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91.世の中、やっぱり甘くない

 ニールが最後の最後で負けてしまったものの、これで4連戦の手合わせは終了。

 実力も示した事だし、これでようやく目的の地図が貰えると安心するニール一行。

 だが、まだそう簡単にはいかないらしい。

「約束だ。これであんた達に俺達の実力は証明出来た筈だから、俺達もさっきの地図を貰って武器も返して貰うぞ」

 約束だからなとニールが右手を差し出すものの、修練場の雰囲気が何だかおかしい事に気が付いた。

 それに気が付いたニールが無意識に警戒して手を引っ込めると同時に、目の前の男が口を開く。

「ところで、あんた等は遺跡について調べているんだったな?」

「ああ」

 そこまでなら普通のやり取りだが、ここから一気に展開が変わった。

「それとは別の話なんだがな。ついさっき、指名手配されている男が修練場に来ているって善意の通報者が居たんだよ。それで、その特徴を持っている男があんたしか居ないって事は……」

「……何が言いたい?」


 この後に修練場の男の口から言われるであろう答えは、ニールの頭の中でも既に出ている。

 しかし、それを引っくるめても男の口から直接答えを聞かなければ納得出来そうに無かった。

 イライラした口調で男にそう尋ねるニールに対し、一旦自分の後ろを振り返った男は、その方向に居る大勢の修練場の仲間達に向かって声を張り上げる。

「おい御前等、準備は出来てるか!?」

 その確認の叫び声に対し、石舞台の周囲に集まって来ていた男女問わずそれぞれ愛用の武器を掲げる。

 その反応を見て満足気に頷いた男は、再度ニールの方を振り返って宣言した。

「俺達もあんた等を捕まえろってギルドの連中から言われてるんだよ。だから全員ここで捕まえさせて貰うぜ!!」


 会話の流れからニール達は既に臨戦態勢だったが、如何せん修練場の利用者と職員達全てが敵になった状態ともなると人数差が大き過ぎる。

「くっそー!!」

「善意の通報者」が誰なのかを考える余裕は勿論無いので、まずは何よりも最優先でこの修練場からの脱出を図る。

 修練場の一角にあるこのミニ闘技場からまずは抜け出し、自分達のワイバーンを預けてある修練場の入り口付近まで何とか辿り着かなければならない。

 だからこそ、パーティメンバーはここでくたばる訳にはいかないのであるがなかなか難しそうな展開でもある。


「く……っそ!!」

 ニールは石舞台の上で戦い、リーチの短さをスペースの狭さで補おうとしている。

 ミネットとエリアスは石舞台の周りに設置されている階段状の観客席の上に移動し、その階段の高低差を利用して下から向かって来る修練場の敵を弓矢で正確に射抜いて行く。

 シリルとユフリーは自分の必殺技を駆使して、どちらかがワイバーンの元へ向かえる様にまずはこの闘技場からいち早く脱出を図ろうとしていた。

 それでも、修練場の冒険者と職員の連合軍には数に物を言わせる戦法を取られてしまっている為、5人全員が苦戦している事には変わらなかった。

 しかも逃げようにもここは5人全員の誰も来た事が無い場所なので、地の利は当然修練場の利用者や職員達にある。


 闘技場は屋外にあるので、ワイバーンさえあればそのまま飛び去ってしまう事が出来る。

 ……のだが、肝心のワイバーンが修練場の入り口に置きっ放しなのもますますこの5人が逃げられない原因になっていた。

 ワイバーンが自分の意志でここに飛んで来て、そして自分達を助けてくれないか……等と突拍子も無い事まで考えてしまう位に追い詰められるパーティメンバー一行。

(もう……もう、ダメなのか!?)

 こんな世界で死んでたまるかと思っていたのに。

 絶対に地球に帰ると信じて、今までどんな苦難も乗り越えて来た筈だったのに。


 ここで自分は終わってしまうのかとニールの顔に焦りの色が見え始めた一方で、エリアスは「あれ」を出す事を考えていた。

(下手をすれば裏切り者にこいつの存在がバレてしまう危険性がある。かと言ってこの状況ではそれも止む無しか……!!)

 そろそろ手持ちの矢の数も少なくなって来ているので、もう仕方が無いと覚悟を決めてエリアスはコートの内側に手を突っ込む。

 そこから取り出したのは、折り畳み式になっている豪華な装飾が施された1本の杖。

 それを右手に持ち、空に向かって高く掲げる。

 するとその杖の先端が赤く光り、先端から発射されたレーザーポインターの様な赤い光線が大きな1つの塊を作り始める。


「な、何だあれ……!?」

「な、何なのよあれは!?」

 戦っている場所は違えど、ニールもユフリーもそれから周りの修練場の冒険者や職員達も突然現れたその大きなシルエットに戦いを忘れて見入ってしまう。

 それは以前、ニールが日本に旅行に行った時に見た覚えのある大きなロボットの様なデザインと質感をしている。

(お、おいおい……あれじゃあファンタジーって言うよりもSFじゃないかよ……!?)

 しかも、そのロボットとは違って全身が炎に包まれているのでインパクトは更に絶大である。

「行けっ、アディラード!!」

 唖然とする一行の前で、エリアスの掛け声と共にバトルが再開された。

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