95.気になる「点」
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35.ニワトリのポーズ
にニワトリのポーズの挿絵追加。
負のスパイラルの話が一段落した事もあり、あの修練場からかなり離れた場所で一旦ワイバーンから降りた一行は追っ手が来ていない事を確認し、戦いで疲れた自分自身の身体をそのワイバーンと一緒に休ませる。
そして、あの修練場のグループから約束通り受け取った……いや、どちらかと言えば半ば強引に強奪して持ち去ったあの地図を見てこれからの行き先を確認する。
だが、その地図を開いたミネットがある事に気が付いた。
「あら? 何かしらこの黒い点……」
「ん?」
あの修練場から更に北東に向かって進んだ場所に、意味ありげに黒いインクで丸い点が付けられているではないか。
そのミネットの声に反応したシリルが横から地図を覗き込めば、彼もまた同じく黒い点に気が付いた。
「何か意味があってこの地図につけられた点、って感じだな」
シリルの発言に反応した他の3人もその周りに集まって来て、端から見れば全員で1枚の地図を覗き込む光景が出来上がった。
そして、その地図の黒い点に対して最も大きなリアクションをしたのがユフリーであった。
「あれ……その地図の黒丸の場所って確か国立図書館の1つがある、オルハールの町の場所じゃないかしら?」
「国立図書館?」
どうやらこの黒い点が記載されている場所の詳細も知っているらしいので、彼女からもう少し話を聞いてみる事にする他の4人。
「ええ。ここって国立図書館……あ、帝国内に国立図書館は幾つかあるんだけど、その内の1つがこの黒い点の場所にあるオルハールの町って所に建てられているのよ。国立図書館だけあって色々な本が読める場所なんだけど、ここの図書館にはある噂があってね」
「何? その噂って……」
また何か大層な話になりそうだと思いつつも、噂だけなら聞いておいても良いだろうとミネットはユフリーに話の続きを促した。
「オルハールの町の国立図書館の地下には、一般の国民は閲覧不可能な書物を保管している「秘蔵書物庫」と言う場所があるって話ね」
「秘蔵書物庫……なかなか大層な名前じゃないか」
その名前からイメージ出来るのは、明らかに一般人の立ち入りが制限されていていかにも何かがありそうな場所、と言うものだった。
「そうね。だからそこに行けば何かがあるかも知れないわよ。だってこの地図のインク、後からグリグリと黒いインクで塗り潰したのが良く分かるもの」
「俺が地球に帰る為の手掛かりもあるのかな?」
「あると良いわね、ここに」
トントンと黒い丸を指差してユフリーが言い、これで行き先は決まった。
しかし、もう1つ別の行き先もある。
それは修練場から東に向かった場所に記載されている、黒い丸よりも大きな丸で描かれた赤いインクの場所だった。
「こっちの赤い点は何だ?」
「え? うーん……それがもしかすると次の遺跡の場所を示しているんじゃないかしら?」
元々次の遺跡の場所を知りたいが為にあの修練場に行った訳だし……とユフリーが言えば、エリアスからこんな提案がされる。
「じゃあチームを2つに分けるか? 黒い方の図書館を調べるグループと、その赤い点を調べるグループに分かれて行動すれば効率も良くなると思うがな」
ワイバーンもこうして2匹居るんだしとエリアスが提案するものの、シリルからはNGの答えが返って来た。
「いや……赤い方が何を示しているかが分からないし、もし仮に封印が掛かっている遺跡だったとしたら、今の所その遺跡の封印を解けるのは恐らくニールしか居ないだろう」
「俺?」
「ああ。最初の遺跡でもそれから次の遺跡でも、結果的に封印を解いて敵を倒してアイテムを手に入れたのはニールだからな。それにどの道その黒い点の町はちょっとだけ遠回りになる程度なんだから、寄り道をしたと思って何があるのかを調べてみて、それから全員で赤い点に向かって進めば良いと俺は思う」
結局、チームを分けて行動すると言うエリアスの案は却下となった一行は、まず北のオルハールの町にある国立図書館の秘蔵書物庫を調べる事になった。
だが、一口に調べると言ってもそう簡単に行きそうに無いのが現実である。
「その秘蔵書物庫はセキュリティも厳しいのよ。魔術で厳重に封印がされている上に、近くでは常に職員が目を光らせているって話も冒険者から聞いた事があるからね」
「……その冒険者も中に入ろうとしたのか?」
「ううん、そうじゃないみたい。その図書館に用事があって調べ物をしていて、秘蔵書物庫の周りにお目当ての本があってその時にそうやって警備の職員が居るのを見たり出入り口に封印がされているのに気が付いたらしいわ」
「ふぅん……良く覚えているな、そんな話」
「なかなか私は北には行かないから……それに北からわざわざ山脈の南の方まで来る冒険者は余り居ないのよ。殆どが西のリーフォセリア王国か東の帝都に行っちゃうし、南まで一直線に行ける乗り合い馬車もあるからね。それもあって、私が転勤で働いている酒場のチェーンだと北の方の話はなかなか珍しいのよ」
だから記憶に残っているのよ、と疑問を持つニールにユフリーはそう説明した。




