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75.越えられないかも知れない壁

 とりあえず3人は一旦レカーン遺跡の出入り口に戻ってみて、そこでもう1度看板を見てみる事に。

 その戻るルートもティーナが予想した通り、来た道を戻るのでは無くそのまま真っ直ぐ進んでみると右へ分かれ道が現れたので、そっちに折れてみると出入り口に辿り着いてしまったのだった。

「何だよ……無駄な時間過ごしちまったな!!」

 思わずダンッと地面を足の裏で蹴るアクター。

 それでも何とか気を取り直し、改めて看板を見て自分達の進むルートを確認してみる。

「えーと……やっぱりこの看板だと左回りの一本道なのよね」

 後は特に看板に変わった所は無いんだけど……と首を傾げるドリスの横で、アクターがいきなり看板をめくってみる。


 するとそこに、最初に看板を見た時には気が付かなかったあるものを発見。

「……あれっ? 地図の看板の裏に変な窪みがあるぞ?」

「え?」

 何か不自然な点は無いかと思い、看板の裏側も確かめてみようと思ったアクターのその行動が大きな進展を呼んだらしい。

 ほらここ、と木製の大きな看板をめくって指を差すアクターに続いて、ヒルトン姉妹も看板の裏を確認してみる。

 するとそこには確かにアクターの言う通り、岩の壁が不自然に凹んでいる。

「え、これって看板を取り付ける為にわざと凹ませたんじゃないのかしら?」

「いいえ……明らかに看板のサイズと合わない窪みの大きさですから不自然ですわね」


 そう言いながらティーナが窪みに手を触れてみれば、思いの他それはあっさりと奥に押し込む事が出来た。

 その瞬間、ゴゴゴ……と洞窟の中に轟音が響き渡る。

「えっ、えっ!?」

「何なのよ!?」

 思わず武器を構える3人だが、その轟音が収まっても特に魔物が現れたとかそう言う事態にはならなかったらしい。

 しかし、看板裏の不自然な窪みがスイッチになっていたらしく何かしらの変化が起こったのは確実なので、今度こそ無駄足にならない様に……と願いながら3人は再び通路を左回りに進み始める。


 すると、マップの通りに進んで来た場所が岩壁で突き当たりになってしまっているではないか。

 しかもその岩壁は明らかに自然に出来たものでは無く、人工的に作られた仕掛けらしい。

 そして人工的な仕掛けはその岩壁のみならず、岩壁を正面に見て左側の岩が横開きのドアになっており、その奥に階段が出来ていたのだ。

「……行くか?」

「勿論です。こんな仕掛けがあると分かってしまった以上、進まないで引き返す訳にはいきませんからね」

「そうよね。でもまさか看板の裏に窪みがあるなんて盲点だったわ」

「それは心理的な要素だろうな」


 看板があれば、普通だったらその表面「だけ」を注目して見てしまうものだし、裏までめくってみるなんて事はしない。

 そんな事をするのは余程の変人か、今のアクターみたいに疑いの視線を向けた上で何か無いかと調べてみる考えを持った人物位のものだろう。

 その心理的な要素をあえてぶち破る事により、新たな道がこうして開かれた。

「うわっ、せまーい……」

 ちょっと大柄な人間が2人すれ違うのがやっとと言ったレベルの幅しか無いこの階段だと、もし幅のある肩当てをつけている場合は1人しか通れないんだろうな……とドリスは思ってしまう。


 その一方で、ティーナは階段の伸び方を考えていた。

「……うん、これなら問題は無さそうね」

「何が?」

 ティーナに前を、ドリスに後ろをと言う隊列で姉妹に挟まれて歩くアクターは、先頭を歩くティーナのその呟きを聞いて意味を尋ねる。

「この階段の事ですよ。あの窪みを押す前は通路に騙されていた私達ですが、今回は問題無く順調に地下に向かって進んでいる様です」


 流石にこれはペンローズの階段では無いらしいので、そのティーナの考察を聞いたアクターもホッと息を吐く。

「そうか、それなら安心だな。これがいわゆる封印って奴だったんじゃないのかな?」

「そうかも知れないわね」

 ドリスも後ろから同意の声を上げる。

 今までの冒険者達は看板の裏の仕掛けに気が付く事が無く、ただ単に同じ場所をグルグル回らされていたので諦めて帰ってしまったのであろう。

 それはそれで、誰か自分と同じ様にあの仕掛けに気が付く奴は居なかったのか? と若干呆れてしまうアクター。

(冒険に出る様な奴って、脳まで筋肉に侵されている様な連中ばかりなのか?)

 別にそこまで馬鹿にするつもりも無いけど、誰か気付けよ……と結局呆れてしまうアクター達は左回りの階段をどんどん進んでゆっくり地下に下りて行く。


 何処か悶々としたそんな感情がありつつも、階段も1本道だった様で結局そのまま最深部に辿り着いた3人。

「ここでどうやら終わりみたいだな」

 ここにもまだ何か仕掛けがあるのでは? とキョロキョロと辺りを見渡すアクターだがその必要はどうやら無いらしい。

 何故なら階段を下りた先に現れた、天井が高くなっている岩壁に囲まれた土の地面の広場の奥の壁に大振りで縦長の盾が掛けられていたからである。

「ねえ、あれが宝じゃないかしら?」

 真っ先にその縦に向かって走って行くドリス。

 この後の展開だと盾を取る前、もしくは盾を取った直後にボスの魔物が現れるんじゃないか? とか洞窟が崩れ出して閉じ込められてしまうのでは? とネガティブに考えるアクターだが、果たして……。

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