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88.サードバトル

「あれっ、ユフリーは何処に行ったんだ?」

「ああ、トイレだって」

 2戦目のバトルを終えて再び5分間の休憩を貰ったニールだが、そこでユフリーの姿が無い事に気が付いた。

「何だよ……せっかく調子が良いって言うのに」

「しょうがないでしょ、生理現象なんだから」

 ニールのボヤキにミネットが真面目な顔で反応したが、考え方を変えてみればユフリーがトイレから戻って来るまでは休憩時間が続く事になると言う事でもある。

 なので今の時間に休憩出来るだけしておき、同時に少しストレッチをし直して身体を温めておくニール。


 それから10分後、トイレを済ませてようやくユフリーが戻って来た。

「お待たせ。それじゃ始めましょうか」

「ああ、そうだな。それと、あんたとのバトルが終わったら俺もトイレに行きたいんだが何処にあるんだ?」

「え? トイレなら向こうのあの建物の中よ」

 自分も今しがた用を済ませて来たと言うトイレの場所を指差し、ユフリーがニールの質問に答える。

 生きて来た世界は違えどニールだって人間なので、ユフリーと同じく生理現象は勿論ある。

 だからこのバトルが終わったら自分もトイレを借りようと決めたが、先に待っているのはこの目の前に居るユフリーとの3戦目のバトルだった。


「手合わせと言えば手合わせだが、そっちも本気で来いよ?」

「ふぅん……なら遠慮は要らないと言う事ね」

 挑発的なニールの発言に、ユフリーは口元に薄く笑みを浮かべつつ借りた修練用の刃を潰した武器……以前ニールに襲い掛かった時の武器と同じ位の刃渡りのナイフを抜いた。

 対するニールは相変わらずのカラリパヤットのポーズで構えを取り、両者の間に緊迫した空気が流れる。

「では、始めっ!!」

 修練場の審判員の合図と共に、まずはユフリーがナイフを振り被ってニールに向かう。

 ニールはそんなユフリーに対して、ミネットの時と同じくまずは彼女の右腕を蹴って止める。

「くっ!?」

 攻撃を跳ね返されたユフリーに対し、ニールは彼女の懐へと飛び込む。

 こうなれば、幾らリーチの差があったとしても必ずしも武器が有利とは言えなくなる。


「くっ! ほっ!」

 ユフリーが懸命にナイフを振り回して来るがニールはそれを両手で受け止め、勢い余ったユフリーが自分に背を向ける姿勢になった所で後ろからギュッと羽交い絞めにする。

「ぐ、ぐぐ……!!」

「おらあああ!」

 絶対に離すまいと力を込めるニールだが、ユフリーも渾身の力を込めてその拘束を振りほどいて再びナイフを振るう。

 だがこれもまた、ニールの両手にギリギリでブロックされる。

 そして左手でユフリーのナイフを持つ右手首を掴み、右の二の腕でユフリーの首を押さえ付けてリングアウト狙いで彼女の身体を前へと押し込んで行く。

「ぬうおおおおお!!」

 ザザザザ……と2人の両足が石の地面の上を滑って行くが、ユフリーも踏ん張ってその勢いを止めようとする。

 だが勢いが付き過ぎたニールにそのまま押し倒され、マウントポジションを取られた。


「らぁ、おら、うらあ!!」

 ナイフを持っているユフリーの右手を左手で押さえ付けつつ、マウントポジションから右手で何度もユフリーの胸や顔を殴りつける。

 手がそれなりに痛くなるが、それでも今まで人を殴って来た事は何回もあるので、これ位の事は全然我慢出来るニールは痛みを我慢して殴り続ける。

 しかしユフリーもやられっ放しでは無く、ニールの右手を空いている左手で受け止めて渾身の力で逆にマウントポジションを取ろうとする。

「ぬぐううう!!」

 ユフリーが起き上がって来ようとするので、ニールも力を振り絞って自分とユフリー両名が上手いポジションで何とか立ち上がれる方向に試合の展開を持って行く。


 今度はそこからユフリーの首を両腕で抱え込み、ムエタイで良く見られる首相撲に持ち込んだ。

 テコの原理を利用して肘を支点にユフリーの首を押さえ込み、思いっ切りユフリーの腹に右膝を叩き込む。

 彼女の腹目掛けて何度も右、左と交互に両膝を叩き付けて行けば、兼山から教えて貰ったKOTOWAZAの「チリも積もれば山となる」の精神でユフリーの顔が段々と苦痛に歪む。

「ぐぇ、ぐうえ!?」

 ニールはそこから更に10発膝を叩き込み、首を押さえたまま飛び上がって両膝を揃えた状態で思いっ切りユフリーの腹をど突く。

 そこから今度は一旦ユフリーの身体を突き飛ばし、腹への衝撃から立ち直り切れていないユフリーの胸目掛けて全力のドロップキック。


「がはぁ!」

 倒れ込んだユフリーは胸を抑えて悶絶するも、そこに立ち上がったニールは追い討ちの連続ローキックを5発ユフリーの脇腹に。

「ぐぅ……」

 胸と脇腹を片手ずつそれぞれで押さえてうめくユフリーは石舞台の上で仰向けの体勢になり、それをチャンスと見たニールは最後に思いっ切り足のバネを使ってジャンプ。

 上から両膝を抱えてユフリーの腹に落とせば、その衝撃で試合続行不可能と判断される程の衝撃が彼女の身体に伝わった。

「ぐふっ……」

「そこまでっ!!」

 修練場の審判員から試合終了の声が掛かる。

 まだ倒れているユフリーを見下ろし、ニールはホッと息を吐いてそんな彼女を介抱した。

「大丈夫か?」

「……ええ、私は何とか大丈夫だけど、勝負は貴方の勝ちね……」

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