77.アクロバティックな1vs2
向かって来たティーナの右ハイキックをかわしつつ足元に頭から滑り込み、もう片方の軸足を掴んで上に引っ張りつつ立ち上がってティーナを転倒させる。
そしてその足を掴んだままジャンプし、ドリス目掛け身体を捻りながら左足でキックを繰り出して顔面に当てる。
「がはっ!?」
そしてキックを当てた時に勢いを殺し、そのまままだ立ち直って来ていないティーナに膝を落とす。
「ぐえ!」
それでも足を掴まれていたティーナは、ニールの手を振り解いて立ち上がりハルバードを振るう。
が、ニールはしっかりと避けてもう一方のドリスにも対処。
ドリスのロングソードによる振り下ろしに対して、右ハイキックでドリスの胸にカウンターを入れる。
そしてその反動を使って空中で後ろに回転し、後ろのティーナの頭目掛けてかかとを振り下ろす。
「うぐあ!?」
そこから素早く着地したニールはそのティーナに向かって振り返り、続けて前蹴りでぶっ飛ばす。
しかもその前蹴りの反動を利用して、ドリスに向き直ったニールは彼女の首目掛けてパンチ。
間髪入れずに右のローキックをドリスの左膝に、更に左の中段回し蹴りを右脇腹に連続で叩き込む。
そして回し蹴りの反動を使い、右脇腹に叩き込んだ右足でドリスの頭にハイキックをクリーンヒットさせた。
「ぐっ!?」
その衝撃によって、思わずドリスは地面に倒れ込んでしまう。
勿論もう1人の姉妹ティーナが黙っている筈も無いので、すぐにニールはそちらの対処。
ハルバードを振り回すが、この最深部の部屋は余りスペースに余裕が無いので大柄な武器をなかなか軽快に振り回す事が出来ない。
それでもハルバード使いと言うだけあって、限られたスペースの中においても的確にニールを狙うティーナ。
しかしそれ以上に身軽に動く事の出来るニールの方が有利なので、しっかりとハルバードの動きを見て回避しつつ、時にはキックもカウンター気味に入れて対処する。
だが彼女も妹のドリスと同じく胸当てやすね当て等の鎧を着込んでいるのでニールのキックも余り効いていない様で、逆にティーナが前蹴りを使ってニールをよろけさせる。
(ぐ……っ!!)
そこに突き攻撃でニールを仕留めに掛かるティーナだが、狙われたニールは咄嗟によろけている身体を横に回転させ、突きをギリギリで回避。
そうなるとティーナは突きを外してしまい、勢い付いてニールに近づく事になる。
ニールの目の前にはハルバードを握るティーナの両手があったので、そのティーナの両腕を掴んでさっきの足の時と同じ様にジャンプ。
そのまま背中から地面に落ちる格好になりつつ、ティーナの顔面目掛けて右足の甲を全力でヒットさせた。
「ぐへぇっ!!」
鎧を着けていない場所への攻撃は確実に相手にダメージを与えられる。
しかもそれだけでは終わらず、背中から地面に倒れたニールはブレイクダンスの様に身体を回転させて、同じく地面に背中から倒れ込んで起き上がりかけたティーナの顔面に向かって右足を続けてヒットさせる。
「うぐ!?」
この連続攻撃にはティーナもたまらず倒れ込み悶え苦しむ。
頭は人間の急所の1つでもあるので、そこに何度も攻撃を入れられたらたまったものでは無い。
続いて今度はロングソード使いの妹ドリスへの対処だ。
立ち直って来たドリスはロングソードを振るうが、それをニールは屈んで回避。
そこから今度はすぐに立ち上がらずに、体勢を低くしたまま足と腕だけでゴロゴロと地面を転がって動き回りドリスを翻弄。
低い位置に対してロングソードをなかなか振るえないドリスの右足を蹴りつけ、ドリスが怯んだ所を狙ってその彼女の胸に両足でキックを入れる。
「ぐうっ!」
その間に素早く体勢を立て直したニールは、よろけて体勢を立て直しきれていないドリスの腰に抱きついて、そこから身体を反転させつつ頭がドリスの腰に密着する姿勢を取った。
「ふっ!!」
息を吐き、上に向かってストレートキックで足を思いっ切り振り上げる。
その攻撃は先程のティーナへの攻撃と同じく、しかし足は逆の左足の甲をドリスの顔面にヒットさせる形になった。
「ぐえ!」
しかもその左足を当てた時に、右足の膝も一緒にドリスの胸に当たってしまう結果となり結果的にドリスは後ろの壁に背中から叩きつけられて息が苦しくなる。
「うぐ……」
チャンスとばかりに一気にニールは立ち上がり、そこからバック宙しながらのキックを繰り出してドリスの頭目掛けて右の膝をぶち当てる。
「がっ……」
ドリスはうめき声を漏らして、地面にずるりと崩れて倒れ込んだ。
「ぐ、ぐぐ……」
姉であるティーナが起き上がって来てハルバードを振るうが、ニールはそれを避けつつ開いているドアにぶら下がり、そこから足を突き出してティーナの顔面に足をヒットさせる。
そこから着地して今度はニールがガンガン攻めるが、ティーナも鍛錬や戦場で鍛えて来た反射神経を駆使して避けて行く。
しかしニールはただ蹴り続けるだけでは勝ち目が無いと悟り、今度は前方に回転してティーナの両肩にそれぞれの足を乗せ、その足を使って自分の身体を捻ってティーナの身体も捻って倒す。
頭は人体で重いパーツの1つなので、頭から倒すのは割りと簡単なのだ。
地面に転がったティーナはそれでもすぐに立ち直るが、それをニールは見越してジャンプし、今度は宙返りからの左の膝をティーナの頭に叩き落とした。
「あがっ……」
そのままティーナは地面に倒れ込み気絶。
こうしてニールは何とかヒルトン姉妹に勝つ事に成功したが、後はここからどうやって脱出するかが問題であった。




