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94.解けない誤解

https://ncode.syosetu.com/n7580fb/31/

30.象のポーズ

に象のポーズの挿絵追加。

 しかし、その話と自分が追い掛け回される事になったそもそもの切っ掛けが何処でどう繋がって来るのかがニールにはまだ分からない。

「でもさ、あのエジットって奴は一体何がしたいんだ? そのギルドのシステムを変える為に色々と行動しているって話なのか?」

「さぁ……それは私には分からないわ。何かその時の事をもっと覚えていないかしら?」

「その時の事って言われてもな……」

 正直、この世界に来てかなり時間が経っている様な気がする。

 その一方で余り時間が経っていない様な気もするのは、今まで自分の常識では考えられない事をこの世界に来て経験して来たからだろう。

 世界そのものが違うから当然と言えば当然なのだが。


「俺が覚えているのは……俺が盗賊団を壊滅した後に、あのエジットって奴が騎士団の人間らしき人物に失格宣言を受けてた事だな」

「失格宣言?」

「ああ。何だか良く分からないけど失格だって言われてた。何か試験でも受けていたのかな?」

 それ以外の事はあの大ジャンプを決めて村まで下りて来た事以外記憶に無いので、結局エジットが自分を追い掛ける理由が見つからない。

「ギルドの統合云々って噂もそれが本当かどうか知らないけど、本当だったとしてもギルドに所属していない俺には関係無いんだから勝手にやってくれって話だよ。そもそも俺が何でこの世界に来たのかも分からないんだし、何でこんな面倒臭い事に巻き込まれて命の危機に直面しなきゃならないんだ……」

 ブツブツと愚痴を垂れ流すニールだが、そう言われても今のユフリーにはどうしようも無い。

「そんな事言っても、今はとにかく貴方が元の世界に帰れる様に協力するから頑張ってよ」

「ああ、それは分かってるさ」


 そう言われても、まだニールには気になる事がある。

 それはパーティメンバーの中に居るとされている「裏切り者」の存在だ。

 修練場で聞いた「善意の通報者」の存在も気になるのだが、個人的にはその裏切り者が善意の通報者なのでは? とニールは漠然と思っている。

(あの時、俺はなるべく目立たない様にしていたのに結局俺が石舞台の上に立って戦う事になってしまった。それもパーティメンバーの全員とだ)

 それがもし通報の時間稼ぎの為に仕組まれた手合わせだったとしたら、手合わせを了承したパーティメンバーの中に裏切り者が居て修練場の人間や獣人と結託していた、と考えても不思議では無い。

 エジットから情報が回って来ていた事もあってそれで自分の身なりを見て判断した、とも修練場の男は言っていた。


 しかし、その通報者が誰なのかまでは判断出来ない

(俺が考えるに1番怪しいのは、途中でトイレに抜けたユフリーだが……)

 わざわざ自分との手合わせの前にトイレに行くと言うそのタイミングが余りにも露骨過ぎて、隣でこうして一緒にワイバーンに乗っている彼女への疑いが1番強いニール。

 だが、それ以外のメンバーにも通報するタイミングは沢山ある。

(例えば最初にワイバーンを置きに行ったのはシリルとエリアスだが、その置きに行く時に俺の事を通報して逃げられない様に出入り口を固めてしまう事も出来るよな。それからミネットは俺が最初に戦ったけど、それ以降は彼女の方を見る余裕も時間も無かったし、そもそも俺もそのミネットが何処に居るかなんて気にしてもいなかった……)


 つまり、パーティメンバーの誰もが「善意の通報者」の可能性がある。

 元々この世界の人間では無いニールは、今までのこの旅路の中で自分の身体の中に魔力が無い事が分かっている訳だし、それをパーティメンバーにも知って貰った上で一緒にこうして旅をしているのだ。

 それに、他の4人は全員ギルドに所属しているので英雄のエジットに自分を通報する事は幾らでも出来るだろうし、携帯電話の様な通話魔術があっても不思議では無い。

 だからこそ、自分をギルドに通報したのは誰なのかがさっぱり掴めないのが現状だ。

(くそー、考えても分からないな)

 本音を言えば裏切り者が居ないのが1番なのだが、こうして疑ってしまうのもギルドの連中が自分に襲い掛かって来るタイミングが良すぎる。

 それに、レカーン遺跡のヒルトン姉妹の「貴方の情報は筒抜けです」と言う証言も更にニールの疑いを深める結果になっている。


 この疑心暗鬼の状況から解放されるのは果たして何時になるのだろうか?

 何にせよ、その裏切り者を見つけ出して対処しなければ行く先々でまた情報を流されてギルドの連中に通報されてしまうだろう。

 もしかしたら裏切り者なんて居ないのかも知れないが、それならそれで良い。

 しかし、もし裏切り者が居るとしたらその時は適切に対処しなければならない。

 仲間だから、と言われても自分が命の危機に晒されているのに変わりは無いので、そんな甘い事を言っていたら最終的には捕まってエジットになぶり殺しにされるか、それとも殺されてからエジットの前に突き出されるか。

 どっちにしてもニールには絶対にゴメンな展開である。

(こんな世界で死んでたまるか。俺はこの世界でもっと進化エボリューションして絶対に地球に帰るんだよ)

 カラリパヤット歴20年の自分がまだ勝てない相手も居ると言う事も分かったので、もっと自分は成長しなければいけないと実感しつつ、何としても地球に帰る事をニールは心の中で改めて誓った。

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