回している。


(人の容姿をなかなか口で説明するのは難しいし、その情報を聞いて個人の受け止めるイメージも違うものだからな……)

 追い掛け回されているパーティメンバーの内、裏切り者は漠然とそんな考えを巡らせていた。

 自分がリーダーとして追い掛け回す立場だったら、事前に画家に頼んで似顔絵を作成して手配書を作って貰う事も出来る。

 だが短時間で町から他の町や村へと馬、時にはワイバーンで移動を続けている奴等に対してそこまでする程の時間は無い。

 もしそんな時間があれば、ぞの似顔絵を作って配布する前に他の4人のメンバーに逃げ切られてしまう可能性の方が高い。


 このオルハールの町に追い込んだ今であればまだ町の外には出て行っていない筈だし、その町の出入り口には既に厳重な警備を配置する様に、とギルドの冒険者に通達している裏切り者。

(これであの異世界人とか言う男も終わりか……)

 共に遺跡を回ったりして一緒に旅をして来た時間はそれなりに長い様にも感じたが、それでも自分はギルドに所属している以上、英雄のエリアスからの銘は絶対と言っても良い。

 エジットも、それから騎士団長のセレイザも裏切り者の自分が抱いている野望の為に協力してくれている事もあって、ここでこっそりパーティを抜けるつもりでいるのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ